5月30日、米空軍司令部ISR部長であるRobert Otto中将が通信電子技術関連の業界団体で講演し、予算が厳しい中、米空軍はISRのやり方を変革しなければ誤りを犯す(we will fail)と危機感を訴えました。
素晴らしい装備も維持や運用に膨大な経費が必要では維持できず、より民生品や民生技術を柔軟に取り入れる必要があると語りました
更に、米空軍が予算削減のため提案している装備品「全廃」を議会が認めない件に関し、維持しても十分な予算配分が出来ずに活用できていない状態を訴えました
30日付Defense-News記事によれば
●オットー部長は、強制削減が消え去る見通しが無い中、米空軍はISRをどのように行うか変革しなければならない、と危機感を訴えた
●「ISRへのアプローチ方向を変える必要に迫られており、そのアイディア探しに今集中している」と聴衆に語り、「従来のキチンと階層的に組み上げられたシステムから、国が保有しつつも、多様なシステムや装備が競い合っうようなopen architectureの方向の概念である」と説明した
●更に「今空軍が世界の数箇所で運用しているDCGS(Distributed Common Ground System)センターは、情報の集約や分配に目覚しい働きをしているが、予算の現実に応じ変革する必要がある」と語り、
●「DCGSは戦場への情報提供に膨大な信じがたい役割を果たしているが、とても維持できない。変えなければ我々は誤りを犯す」と現状を説明した。そして、このopen architectureへの流れは「ISR分野だけに止まらず、空軍のシミュレーション分野等も、遅かれ早かれこの方向に向かいだろう」と語った
●そして同中将は聴衆に「強制削減は空軍に変革を求めるが、改革して前進するためには議会の協力が必要だ」と訴えた。
●「米空軍はU-2偵察機やグローバルホークBlock30の全廃を計画してきた。両機種とも維持する予算がないからだ。しかし依然として、両機種とも退役できないでいる」と嘆いた
●全廃を認められず維持を余儀なくされている機種の現状について「U-2偵察機は昨年、予算を1/4削減され、同機の稼動率は2割近く低下している」と説明した。また(U-2維持のため予算を削減された)RC-135 Rivet Jointは予算を1/3削減され、17機の内の2機を運用停止にせざるを得ず、前方への展開に支障をきたしている
●同中将は無人機の強力な推進者で、今後10年間の前半で、無人機需要は「爆発的に拡大する」と予測し、無人機への投資が良い投資だと強調した
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やっと強制削減が「不可避」だと悟り、現実を直視し、夢を脇に置き、優先順位をつけて前進する人が現れるようになりました。
なおOtto中将は、若き頃をF-15操縦者として過ごし、嘉手納にも30代に3年間勤務しています。
准将へ昇任後の2008年から、無人偵察機運用の専門部隊の指揮官かねて無人機の一大拠点「Beale空軍基地」の司令官として勤務し、その後はISRの道を進んでいます
経歴を見ると、U-2偵察機やグローバルホークの操縦経歴もあります
今後日本がRQ-4グローバルホークを導入するに当たり、鍵となる人物かもしれません。無人機への投資「大賛成派」のようですから注目です
過去のISR部長発言関連
「James・ISR部長が方向性を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-22
「対中国はISR融合が鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20-1
「MQ-X計画は中止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-16
「データ処理容量不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-27
「米空軍ISR組織の革新」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-21