フォード級空母の発電能力はニミッツ級の3倍
防御用レーザーに必要なスペースと電力余裕有
弾道ミサイルと超超音速兵器には対処困難も
31日付Defense-News記事は、運用態勢確立に向け訓練中のフォード級空母の一番艦空母フォードのJ.J. Cummings艦長へのインタビューと、フォード級空母への期待を語るシンクタンクCSBA研究員の話を取り上げ、米海軍は艦艇防空に関し、これまでのように迎撃ミサイル頼みから脱却する必要があるとの意見を紹介しています
フォード級空母は、従来のニミッツ級空母の2倍近く(1隻約1兆5000億円:搭載艦載機除く)に跳ね上がった価格にも拘わらず、搭載新装備のトラブルやトランプ大統領の電磁カタパルト「ダメ」発言で風当たりが強く、加えて対艦ミサイルの発達で空母の脆弱性指摘が厳しくなる一方の中で、運用態勢確立に向け訓練中です
特段に新しい話題があるわけではありませんが、米海軍の水上艦艇の在り方に関する話題をいろいろ取り上げてきた一環として、新装備を手に入れウキウキの空母艦長とシンクタンク研究者のお話をご紹介しておきます
1月31日付Defense-News記事によれば
●空母フォードのJ.J. Cummings艦長は同空母上でインタビューを受け、対艦ミサイル防衛のための新たな兵器システムを受け入れるスペースと発電量を、同空母は備えていると自信を示した
●フォード級空母が搭載している「A1B原子炉」は、ニミッツ級空母が搭載している原子炉の3倍の発電能力(100メガワット以上)があり、電磁カタパルト(EMALS)等の新たな装備を搭載しても、電力供給能力に余裕があると同艦長は述べた
●空母の脆弱性からその存在意義が問われている空母の防御に関し同艦長は、フォード級空母はレーザー兵器のようなエネルギーを大量に必要とし、かつ新たなスペースが必要な装備にも対応可能だと語った
●「海軍の世界における革新を語りたいなら、この空母にはそれが存在している」、「フォード級はニミッツ級より軽く(電力消費量が少ない意味か?)作られている」、「ニミッツ級には多くの追加装備が搭載され、その能力向上が図られているが、その電力供給は限界に達しつつある。フォード級には将来システムが搭載可能なように、電力供給量に余裕がある」と同艦長は語った
●米海軍省の調達責任者であるJames Geurts氏は、開発経費の超過等の問題を抱えつつもフォード級空母を追求する理由の一つは、空母の残存性確保にフォード級が欠かせないからであると説明し、「同空母は次世代システム搭載に必要な柔軟性を保有している点で、重要な戦力である空母の残存性を高めることが出来るシステムとして重要だ」と述べている
CSBAのBryan Clark研究員は
●元米海軍士官であるCSBAのBryan Clark研究員は、フォード級空母はその強力な発電能力を残存性向上に生かすことが出来るとし、「空母の特に近距離防御力向上にレーザー兵器搭載が考えられるが、従来の艦艇には電力確保という大きな課題があった」と述べ、
●「仮に3-400kw級レーザーを搭載するとして、まず艦艇上に十分なスペースを確保する必要があり、更に十分な電力を確保する必要がある。フォード級ではそれが可能なのだ」と説明した
●Clark研究員は長年に渡り、ロシアや中国やイランは米艦艇にミサイル飽和攻撃を仕掛けて防空ミサイルを打ち尽くさせようしているから、米海軍は迎撃ミサイル重視による艦艇防空から脱却すべきと主張してきた
●対策として同研究員は、同じ艦艇の垂直発射装置スペースに4倍の数量を搭載可能な小型の短射程迎撃ミサイル「Evolved Seasparrow」を搭載することや、レーザー兵器で対艦ミサイル迎撃を考えるべきと主張してきた。この場合、艦艇近傍に敵ミサイルが接近するのを待って迎撃をする「気持ち悪さ」はあるが・・・
●同研究員は「レーザー技術は相当成熟してきたので、レーザーでフォード級は、空母の大きな課題である脆弱性に一つの対策を確保できる。数個のレーザー兵器搭載は防空能力を相当向上させるだろう」と述べている
●しかし同研究員は、レーザーで艦艇へのすべての脅威に対処できる訳ではないと釘を刺し、「おそらく、通常の巡航ミサイルから超音速巡航ミサイルまでには対応可能だろうし、小型ボートのような目標にも有効だろう。しかし、弾道ミサイルや超超音速兵器には有効ではないだろう」と語った
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Clark研究員は「仮に3-400kw級レーザーを搭載するとして」との想定で話をしていますが、現状は60kwからスタート(拡張性150kwまで)程度で、数百KWにはまだ時間が必要と思われます(下の過去記事等をご覧ください)
フォード級空母でも、先日ご紹介したロシア軍がフリゲート艦に搭載する超超音速ミサイル6発以下程度で撃沈可能と見積もられているようで、空母の旗色は悪くなる一方です
これも先日ご紹介したように、CSBAは、大型艦艇中心の米海軍の体制整備に疑問を呈し、平時には有人運用でグレーゾーンの対応にも使用しやすく、有事には無人で運用可能な中型艦艇導入を推奨しています
この有事無人の中小型艦艇は、防御ミサイルや攻撃兵器を搭載し、数多く配置して敵の攻撃ターゲティングを複雑にし、かつ防御や攻撃力で一部の大型艦艇を保管して守ろうとする役割を期待されています
いずれにしても、ISR能力の発達に伴い、ステルス性も限界があり、動きの遅い水上艦艇は、生き残りが難しくなる一方です。「F-35Bを搭載するらしい護衛艦いづも」はどの様な運用をするのでしょうか?
フォード級の話題
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「トランプはEMALSに反対」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10
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「空母フォード3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
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