2015年シャングリラ会合(第14回アジア安全保障会議)

アジア最大の安保イベント、シャングリラ・ダイアログ終了
今年は5月29日(金)夕刻から5月31日(日)の間、いつものシンガポール「シャングリラホテル」で開催されました
追記第3弾! 
孫建国:PLA副総参謀長の講演(31日朝)
神保謙:慶応大準教授の「実況ツイート」を参考に
→https://twitter.com/kenj0126
よくもまぁ・・・そこまで自信たっぷりに「嘘八百」を言えるものだと逆に感心しつつ・・・
しかし、間接的に「ちくちく」する言及はあるが、米国や日本を直接非難する表現はなく、以前と比較すれば「大人の対応」が目立ちます。
昨年もスピーチは歯の浮くようなセリフで彩り、質疑応答には「完璧」な対応を見せていた副参謀総長(別人)でしたが、今年は更に洗練されたような気がします。
「余裕の対応」と言った雰囲気でしょうか・・・
中国の基本姿勢
2015 Shang china.jpg●中国は平和的発展の道を追求。地域の平和と安定を目指している。中国国防政策は防衛を基礎。多極化によって常に進歩。相互依存も増大。習近平主席は全人類は運命共同体だと
●共通・持続可能な安全保障を追求。文明観の差異を克服する壮大なビジョン。中国の英知を反映。中国はWIN-WINの関係の新しいモデルを追求。対立ではなく協調、互恵関係、国連憲章や国際法を尊重。
●冷戦期のゼロサムゲームを繰り返えさない。共通の基盤を見出し平和発展追求。一国で安全保障を確保できない。他の犠牲で自らの安全保障を追求できない。自らを守りながら、他国の安全保障を受け入れ。
安全保障のためには同盟ではなくパートナーシップを追求すべき仮想敵国や第三国を対象にすべきでない。正義を支持し、友好関係を追求すべきと確信。中国は途上国に多くの支援を提供し、客観的・中立的な立場から建設的な役割を。
発展途上国だが積極的に国際貢献
中国は積極的に国際的責任を果たしている。グローバルな問題にも。国連平和業務に3万人以上を24のPKOミッションに参加。今年初めて59の艦艇を派遣、6000隻の船舶保護
HA/DRにも。フィリピンの台風、MH不明機の捜索、エボラ対策、モルディブへの飲料水供給、イエメンの自国民救出の際には外国人も保護ネパール地震への緊急支援・医療支援。PLA医療支援は18カ国に。
安全保障枠組みへの取り組み
2015 Shangr China2.jpg共通の安全保障の追求。二国間・多国間の協力50カ国以上と演習を実施。CUES演習を南シナ海で、航海航行の安全共同演習を地中海で開催、ARF-DiREXにも災害支援ユニットを派遣。アフガニスタン、スーダンで地雷除去の技術支援
●相互の信頼・対話の強化。中国は徐々に「新しい軍・軍関係」の構築を目指す。ASEANと協力・信頼の拡大し中・ASEANの非公式の国防会議。SCO、ADMM、ARFにも積極的に参加
中国は近隣諸国とのパートナーシップを重視。14の隣国のうち12国と国境画定。海洋紛争がある場合には、大局的な安全保障の理解を考慮。法的根拠があっても、自制して行動。南シナ海は全体的には平和で安定し、航行の自由は担保
南シナ海における岩礁の埋め立ては、防衛上のニーズと国際的な責務を果たすため。海上の捜索救難、災害救援、海洋科学調査、漁業サービス支援。国連の海洋調査にも協力。灯台の設置も安全に寄与。以上の建設事業は国際法に沿っており、第三国を対象にしない
言わせてもらおう!
Admiral Sun Jianguo.jpg中国は依然として世界最大の途上国。それでも国際的責務を果たす。世界の安全保障に寄与するため、安全保障協力を進める。永続的平和追求。中国の核心的利益は断固として守る。各国の軍と協力しながら、国連憲章・戦後の国際秩序を守る。
各国はダブルスタンダードや無責任な発言を控えるべき。共通の安全保障を追求すべき。対話・協議の重要性。意見の違いの調整の必要性。SCO, CICA, ARF, ADMM+などを通じて、安全保障のアーキテクチャをつくるべき。
●中ASEANの危機管理枠組み、日中の海上連絡メカニズム、海と空と安全のための努力を継続。大小問わず安全保障を担保すべきだが、小国は挑発的な行為をすべきでない、地域の安全保障を自国の利益のために乗っ取るべきでない。
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追記第2弾! カーター国防長官講演
神保謙:慶応大準教授の「実況ツイート」を参考に
→https://twitter.com/kenj0126
カーター講演の原稿はこちらに
→https://www.iiss.org/-/media/Documents/Events/Shangri-La%20Dialogue/SLD15/Carter.pdf
「日本は東南アジアへの関与を深化。日米同盟は多くの地域で協力が可能に more and beyound」
「(埋め立て問題に)中国の意図に疑問。埋め立ての即時停止、軍事化に反対」、「中国は未曾有の活動ををしている。米国の立場は、全ての領有権主張国が同海域での埋め立てを中止し、軍事化を中止し、平和的解決を目指すべき
情勢認識と米国の決意
2015 Shangrila2.jpg●シンガポールを訪問し、昨日は首相と国防相と会談した。この後はベトナムとインドを訪問し、新たな国防協力に合意する予定だ。また先月には、日本と韓国を訪問し、国防関係を推進した。その他にもアジアの多くの関係国と関係を強化している
米国の力強い関与でアジア太平洋の平和と繁栄継続が可能に。安全保障枠組みは包摂的であるべき。集団で対応すべき。問題には、威圧でなく協力によって利害を追求すべき
●過去70年アジア太平洋は成長を継続。アジア太平洋は世界経済の中心で、貿易の拡大が基礎。貧困は削減。自由と民主主義も拡大。米国経済の強靭さ、イノベーション、大学、軍の優位性の担保
米国はアジアへの「リバランス」の次の段階にコミット。軍の役割の多様性、次世代の技術への投資、海空軍の無人システム、長距離爆撃機、レーザー兵器、電磁レールガン、宇宙・サイバースペース用の新システム、予想外のサプライズなものもある。DDG-1000Zumwalt、E-2D、攻撃潜水艦、P-8等、アジア太平洋に最新装備を継続提供
米国は超党派で「リバランス」にコミット米の財政状況にかかわらず、同盟・パートナー国とともにアジアの安全保障に関与。全ての国が台頭する機会を提供する。
アジアの複雑な安全保障環境。北朝鮮、エネルギー、海洋・空域の自由なアクセス、気候変動、貿易投資関係、テロリズム、サイバー攻撃、麻薬密輸問題などがある。これらの問題が地域の成長を阻害する危険性がある。共通の利害関係を明確に認識することが重要だ
アジアは欧州のNATOとはことなり、共通の安全保障体制があるわけではない。安全保障はこの地域の全ての国々の共通の責任国際法・ルール・規範を守り、同盟を強化し、連関性を強化すべき。
この地域における指針
2015 Shangrila.jpg第1は紛争の平和的解決、海洋航行・飛行の自由。全ての国は安全保障の選択を強制されないことが重要。
第2は制度の強化。ASEANの中心性は今後も維持。米はASEANへの関与継続。米は国防アドバイザーをASEANに派遣中。HA/DR。
第3は米国の同盟国等との関係。これはCorner Stone。同盟の近代化で進化する脅威に対応し、地域・グローバルに拡大する。安倍総理のもとで、日本は東南アジアへの関与を深化。日米同盟は多くの地域で協力が可能に
米韓同盟も朝鮮半島の抑止力に貢献。米豪の共同訓練。インド・ベトナムとのパートナーシップを強化。インドとAct East方針を強化。3国間ネットワークも重要に。日米豪(含む防衛技術・インテリジェンス協力)、日米印(Maritime Security)等。
第4は海洋安全保障の強化シンガポールにLCSの展開。捜索救難。ベトナムの沿岸警備隊を支援、マレーシア陸・空部門との協力、フィリピンの沿岸警備隊構築への支援。Maritime Domain Awarenessの強化を進める。新しい海洋安全保障の新たな方針を策定。
第5は協力・連携の強化と習慣化。米国の域内の共同訓練・演習の増大。域内のリスクは意志疎通増大で低減可能。米中の軍事交流の強化。空対空の危険削減措置の推進。これは地域全体のアセットとなる。HA/DR能力も向上させる。
ベンガル湾におけるロヒンギャ問題には、迅速な行動が必要。マレーシア、インドネシア、タイと米国等と協力を評価。
中国の南シナ海での「埋め立て」に
Jimpo.jpg国際貿易にいかに重要かを認識。TPPは重要で米国もしっかり関与を進めている。南シナ海の安全保障には全ての国が共通の利害。海域を不安定にしたり、現状変更をする行為を強く懸念。既成事実を作り上げる行為には深い懸念。(←写真はツイート速報の神保・慶応准教授
●南シナ海で飛び抜けて早いペースで埋め立てをしているのは中国。驚くべきペース・範囲・規模で、この地域に緊張が生み出されている。今後の軍事化に懸念し、多くの誤算の原因にねることを深く憂慮している。米だけの懸念でなく、地域・世界の懸念である。中国の意図に疑問
●米は南シナ海の全ての紛争の平和的解決を望んでいる。埋め立ての即時停止、軍事化に反対。南シナ海の問題に軍事的解決はありえない。この地域の安保体制に中心的役割を果たすASEANの役割を期待、今年中に行動規範の締結を望んでいる
●南シナ海の外交的解決を重視・支援。ADMM+やASEAN拡大海洋フォーラムなど重要だ。米国は今後も関与を続けていく。紛争予防・危機回避のために日頃より協力・対話を続けていくことが重要。地域安全保障アーキテクチャの連携性(コネクティビティ)強化
質疑応答
Q:中国軍幹部からの質問
中国への批判は建設的ではない。南シナ海における航行の自由は全く問題ではない。中国の行動は平和を脅かしていない。南シナ海の継続的な平和の理由は、中国が抑制を続けてきたからだ。同海域で警戒・監視活動など挑発を続けているのは米国ではないか?
カーター長官の回答
●南シナ海では複数の国々が領有権を主張しているが、中国は未曾有の活動ををしている。米国の立場は、全ての領有権主張国が同海域での埋め立てを中止し、軍事化を中止し、平和的解決を目指すべき、という立場だ。米国は従来より警戒監視活動を以行っており、何ら新しい活動ではない。
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追記第1弾!
序章:カーター長官が中国に強い言葉を
Hawaii.jpgハワイ時間で27日、第14回アジア安全保障会議のためシンガポールに向かう途中、ハワイでの太平洋軍司令官の交代式に出席したカーター国防長官は、「out of step:歩調を乱す; 調和しない」との言葉を用い、南シナ海で埋め立て基地を急拡大中の中国を牽制しました
27日付defense-Newsは、「カーター長官が就任後の3ヶ月間の中で恐らく最も強い表現だ」と報じています
カーター長官の「事前に準備された」挨拶文より
中国は、国際規範と地域のコンセンサスを乱している(調和しない)。それは、アジア太平洋の規範でもある国際規範であり、本件や他の長年の係争案件に対し非抑圧的なアプローチを望むいう地域のコンセンサスである
(China is out of step with both international norms that underscore the Asia-Pacific’s security architecture, and the regional consensus in favor of non-coercive approaches to this and other long-standing disputes,” Carter said, later adding that the US “will remain the principal security power in the Asia-Pacific for decades to come.)
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2015 Abe.jpg今年のシャングリラ会合webサイトは、29日のシンガポール首相演説まで、日本の安倍首相(昨年基調講演:今年は不参加)や海上保安庁の巡視艇の写真で溢れており、日本の国防に関する最近の積極的姿勢が大きな注目を浴びている様子が窺えました
なお今年の中国からの参加者は、PLA副参謀総長Sun Jianguo海軍大将(孙建国:国際問題担当)で、国防相クラスの参加はありません。2013年から同じレベルで参加です。
ちなみに今回は、河野統合幕僚長が制服組として初めてパネル討議に参加予定で、注目です
IISSシャングリラ会合webサイト
→http://www.iiss.org/en/events/shangri-s-la-s-dialogue
会議の概要と進行
2015 Shangrila.jpg●本会議は、英国の民間研究機関IISSが主催する非公式の会議ですが、アジア太平洋のほぼ全てと、欧州主要国の国防大臣が一堂に会する点で、「アジア最大の安全保障イベント」とも言えます
●注目の的であるカーター米国防長官は、一人で一つのセッションを担当しますが、他国の大臣は複数で登壇し、パネル討論のような形式になります。また、複数のセッションが同時並行で行われる時間帯も設けられています
●討議やパネル討議には、アジアの安全保障に関する複数のテーマが設定されており、講演やパネル討議で登壇した国防大臣等には、会場に詰めかけたマスコミや一般参加者から多数の質問が投げかけられます。
特に、中国軍人が米国防大臣にかなり「辛辣」な質問を投げかけることもあり、民間主催の会議ならではの「歯に衣着せない」質問が飛びます
Shangri-la-D.jpg●会議の期間中、バイの会談も複数セットされます。2014年には日米韓の3ヶ国国防相会議が設定されました。今年は30日に日韓国防相会談(4年ぶり!)が設定済み。日米や米韓会談も行われると思います
●このようにシャングリラ会合は、民間研究機関主催とは言え、今やアジアの安全保障状況を反映する大きなイベントとなっています。ちなみに中東では、同じIISS主催の「マナマ会合」が毎年バーレーンで開催されています
日程の概要
Kawano.jpg29日は夕食会とシンガポール首相の基調講演
●実質の会議は、カーター国防長官による30日朝9時(現地時間)からの講演でスタートし、その直後の3カ国大臣パネル討議(アジアにおける新たな国防協力)に中谷防衛大臣が、インド及びインドネシア国防相と共に登壇
30日の午後3時からは、河野統合幕僚長が制服組として初めて登壇し、部門別のパネル討議(インド・太平洋地域のエネルギー安保の課題)に、豪州外交通商大臣や石油会社幹部やIISS研究者と共に参加
中国のJianguo副参謀総長は、31日朝9時からのパネル討議(アジア太平洋地域の地域秩序強化)に、NZとドイツ国防相と共に登壇予定
今年の注目点
2015 shangri-la.jpg●なんと言っても、カーター国防長官が「名ばかり太平洋リバランス」と揶揄されるアジア太平洋政策を、どのようにアピールするかが注目されます。個人的には、米国の施策に併せて言及されるであろう「同盟国等への期待」や「役割分担」に関する発言が気になります
新しい政策が打ち出されるとは思いませんが、中国に対しては少しは強い表現が出るかもしれません。最近良く聞かれる「TPPが重要だ」的な発言がメインにならないことを祈るばかりです。
最近の日本の取り組みを、各国の国防大臣や専門家がどのように評価するかも注目です。中国や韓国以外から、日本を警戒する発言が出るとは思いませんが、IISSの司会者やスポンサー企業(朝日新聞)や会場内から「誘導質問」があるかも知れません
●日本を警戒する発言が出た場合、日本のプレスが大々的に報じると思いますのでご心配なく・・・
スポンサーから中華系企業撤退
2015 Sponser.jpg●会議主催者であるIISSのチップマン所長は、研究者と言うよりは「商売人」としての「がめつさ」で有名。シャングリラ会合のミニ版を東アジアで開催しようと、日本をはじめ各国に打診し、お金を出させてIISSが儲けようと画策しているとか
スポンサー企業は、昨年の10社から中華系のメディア資本2社(鳳凰網とフェニックスTV)が撤退して8社に。ちなみに、鳳凰網は全世界の華人のためのポータルサイトでした
●なお、日本からは継続して三菱商事と朝日新聞社がスポンサーになっています。恐らくスポンサー特権でしょうが、朝日新聞の加藤洋一記者は、米国防長官への質問者に毎年指名されています。
今後、可能な範囲で少しづつ、このページに追記していきます
いきなりの暑さで、気力が萎えていますが・・・
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新しい太平洋軍司令官ハリス大将関連
「ハリス大将が上院で語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-04
「次期PACOM司令官はP-3搭乗員」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23-2
IISSシャングリラ会合webサイト
→http://www.iiss.org/en/events/shangri-s-la-s-dialogue
ちなみに過去のシャングリラ会合記事は・
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「2010年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

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