小規模なStartup企業への浸潤と情報流出を警戒
米ベンチャーキャピタル専門家「避けられない」
25日、米国防省のEllen Lord調達担当次官が緊急会見を行い、コロナ問題が産業界に大きな影響を与えつつある中、国家安全保障に関わる技術情報を持つ企業に対し、苦境に乗じて中国資本がアプローチし、重要な技術情報が中国に流出する恐れがあると懸念を示し、国防省として関連企業との意思疎通を強化し、これを防止するための仕組みについて説明しています
一方で、ベンチャーキャピタル関係者などは、「手をこまねいて見ているしかないだろう:we’ll only have ourselves to blame」と表現し、中国資本の浸潤は避けられないだろうとの見方を示しているようです
会見の内容が内容だけに、記者団からは何度も「具体的な動きを察知したのか?」との質問が出たようですが、Lord次官や次官補代理は一般的な話に終始し、具体的な話には言及しなかったようです。
国際政治学者の間でも、コロナ感染で受ける影響は、中国よりも米国が大きく、経済バランスが中国に大きく傾く契機となるのでは・・・との話も聞かれるようになっています。
25日付Defense-News記事によれば
●25日、Lord調達担当国防次官は記者団に、「この危機に際し、軍需産業基盤が敵対国の資本浸潤に脆弱であることを理解しておかなければならない。そこで我々は、それら企業が重要で貴重な技術を失うことなく、ビジネスを継続できるようにしなければならない」と述べた
●具体的な脅威を察知したのかとの記者団からの質問に、Jen Santos軍需産業政策担当次官補代理は、「大きな脅威があると考えている。特に、国防省とのビジネスが今後も継続するのか不安に思っている小規模な企業が存在していることから、これらの不安や懸念を払拭するため、国防省は関係企業と積極的に頻繁に連絡を取っている」と説明した
●ベンチャーキャピタルの資本家は、「中国はたぶんこの不況に乗じ、触手を伸ばそうとするだろう」と述べ、「現在の米国内での、その日暮らしの資金流通状況からすると、受注が先細り傾向にある小規模事業者は、中国資本にとって格好のターゲットとなるだろう」と見ている
●更に「国防省の対策が、大規模な軍需産業から進んでいく傾向がある中、小規模議事業者やスタートアップ企業の不安をぬぐうのは容易ではない」、「中国資本が大規模に業界を囲い込む可能性もある。手をこまねいて見ているしかないだろう:we’ll only have ourselves to blame」ともコメントしている
●米国防省は過去数年にわたり、中国をはじめとする外国資本によるスタートアップ企業などへの資本浸潤を警戒していると訴えてきた。国家安全保障に関係する先端技術を保有するこれらスタートアップ企業の中には、中国側に技術情報へのアクセスを許す見返りに、投資を受け入れる企業が増えてきたからである
●この動きを防ぐため、国防省は2つの手法を中心に対応してきた。一つは「Committee on Foreign Investment in the United States, or CFIUS」による、国家安全保障に関する分野への外国資本の接近監視・ブロック機能であり、
●二つ目はまだ初期段階にある「Trusted Capital Marketplace program」で、これは「愛国心のある投資家」を募って資金繰りに苦労する関連企業を支援する枠組みである。ここ数週間で2件の融資が成立している
●ただ同次官補代理は、一つ目の監視機関CFIUSは、コロナの爆発的感染により、活動に影響が出ていると会見で述べている
●Lord次官は会見の最後に、「我々の軍需産業基盤を守るため、国家安全保障を守るため、CFIUSによる監視は大変重要になっている。この混乱の中にあっても、外国資本の浸潤に最高度の警戒をしなければならない」と述べた
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「武漢ウイルス」がもたらす結果を中国が予測していたとは思いませんが、仁義なき戦いとはこのことを言うのでしょう.
米国防省の話からは、強い対策が存在しない状況が伺えます。「愛国心のある投資家」と「愛国心あるスタートアップ経営者」の心意気にかけるしかないのかもしれません・・・。厳しい情勢です
米国防省のコロナ対策や影響
「3月18日以降の変化:随時更新」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-19
米国軍需産業の分析レポート
「2019年版 米国防省軍需産業レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
艦艇の修理や兵たんの課題
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05