LRS-B計画は議会対策が難しい

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10日、米空軍協会のMitchell研究所が主催したパネル討議で、シンクタンクAEIのMackenzie Eaglen女史やDavid Deptula研究所長が予算獲得や議会説得の面で次期爆撃機LRS-Bは困難に直面するだろうと危機感を訴えています
共和党系の国防投資積極推進派のAEI研究者と、元空軍中将で航空作戦研究の第一人者であるDeptula氏の発言ですから、現状(オバマ政権)への危機感や不満が強く反映されていますが、それを差し引いても「LRS-B計画推進は容易ではない」との現状を感じます
特に、未だ議会内ではイラクやアフガン作戦のイメージが強く残り、「米空軍は無敵」との雰囲気があることを指摘しており、興味深いところです
12日付米空軍協会web記事によれば
Eaglen AEI.jpg●AEIのEaglen女史(美人さんです!)は、米空軍による米議会に対するLRS-B予算獲得努力は不十分で、米空軍が主張しているA2AD脅威の拡散を受けたLRS-Bの必要性を、「米議会は感じていないし信じてもいない」と訴えた
●議員たちは、米国が過去20年間対峙した原始的で防空システムを保有しない敵のイメージしか持っておらず、米航空戦力が無敵だと信じている、とEaglen研究員は指摘した
●また一方で、米空軍がLRS-Bの必要機数を80~100機としていることについて、見積もり根拠が「やわやわ」でしっかりした分析に基づいておらず、実際は170機以上必要にもかかわらず、議会は少ない方(80機以下)に傾くと指摘した
●更に、1機当たりのコスト上限を設定しているが、「戦う前から片手を自ら使わないと宣言しているようなものstrong>」で、LRS-Bの能力向上の必要性が生じたり、価格が高騰した際に、米空軍の信頼感を失うだけだと批判的に語った
●そして、米空軍予算はLRS-B計画を支えられる規模になっておらず、F-35予算と戦いを永久に続けることになろうと述べた
●また、計画の細部が非公表になっていることで、議員の選挙区に関連する企業が「下請け」に含まれているかが不明で、支援する議員確保も難しくなっていると実情を明かした
Deptula研究所所長も同計画を懸念
Deptula AFA.jpg米議会はLRS-Bを高価な爆撃機としか見ておらず、いい加減な比較で、B-52に搭載する長距離ミサイルや開発中の超超音速ミサイルの方が低コストだと評価しかねないと懸念した
小規模で短期の紛争なら、コスト面でスタンドオフ兵器に軍配が上がる可能性はあるが、規模の大きい戦域レベルの戦いでは、長距離兵器では任務を達成できない
●湾岸戦争のような大規模の戦いでは、目標数が4万から5万も存在し、LRS-Bが目標上空近くに侵入し、安価な爆弾等を投下する方法が最も効率的である。
●また、LRS-Bは単に「爆撃機」ではなく、敵領域深くに潜入して情報収集を行って、その情報提供の起点となる「長距離センサー&シューター」だと理解してもらう必要がある
●この様なLRS-Bの真の価値は、米空軍が時間をかけて説明や議論をし、議会内の理解を獲得すべきものである。そうしないと、WW2時のP-47サンダーボルト単発攻撃機のイメージで理解されてしまう
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Northrop LRS-B.jpgこの場では、「近年でも最も優秀で仕事ができるメンバーが集まっている」(CSBA理事長談)と言われる米議会の軍事委員会の話題を取り上げますが、それ以外の議会の方は、「私利私欲」に走っているということなのでしょう
議員の選挙区にLRS-Bの下請け企業が含まれているかが一つのポイント・・・との非常にわかりやすく、ガッカリする現実が説明されています
ところで・・・MRJ初飛行は素晴らしいニュースで、今後の順調な飛行試験と商売繁盛を祈念申し上げますが、「三菱重工」の国防関連業務の人材まではぎ取って、旅客機分野に投入するのはやめて下さいね!
特に、それでなくても日の当たらない「救難機」とかも、よろしくお願いします!
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