Work副長官が第3のOffset Strategyを解説

Work-Reagan.jpg8日Work国防副長官は、7日のカーター国防長官の基調講演を引き継ぐ形でReagan foundationイベントの締めくくりに登壇し、カーター長官が「如何に中露対処するか」を語った中で言及していた、技術優位を確保する「Third Offset Strategy」に関する具体的取り組みについて説明しました
「Third Offset Strategy」については、9月10日に英国RUSIでその方向性を語っていましたが、10日の講演では少しより具体的に表現しています。
トランスクリプトがない(映像はあります)ので詳細がよく分かりませんが、小さな事からコツコツと、具体的なイメージに迫りたいと思います
本Work副長官講演を強く推薦したカーター長官基調講演
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-13
前提として9月にRUSIでは、これまでのLRRDPP検討等により、「敵による精密誘導兵器の大量同時発射への対策に、画期的な低コスト対処」や、「短射程精密誘導兵器やサイバーや電子戦が入り乱れるHybridで複雑で高度な戦場対処」が課題との問題認識が背景にある事を明らかにし、後半の「高度な戦場対処」には第2の「AirLand Battle」や「Follow-on Forces Attack」コンセプトが必要だと語っていたところです
9月10日のWork副長官英国RUSI講演概要
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
まず「Offset Strategy」について副長官は
Work-Reagan2.jpgJohn Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力と無敵の通常兵器保有が「great power」には必要である
●「Offset Strategy」は一つに目的に焦点を絞っており、それは通常兵器による抑止力を絶対的に強力にし、米国が戦争に巻き込まれる可能性を極限まで低下させることである。他の大国に対する通常兵器による抑止を指すものである
第一の「Offset Strategy」は50年代に始まり、戦術核を大量に欧州に導入し、西欧への通常全力による攻撃を抑止した戦略である
第二の「Offset Strategy」は70年代に始動し、ソ連が戦略核で米国と肩を並べた時代に、精密誘導兵器やステルス機を導入したことでその目的を達した
●ただし技術の重要性だけを述べているのではない。それを支える人材が基礎であることも忘れてはならない
●そしてITの世界で若い世代がその創造性を発揮しているように、戦域レベルの戦いを知らない若手士官が作戦コンセプトや軍の組織構造に飛躍的な革新をもたらすかもしれない
●西側が過去25年間確保してきた技術優位の差、特に精密誘導兵器分野、は無くなりつつある。我々はhybrid warfareに直面し、その対処に新たな作戦コンセプトを必要としている。しかし現状を越える新たな手段を手にしていない
第3の「offset strategy」は、human-machineによるコラボや戦闘チーム形成に基づくものになるだろう無人システムの高度化、特に自立学習能力の飛躍的向上により、人間の能力と組み合わせるとダイナミックな活用が期待できる
●「Offset Strategy」では、艦艇対艦艇や、戦闘機対戦闘機や、戦車対戦車を追求するのではない。(新技術でOffsetを確保して完全な優位を確保する)
●我々が「Third Offset Strategy」を実現することで、敵は敵の軍や究極的には社会の変革を迫られることになり、戦いに至る可能性はより低下するだろう
●ただ、現時点では細部には言及できない。今後18ヶ月程度でより具体的にしたいし、2017年度予算案には関連予算を相当積み上げることになる。2016年度予算にも含まれているが
●今日は「big idea」についてお話ししたい。2つの検討から明らかになった、求められる5つのブロックである
2つの検討から、5つのブロックが明確に
Work-Reagan3.jpg一つの検討は「LRRDPP:Long-Range Research and Development Planning Program」で他の大国が大量の精密誘導兵器を使用し、ホームアドバンテージを持って挑んでくる場合の対処に焦点を当てて行った
●もう一つは、(国防省)科学諮問委員会による「Autonomy:自律性」に関する報告書である。誰も証明は出来ないが、我々は今、人工知能や自律性の「inflection point」に立っていると考えられる
Work副長官の語る「5つのブロック」とは
●Learning machines
BMDや宇宙戦や電子戦やサイバー戦では、電子の速度で戦いが進展するが、人工知能や自律性を備えた「Learning machines」が状況の光速で掌握し、必要な対処で人間をサポートする
●Machine-assisted human operations
「wearable」な電子装備や「Assisted human operations」は、前線兵士がどんな任務に置いても恩恵を受けるだろう。10年後に、間隙から最初に突入する兵士がロボットでなかったら、我々の恥だ
●human-machine collaboration
—1997年にIBMコンピュータがチェス名人を破ったが、2005年には2名のアマチュアと3台のPCコンビが、スパコンやチェス名人を破って大会で優勝している。PCの情報処理の正確性と迅速性が、人間の戦略性と創造性と組み合わせたhuman-machineコラボが最強の力を生み出す。継続的に戦略の変更を続ける将来の敵も想定しなければならない
—F-35が一つの例になる。F-35は単なる戦闘機ではなく、空飛ぶセンサーPCで、膨大なデータを照合し分析し、HMD上で操縦者に提供する。F-16の方が旋回性能が優れていても、メカが人間をサポートするF-35が勝者となる
Work-Reagan4.jpg●human-machine combat teaming
(映像から聞き取り→無人機や無人装備の活用であり、有人装備と無人装置のコラボであったり、多様なものが考えられる)
●autonomous weapons
(説明はなかったが、発射後、自ら判断して目標まで最適の経路を選択し、目標を探し当てて攻撃できる巡航ミサイルなどのイメージか)
////////////////////////////////////////////////////
米国防省webサイト記事でWork副長官の講演をご紹介しましたが、全発言が紹介されていないので、特に「5つのブロック」に関しては十分な説明が出来ていません
「Reagan foundation」のwebサイトには「映像」で発言が紹介されているようですので、ご興味のある方はご確認下さい。
映像の8時間37分頃から
→http://www.reaganfoundation.org/reagan-national-defense.aspx


ひとつポイントとして強調確認しておきたいのは、上記の考え方に示されている脅威対処の方向性は、艦艇対艦艇や、戦闘機対戦闘機との視点では敵と差が付けられないとの問題認識から、正面対決から「Offset」し、優れた人的資源や頭脳融合により、従来とは異なる側面から技術的優位を確保して「圧倒的優位」を確保し、通常戦力抑止を確立しようとしている点です
今後10~15年後を見据えた取り組みのような中身ですが、今後も注目して参りましょう・・・。
関連の記事
「RUSIで副長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「カーター長官の基調講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-13
技術優位確保の取り組み
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
「新技術導入に企業と同盟」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「技術確保に新組織DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09

タイトルとURLをコピーしました