14日、Dunford統合参謀本部議長がCNAS主催のフォーラム(Work副長官も講演)で講演し、現下の情勢認識を語ると共に、統合参謀本部の組織スリム化や任務見直しに関する検討について語りました。本日は、統合参謀本部の組織や任務再検討に関する部分についてご紹介します
背景には、上院軍事委員会のマケイン議員等が、国防長官や統参議長や主要コマンドの任務を規定した1986年制定の「Goldwater-Nichols法」の見直しを検討しており、複数の関係者から意見を聞いている事があるようで、自主的に「出来ることはやっておく」姿勢を示しているのでは・・・との見方もメディアにはあるようです
15日付Defense-News記事によれば
●CNASで講演したDunford統参議長は、地域コマンドの編制や構成も含めた統合参謀本部の組織について、オープンな姿勢で多様な意見に耳を傾けていると語った
●様々な意見の中にはもっともだと考えさせられる意見もあり、様々な経緯で現在の形になった統合組織が、いつの間にか時間の経過と共に現実と乖離し始めている部分もあるのかも知れないと、同議長は表現した
●例としてDunford大将は、統合参謀本部が給与に関する提言を行っていることを取り上げ、特に要求が無い限りその様な業務は外し、本来の中核的業務であるはずの軍事戦略や態勢維持に焦点を絞る方が良いとの考えを示唆した
●そして具体的に、種々の意見を参考にしつつ正しい選択をし、業務の削減(組織の削減?)は来年前半(sometime after the first of the year)に行いたい。そして関係者には、君はよく働いているし、これは君の仕事ぶりの問題ではない、我々がその業務をなくそうとしているのだ、と説明したいと語った
●一方でDunford議長は、スタッフ組織が増殖しすぎたとの一般的な指摘を否定し、大佐時代の部下の規模だと個々のスタッフを良く掌握でき、迅速に効率的に意思疎通が出来たと語った
米国防省web記事は同講演について
●将来の如何なる紛争も、現在の傾向からすれば「transregional」「multidomain」「multifunctional」になるだろう。北朝鮮など典型的で、以前は朝鮮半島内に収まると考えられて居た事態が、北朝鮮による弾道ミサイル開発で日本のような地域アクターも影響を受けるようになっている
●しかし、現在の国防省や統合参謀本部の計画枠組み、組織攻勢、指揮統制システムは、この様な「Trans」で「Multi」な戦いに最適化されていない
●米軍の諸計画は地域ごとになされており、他地域との関係は「協力」をベースにしている。聴衆の皆さんには驚きかも知れないが、国防省内で最も融合が進んでいないのが国防長官の仕事で、私の一番の課題だと認識し、懸命に取り組んでいる
●統合部隊としての即応体制の尺度についても再検討している。単に各部隊や部分の状態では無く、装備品や兵器の在庫や保管状況、日々の対応可能状況などにも焦点を当て掌握することを検討している
////////////////////////////////////////////////////////////
マケイン上院軍事委員長の動きは大きな契機でしょうが、それだけを「背景」としてみるのは邪推で、かねてよりペンタゴンのスリム化や地域戦闘コマンドの再編成は、色々な場面で議論になっています
またDunford議長も全世界の初度訪問を終え、色々考えるところがあるのでしょう。地域の広がりを意識するのは、例えば欧州とアフリカが別々のコマンドで、連携に一手間かかる等の問題認識もありましょう。
南北アメリカ軍の統合、アフガンとパキスタンの太平洋軍への移管、また北極の扱いも論点かも知れません。
全く別の視点で、4軍には将軍ポストを「死守」するDNAがありますので、制服トップのDunford議長としては、そのあたりに削減のメスが入らないように、先手で改革に手を着けるのかも知れません
地域コマンドの再編に関する記事
「地域コマンド改革私案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-24
「情報筋:コマンド再編案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12
「米外交の軍事化を懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-15-1