「砂漠の嵐」作戦25周年:過去の栄光は今・・

米空軍の絶頂期だった「砂漠の嵐」作戦25周年
Desert Storm3.jpg25年前の1991年1月17日、イラクのサダム・フセインに侵略占領されたクウェートを解放すべく、「砂漠の嵐作戦:Operation Desert Storm」が開始され、約6週間の航空作戦とそれに続く約100時間の地上作戦でクウェートは解放され、イラク軍は大きな被害を受けました
同作戦をリードした米空軍を中心とした12カ国による航空作戦は、初めて実戦投入されたGPSやレーザー誘導の精密誘導兵器やステルス機が、近代的な防空システムを備えたイラク防空網と直接対決した戦いでしたが、開戦後僅か60分で、フセインはイラク軍との指揮通信や目となる監視レーダーをほぼ全て失ったと言われています
このように、精密誘導兵器やステルス機と言った航空戦力が戦いを主導し、米空軍が一つの絶頂期を迎えたのがこの「砂漠の嵐作戦」で、その後米空軍はこのモデルを様々な作戦に適応していくことになります
米空軍はこの過去の絶頂を懐かしむように、「砂漠の嵐」作戦25周年「特設webページ」を立ち上げ、関係者のインタビュー映像や解説映像を大量にアップしています
また、米空軍webサイトも、現状を踏まえて控えめながら、幾つかの記事をアップして振り返っていますのでご紹介します。
米空軍「特設webページ」
→http://www.af.mil/AboutUs/DesertStorm25thAnniversary.aspx
米空軍協会の機関誌記事「25年を振り返る」
→http://www.airforcemag.com/MagazineArchive/Magazine%20Documents/2016/January%202016/0116scrapbook.pdf
同航空作戦を計画したDeptula元中将は
Desert Storm2.jpg●「砂漠の嵐」作戦の初動24時間で、多国籍軍はイラク国内に散らばる重要目標150以上を攻撃した。この攻撃目標数は、WW2当時、欧州戦線で当時の第8空軍が1942年と43年に攻撃した全ての目標とほぼ同じ目標数である
●同航空作戦は、敵の指揮統制中枢から最前線部隊までを「同時並行的に攻撃」し、双方の犠牲者を局限し、精密誘導とステルスと宇宙アセットを有機的に活用し、統合作戦でかつ多国籍部隊による作戦であった点で「過去の戦いからの劇的な離別」であった
●更に、歴史上初めて、航空戦力やエアパワーが戦いの鍵を握る中心となった戦いであり、戦争戦略の実行に置いて初の戦いであった
米空軍アップの映像例:初投入GPS誘導の巡航ミサイル


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しかし、世界に衝撃を与えたこの作戦は、米国の軍事技術に驚嘆した中国や「非国家組織」をして、知恵を絞らせ、米軍を分析させ、A2ADや非正規戦(テロ等)の道へ駆り立てることになります
中国はA2ADへ、米軍は対テロへ
Desert Storm.jpg●ステルス機等による米軍の圧倒的通常戦力優位を痛感した中国は、西太平洋地域で米軍拠点が少ないこと、米軍が宇宙アセットやネットワークに依存している事を弱点と捕らえ、また1996年の台湾総統選挙時に空母2隻に沈黙させられた屈辱を「臥薪嘗胆」エネルギーとした
●更に比較的容易に獲得できる弾道ミサイルや巡航ミサイル技術に注力し、また新ドメインであるサイバーや宇宙戦で米軍の弱点を突くべく、経済成長を追い風に、20年に渡りA2AD態勢構築に取り組んだ
一方米空軍は、バルカン半島の民族対立やアフガンやイラクでの戦いに引き込まれ、対テロ地上作戦支援を中心に取り組み、強固な防空網を備えた敵との戦いを忘れ、敵から空襲やミサイル攻撃や電子妨害を受ける記憶を失ってしまう
2010年QDRは、初めてエアシーバトル検討を公式文書に掲げ、本格的な相手となる中国の軍事力台頭に備えた検討を開始するが、陸軍や海兵隊の足引っ張りや強制削減がちらつく中、米空軍はその方向性が揺らいでいる
●「砂漠の嵐作戦」の夢を追うかのような「亡国のF-35」計画はますますその混迷を深め、「ある意味、米空軍はその成功の犠牲者」と2010年当時の国防長官に呼ばれるに至った苦しい状況に追い込まれ、中国の新たな脅威の前にただ呆然と立ちすくしています
●そしてその米空軍に盲従し、未だ「25年前の米空軍」を目指すかのような航空自衛隊は・・・これぐらいにしておきましょう
ロバート・ゲーツ語録100選より
●米空軍は、空対空戦闘と戦略爆撃に捕らわれすぎており、他の重要な任務や能力を無視しがちである。ある意味で空軍は、その成功の犠牲者とも言える
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07 
いい加減にしろ戦闘機命派
「戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「悲劇:F-3開発の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「悲劇:日本でF-35組立開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17

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