壮大な実験です(失敗予想に1票投じますが・・・)
4日、ドイツ国防大臣とオランダ国防大臣(両者とも女性)が合意文書に署名し、陸軍部隊や海兵部隊を相手国指揮下に編入したり、輸送補給船を共同使用や運行することなど、全軍に渡る装備や人員の共有共用を進める方向を確認しました。
既に合意している防空やミサイル防衛分野での共同運用とあわせ、苦しい財政事情の中で効率的に国防体制を維持する試みで、ドイツ国防大臣は「欧州国防ユニオンの例となるもの」と表現しています
4日の合意文書以前に既に進んでいる分野もあるようで、まぁ・・アジアでは考えにくに進歩的な試みですが、「お手並み拝見」「高みの見物」をさせていただくとして、ご紹介いたします
ちなみに蘭大臣が「いけいけ風」、独大臣は「お嬢様風」のお写真の方です
4日付Defense-News記事によれば
●EUの国防相会議の開催直前のタイミングで、オランダのJeanine Hennis-Plasschaert国防相とドイツのUrsula von der Leyen国防相は、2018年までにドイツ海兵部隊(sea battalion)を段階的にオランダ海軍に編入することに合意した
●北ドイツに配備されているsea battalionは約800名で構成され、海軍基地防衛や艦艇警護、更に機雷対処を任務とする部隊である。同部隊はオランダ指揮官の下で訓練することになるが、既に独部隊は昨年から、オランダ海兵隊が取り仕切る演習に参加し始めている
●また同合意文書には、オランダ保有の200m級の輸送艦Karel Doorman(戦略輸送、他艦艇への補給、直上陸作戦に使用可)を、ドイツが使用可能とする規定も含まれた。今後、オランダは海上長距離輸送面でドイツ軍の中核協力者となる
●オランダは昨年同輸送艦を就航させたばかりだが、予算制約もあり、人員配備を削って共同運航パートナーを探していたところ。目立った着上陸装備を保有していないドイツ側の経費負担や協力関係の細部は検討中とのこと
●なお合意には、ドイツが統合(両国共用の)支援艦を2隻調達することも明記されている
陸軍や防空部隊でも動きが
●昨年方向性が明らかにされ、オランダ第43機構化旅団のドイツ陸軍第1戦車師団への編入についても合意文書で正式署名された。なおドイツ国防大臣は、2万人規模の訓練演習のための多国籍機構化師団を近年中に創設する構想も明らかにしている
●また同合意で、オランダは公式に、3つ保有している陸軍旅団のうちの2つを、ドイツ軍指揮下に編入した。このうち1個旅団(第11機動旅団)については、既に2014年にドイツ陸軍師団に編入されている
●これらを含め、ドイツ国防大臣は「欧州国防ユニオンの先例となるもの」と表現している
●オランダ国防大臣によれば、先週両国は、防空とミサイル防衛分野での協力を深化させることで合意し、共有の訓練施設を設けたり、ドイツ軍の防空部隊をオランダ部隊の指揮下に入れることも検討されている
●ドイツは防空砲装備車両をブラジルとルーマニアに売却してしまい、今は近距離防空能力を保有していないことから、両国は近距離防空のあり方や選択肢を検討している。
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ビジネスの世界で効率化を考えるとき、企業が合併して管理部門を合理化したり、農協が高価な農機具の農家共同購入を推奨する例はあるでしょうが、国家の根本にある国防で、特に「有事に」どこまで機能するのか興味津々です
米国の「働き掛け」や「仲介」も背景にあるのかもしれませんが、前線兵士たちの思いはどうなんでしょうか?
特に欧州でドイツ軍と言えば、ご高齢の方を中心に、それなりの感情をお持ちの方もいらっしゃるでしょうし・・・とっても現地の事情が気になります
ドイツ軍関連の記事
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1
「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30