22日付米海軍協会web記事は、先週末行われた米軍のフィリピン軍基地へのアクセスを拡大する交渉で、初めて具体的なアクセス拡大基地が決定されたと報じると共に、具体的な使用要領が未確定である事や、スービック海軍基地が含まれていないこと、更には今年予定の大統領選挙に大きく影響を受けるなどの、不安定要素「山盛り状態」をレポートしています
2014年4月、現在のBenigno Aquino大統領がオバマ大統領と、南シナ海情勢を受けて米軍のフィリピン軍基地へのアクセス拡大交渉に合意(国防協力強化合意(EDCA)してから早2年、この間、「交渉開始合意」が「違憲」だと比の最高裁判所まで争って、やっと最近「違憲」の訴えが退けられたところです
またその間、米海兵隊兵士による地元女性の殺人事件や「お約束の米軍反対運動」なども有り、沖縄と同じような状態になっていました。
今回ワシントンDCで行われた6回目の交渉が大きな突破口となるのか不明ですが、共同演習「2016 Exercise Balikatan」の直前に発表された、対中国の前向きな動きの一つとしてご紹介します
22日付米海軍協会web記事によれば
●19日からの週末に行われた米比の交渉で、国防協力強化合意(EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)の最初の成果が実を結び、5つのフィリピン軍基地が米軍へのアクセス拡大や物資事前集積を受け入れることが発表された
●5つの内の4つは空軍基地で、一つが陸軍基地である
—Basa AB in Luzon
比空軍の戦術攻撃部隊の基地で有り、米空軍戦闘コマンドのアセットを受け入れる十分な余裕がある
—Antonio Bautista AB in Palawan
中国との係争地南沙諸島に300nm以内。
—Mactan-Benito Ebuen AB in Cebu
比の地理的中心に有り、比空軍の輸送機基地で、民間飛行場と共存し港も近い
—Lumbia AB in rebel-stricken Mindanao
反政府ゲリラ「アブサヤ」が活発な地域に近い。対テロ航空作戦を継続し、米空軍の支援チームも活動する基地
—Fort Magsaysay:首都マニラの北に位置する
米比の地上部隊共同訓練等で馴染みの深い基地
5つの基地に残された課題や要注意事項
●米軍が使用可能にするためには、経費をかけて改修や施設整備等を行う必要がある
●自然災害等に対する人道支援や災害対処への活動拠点としての期待も高い
●冷戦時代に米軍が占領して使用していたクラーク空軍基地やスービック海軍基地とは全く異なり、あくまでもフィリピン軍基地の中にローテーション派遣や間借りして装備を事前集積したりする形態となる
●これらフィリピン軍基地に展開する米軍の指揮系統や作戦運用形態は未定。展開米軍部隊と比軍部隊の関係、米軍展開場所での独自活動の可否や要領、派遣米軍部隊が中国から攻撃を受けた場合の比の対応等々に関する考え方の整理が今後の課題
なぜ海軍施設が、なぜスービック港がリストにない?
●理由の一つは、1981年にスービック基地から米海軍が撤退して以降、米海軍が使用していたエリアは商工業スペースに転換が開始されており、2015年半ばにも、フィリピン国防省が旧米海軍エリアを15年契約で「輸出ゾーン」としてリースする契約を結んでいる事がある
●上記15年契約に基づき、スービック港では改修工事等が進められており、米第7艦隊などを受け入れたり、施設の拡充が出来ない状態にある
●またAquino大統領はこの夏に退任することになっており、現政権は本件に関する判断を次期政権にゆだねる事を選択している
●5月に行われる選挙は、中国寄りや港湾近代化に消極的な候補者が有力候補に含まれるなど予断を許さない状況であり、米国務省や国防省関係者はどの動向を注視している
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ベトナムやフィリピンは、南シナ海周辺諸国の間でも中国に強硬姿勢を見せている国ですが、そのフィリピンでも米国の「アジア太平洋リバランス」を支援する体制はこの様な状態です。
英語が通じるフィリピンは米国にとって重要な作戦拠点になるはずですが、今後の見通しは不透明と言わざるを得ません
5月9日予定のフィリピン大統領選挙の状況を把握していませんが、翁長知事みたいな人物がフィリピンに現れる可能性も否定できないようです
欧州の対ロシア戦線とは異なり、米国だけでなく、周辺アジア諸国も含め、軸足の定まらない(言い換えれば、中国の三戦に押し込まれている状態)状態だと言うことでしょうか
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