15日、Lockheed Martin社の先進技術部長であるRob Weiss氏が同社イベントで記者団に対し、同社による様々な脅威分析や作戦運用分析の結果を踏まえ、今後の戦闘機に対する投資が如何にあるべきかについて語っています。
同社が製造するF-22やF-35が当面しばらくは中心で、「第6世代機」については「今後30~40年間は投入されないだろう」と述べて2045年頃の導入を示唆し、何となく「我田引水」「手前味噌」的なご意見開陳ですが、1月にNorthrop Grumman社が行った同様の会見と対比する意味でも興味深いのでご紹介します
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
16日付米空軍協会web記事によれば
●ロッキード社の先進技術部長(head of advanced projects division)であるRob Weiss氏は記者団に対し、第6世代戦闘機は2045年頃に運用開始するのが適当だろうとの考えを示した
●Weiss氏は、同社が長年に亘り次世代の制空に関し様々な脅威分析や作戦運用分析を行ってきたと述べ、その結論として、米国が制空を維持するための最善の方法は「第5世代機の機数を増やすことだ」と語った
●そして同部長は「現在計画されているF-35調達機数を全機調達することが、米軍航空優勢上で最優先事項だ」と広範な想定で実施した各種分析の結果を表現した
●第2の優先事項として、F-22やF-35の能力向上改修を時機を失せず継続し、敵対国の第5世代機に対する優位性を確保し続けることが重要だと主張した
●第3番目の優先事項として同氏は、第6世代戦闘機に関する「game-changing」な技術への投資を上げ、それが他の技術による制空でなく新しい航空機だとすれば、第5世代機とは大きく異なるものである必要があると語った
●「我が社にはそのためのかなり有望な技術がある」と同氏は述べたが、それ以上細部に言及することは許されていないとして語らなかった
●それでもWeiss氏は、第6世代機は先進的な推進装置とセンサーを搭載するだろうが、極超音速(音速の5倍以上)を目指すようなものではないし、今後30~40年間は前線に投入されないだろうし、開発計画の開始も今後10年程度はないだろうと語った
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ちなみに、Northrop Grumman社幹部が1月に「第6世代機の論点」を語った際は、F-22やFA-18の後継機を大前提とし、2030年代に6世代戦闘機導入をあるべき姿として必要な能力や論点を主張しています
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
●デジタル「白血球」でサイバー対処
全てのサイバー攻撃を防止する事は不可能に近いので、次世代戦闘機は、サイバー攻撃「被害」を防止する「デジタル版白血球」のような機能を備えるべき
●速度と航続距離のトレードオフ
歴史的に戦闘機開発は速度や機動性を重視してきたが、将来戦闘機は速度を犠牲にして航続性能を求めるのでは。将来は戦闘機運用の根拠基地確保がより困難になることから、優れた航続性能が極めて重要
●大量の熱処理が大きな課題
レーザー兵器などエネルギー兵器を搭載する第6世代戦闘機にとって、熱処理が大きな課題の一つ。特に高出力レーザー兵器を搭載する際に、この問題が大きなものとなる
●有人機か無人機か
有人機と無人機の混合編隊、無人機の遠隔操作などなど、様々な考え方がある。人間が判断すべき事は何かを見極めつつ、人工知能等を活用してリアルタイムでロボットが判断できるようソフト開発を進行中
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米空軍幹部は今月、第6世代機構想を含む将来制空に関する1年間の検討「Air Dominance 2030」の区切り議論を行う模様です。
昨年後半には、米海軍とも意見交換を開始して共通の機体を追求する姿勢(議会等に対するポーズか?)を見せていましたが、最近になって海空軍両サイドから、双方の要求性能が大きく異なることから共有化は難しいとの予想通りの発言がメディアで紹介され始めています
今しばらくは、第6世代機がどうなるかよりも、本議論と通じて浮かび上がる関連技術動向や脅威認識、企業や関係者の思惑を「生暖かく」眺める気分でいた方が良いかも知れません
現実的には、ロッキードWeiss氏の主張に近い、F-35を計画数より削減しつつ購入し、F-22とともに最新技術を効率よく取り込む継続的なアップグレード(レーザー兵器を含む)で技術的優位を確保・・・が唯一の道のような気がしますが
次期(第6世代)戦闘機を考える記事
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「kill chain全体で考えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-27
「Air Dominance 2030検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-09
「海空共同で次期戦闘機検討へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-30
「将来制空機は大型機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「女性将軍が次世代制空を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-23
「海長官:F-35は最後の有人戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-17
「空軍参謀総長当面有人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-23