14日、人権主義者で有名なSusan Rice安全保障担当大統領補佐官が米空軍士官学校で講演し、1時間あまりの講演のほとんどを対ISIL作戦を語ることに費やしました。
更にその中で、共和党の指名争いで勢いを増すトランプ氏の発言を揶揄しつつ、オバマ政権の取り組みをアピールする「政治臭い」プレゼンだったようです
国防長官や米軍幹部が士官候補生に語る際は、大きな視点で戦略環境に触れ、多様な脅威に備える幅広い人格や能力の陶冶を求めるのですが、ライス補佐官は聴衆を意識することなく、「政治的アピールの場」として活用しています
木曜日の夜に集められ、士官候補生への愛情が感じられない人物から話を聞かされた米空軍士官候補生は、きっと現政権を嫌いになるのでしょう
18日付米空軍協会web記事によれば
●ライス補佐官は、国家安全保障の仕事は永遠に続くものであり、皆さんの技能や指導力は今後も引っ張りだこだろうと士官候補生に語りかけた
●そして、テロ組織が不正規戦を進めるようすを「ハイブリッド」と呼び、このテロ組織との戦いは全ての国家機関が一丸となって取り組みべきもので、米国のテロ対処が新たな革新を迎えていることを示していると語った
●対ISIL戦略の4つの側面として、「シリアやイラク内でISILの中心を叩く」、「テロ組織の枝組織を目標にする」、「世界的ネットワークを破砕する」、「米国を守る」の4つを上げた
●米国には更なるISR要求が有り、より多くの無人機操縦者がISR任務に従事する必要があると訴え、
●皆が無人機操縦者を希望しているわけではないことを承知しているが、無人機操縦者は日々戦っており、B-1やF-15のような攻撃機よりも多くの対ISIL攻撃を行っていると士官候補生に語った
14日付Gazetteサイト記事によれば
●オバマ大統領から「恐れ知らずのタフな人物」と表される51歳のライス補佐官は、毎日毎日、攻撃の毎に、1マイルづつ、対ISIL作戦は実質的な進展を見せていると語った
●彼女は、トランプ候補のシリア難民への姿勢や対ISでの拷問の使用を求める姿を厳しく批判し、ISILの残忍さを前にしても、米国は強靱に自由と開放性と多様性を許容し続けなければならないと訴えた
●無人機と外交により、地上に派遣する米兵をより少なくする事に成功していると述べ、大規模な地上部隊を派遣することのない戦いを学んだと表現した
●更に、イスラム社会を異端扱いすれば、この戦いに勝利することは出来ないとも述べた
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無人機をもっと活用しろ・・・と国防長官や空軍幹部や地域戦闘コマンド司令官に「事細かに」指示する様子が目に浮かぶようです。
無人機操縦者の退職率が高止まりし、無人機操縦者不足が大きな問題となっていると聞き、「私が士官候補生に重要性を教えてあげるわ」と題材に取り上げたのかも・・・
頭から「ライス補佐官嫌い」むき出しのご紹介になりましたが、ライス補佐官の対中国認識がどうなのかを聞いてみたかったです・・・
14日付ワシントンポスト紙に、ゲーツ元国防長官がオバマ政権の対外政策を評価するインタビュー記事が掲載され、「(ライス補佐官を初めとする)とても大きなNSCスタッフによるmicromanagement(事細かな現場介入)のために、オバマ大統領のISILへの軍事力使用や、南シナ海での中国の封じ込めを損なっている」と厳しく評価しています
そして「対処があまりにも小出しで、政策メッセージが失われている」、「オバマ政権が何事にも躊躇しているように見せてしまっている」ともNSCを描写しています。
ライス補佐官の講演原稿
→https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2016/04/14/remarks-national-security-advisor-susan-e-rice-us-air-force-academy
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