20日、米空軍の人事担当幹部が語ったところによれば、米空軍の戦闘機パイロット職配置が3500ポスト有るにもかかわらず、今年9月末には約700ポストが空席となる模様です
民間航空業界でのパイロット需要が「高止まり」しているためで、昨年度末に511ポストだった空席ポストが、約200増加したことになり、この傾向に歯止めがかかる可能性は全く見えていません
同じく人事関連の話題で、米海軍はサイバー関連の人材を民間から獲得するため、専門能力によっては直接「大佐」や「上等兵曹:E-7」で採用できるよう法改正を進めているようです
空軍戦闘機操縦者不足
●20日、米空軍の搭乗員人事管理課長のFarley Abdeen大佐は米空軍協会機関誌に対し、戦闘機操縦者の退職率が増加し、危機的な状況にあると語った
●同大佐によれば、現在3500ポスト有る戦闘機操縦職のうち、511が空席で、この数は今年度末の9月末には約700に増加する。これは全体の2割に相当する数である
●米空軍は、戦闘機操縦者養成数を増やしたり、「non-flying jobs」に従事している戦闘機操縦者を削減したりすることにより減少の流れをくい止めようとしているが、即効性のある解決策は見あたらない
●一方で、民間航空会社は昨年約3500名の操縦者を採用したが、その採用数は今後約10年間は高水準で維持するものと見積もられている
●3月に議会で証言した米空軍参謀総長は、これまで10年間の義務勤務期間を終えても継続勤務する空軍パイロットが約65%いたが、昨年度は全機種の操縦者合計で55%に低下し、戦闘機パイロットは47%だった。
●そしてこの数字は、今年度末時点では全機種統計で49%に低下すると予測されている
米海軍:民間サイバー人材を大佐で採用へ
●19日、「Sea-Air-Space」会議のパネル討論会に登壇した米海軍のサイバーや人事管理担当幹部は、サイバー関連の人材を民間から獲得するため、専門能力によっては直接「大佐」や「上等兵曹:E-7」で採用できるよう法改正を進めていると語った
●現在は、それぞれ1階級下の「中佐」や「1等兵曹:E-6」までの採用権限が議会から承認されているが、これを改正して好待遇での採用を可能にする動きである
●米海軍サイバー軍司令官のJan Tighe中将は、「サイバー作戦を実施する際、海軍内での階級はその人物の専門能力や戦闘能力を示すモノになっていない」、「どう解決するか? 報酬か昇任か報償か、または適切な階級に配置することだ」と語った
●同司令官は、メイバス海軍長官や米海軍人事管理部長のBill Moran中将が、採用階級に関する米海軍権限の拡大を含む大規模な人材確保施策に取り組んでおり、専門性の高い高技能者を相応の処遇で受ける方策を追求していると説明した
●パネル討議に参加していたMoran中将は、下士官の間には、専門家であっても、初級水兵の経験無しにいきなり「上等兵曹」に付けることに懐疑的な意見があり、きちんと説明して理解を得る必要があると語った
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米空軍に限らず、少子化や価値観の多様化が進む先進国空軍は、多かれ少なかれ操縦者不足に直面するのでしょう。
この問題には幾つかの「要つっこみ点」があります
・操縦者確保のため、空軍全体の人材採用が操縦者身体特性保有者に偏り、総合的なレベルの低下や人材の偏りを生じないか?
・空軍の意志決定を握る操縦者が、脅威の変化や戦略環境の変化に目を向けず、戦闘機等の航空機装備数の維持に固執するからパイロットが不足するのでは?
・操縦者は士官で無ければならないのか?
・無人機の導入に消極的すぎ、操縦者数を無理に維持しなければならない状態にしているのではないか?
サイバー専門家の採用については、米軍の他軍種でも同様の動きがあるようです
Welsh空軍参謀総長の議会証言
「米空軍パイロットの民間流出問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-04
無人機操縦者も離職止まらず
「下士官を無人機操縦者に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11
「空軍長官が現状を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-17
「無人機操縦者の離職止まず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-31