15日付Defense-Newsは、デンマーク(F-35共同開発国)の与党政府が、30機のF-16の後継機として27機のF-35を議会に提案した件を報じ、少数与党の多大な支出を伴う提案に対し、野党からの反発が予想されると解説しています
野党の反発の背景には、他の軍種予算を圧迫する大支出の他、F-16退役時期との約3年のギャップ、国内軍需産業への分け前不明確などがあるようです。
欧州諸国は、国防費をGDP2%レベルにしろ圧力をNATO(つまり米国)から受けており、デンマーク政府も「性能などからF-35が最適」と言いつつも、「大人の事情」も垣間見えます
なお、FA-18製造のボーイングは、選定根拠になっている諸データが間違っていると猛烈抗議!!!
15日付Defense-News記事によれば
●デンマーク政府は、戦闘機調達計画(FPP)にF-35、F-18、ユーロファイターの中からF-35を選定し、議会に提案した。しかしこの選定については、激しい政治的な議論が予期されている
●維持経費等を含めた30年間の経費見積もりが約9000億円となる提案で、維持費等を除いた1機の購入価格は約120億円と見積もられている
●議会で少数与党である自由党のRasmussen首相や国防省は、議会の理解を得て2018年には購入計画を固め、2020年から27年にかけF-35を受領したいと考えている
●同国空軍の30機のF-16は、老朽化のため2020年から約3年間で全て退役する予定で、F-35導入完了までには約3年間のギャップが生じる
●野党である社会国民党の報道官は、与党による厳しい財政計画にF-35導入を当てはめると、空軍だけが極めて強力に予算的恩恵を受け、陸軍が近代兵器を保有できなくなると反対姿勢を示している
●そして「NATOに対する真剣なコミットメントを示すため、同盟が求めるGDP2%の国防費を確保すべき」と国防予算増額を求めた
●また社会国民党は、F-35に投入される予算を補填するため、国防予算全体を大幅に増額するよう政府に圧力をかけると同時に、F-35調達機数を18機から24機程度に抑えるよう要求する方針である
●これに対し首相は、国防組織の効率化を進めると共に、2026年までの国防予算枠組みの中で削減できる部分を懸命に見つけると語っている
国内軍需産業への恩恵は不透明
●デンマーク国防省は、3つの候補機種(F-35、F-18、ユーロファイター)を「戦略」「軍事」「経済性」「軍需産業」の視点で評価し、F-35が最高点を獲得した。
●この評価では、「軍需産業」面でロッキード社と30以上の共同事業が成立することを前提としているが、首相も「多くの不確実が存在しており、軍需産業界のデンマーク経済への影響は変化しうる」と認めている
●首相は更に、デンマーク産業へのスピンオフについては、デンマーク企業がロッキード社から優れた価値を提供できると見なされるかどうかにかかっている、と表現している
ボーイングがデンマークの選定に猛烈抗議
●19日、ボーイング社はデンマーク議会で、デンマーク政府が次期戦闘機選定でF-35を選択した根拠が、ライバルであったFA-18な不利なデータが選定に使用されていたと訴えた
●デンマーク政府の選定では、FA-18の寿命が飛行時間6000時間と見積もられ、F-35が8000時間とされているが、FA-18は9500時間運用可能であると主張した
●またボーイングは副座価格と単座価格を併記して選定に臨んだが、FA-18の単座価格は選定に使用されず、単座戦闘機のF-35と公平な比較がされておらず、不公平だと訴えた
●米国の著名航空専門家は、デンマークの選定は政治的意図が働いたとものと述べ、「ロシアの現状を踏まえての、デンマークの今現在の選択だと様々な背景が示している」と語った。
●同専門家は、デンマークの使用したFA-18の価格は疑念に満ちていると語った
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「軍需産業面」で「捕らぬ狸の皮算用」にならないことを祈ります。
また、予算確保面での精神論・根性論、つまり「国防組織の効率化を進めると共に、2026年までの国防予算枠組みの中で削減できる部分を懸命に見つける」と言った状態で決断していいものかどうか、大いに疑問です
日本のような国を大いに参考に、反面教師にして頂きたいものです
デンマークとF-35
「未だ未定:デンマークの苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-07
「事例デンマークの悩み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-07
カナダもふらふら
「F-35を再検討か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24
「カナダにF-35反対首相」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22