17日、米空軍は4月30日に発表していた今後20年間の小型無人機(SUAV)計画「20-year flight plan for small, unmanned aerial systems」の説明会をペンタゴンで開催し、まだまだ発展途上の分野と語りつつ、今後可能性ある分野の「ビジョン」を説明しました
従来この様な長期計画発表の際は、何年までにこれを実現してこの機首の後継機にする構想だとか、具体的な装備品のイメージ図が公開されたりとかでしたが、今回はちょっと趣が異なる雰囲気な気がします
企業に空軍の要求を理解して欲しい、迅速な部隊配備のため企業と空軍との協力体制作りの参考にして欲しい・・・との思いが詰まった発表会だったような印象を受けました
更に小型無人機や小型無人機の群れを、相手にコストを課す装備と位置付け、中国やロシアに対する「口先介入による抑止効果」を狙った側面も感じました
17日付Defense-News記事によれば
●敵の防空能力の著しい進歩を受け、米空軍は小型無人機やその群れを敵防空網攻略の戦略に組み込もうとしている。米空軍の無人機戦力課長であるBrandon Baker大佐は、以下の3つを重要能力と説明した
—チーム形成:地上操作員の指示で、2機以上の無人機が相互に協力する
—ウイングマン構想:有人機の編隊長が複数の小型無人機を率いて戦う
—群れ構想:多数の小型無人機がネットワークを構成し共同行動で任務に当たる
●同大佐は、小型無人機は戦いを大きく変える可能性を秘めてると語り、無人機の群れを単一目標に指向も出来るし、分散して常続的偵察にも活用できると説明した
●また「敵にコストを課す」効果、つまり高価な戦闘機や爆撃機を敵に攻撃させる代わりに、多数の安価な小型無人機を相手に対処させることで、敵の負担を増す効果もあり、経費負担面で我に有利に働くとも指摘した
●更に小型機の群れは、群れの中の小型無人機が撃墜されても、残った群れが「self-healing:自己回復」しながら最後まで群れを保って任務遂行に当たることが出来るとも説明した
●会見会場には、「Raytheonのtiny Coyote」、「BoeingのRQ-21 Blackjack」、「RaytheonのSilver Fox」が展示されていた
●ただし同大佐は、本計画も含めた小型無人機への取り組みは具体的要求以前の段階にあり、現在米空軍はシミュレーション等でその効果や必要性能を分析することに集中していると語り、具体的計画のスケジュールを示す段階にはないと説明した
●また会見を仕切った米空軍情報ISR部長Robert Otto中将は、この種の技術はまた初期段階にあり、17日発表の計画は将来の戦いの「vision」であることを強調しつつも、「今後20年を見通すとき、小型無人機は米空軍ISRのcornerstoneとなると信じている」と表現した
17日付米空軍web記事は
●ISR部長Otto中将は、同計画は「今後20年を見据えた小型無人機のvisionと戦略を示したものである」、「将来の強固に防御された敵領域の環境に、小型無人機を導入することでより機敏な戦力構成が可能になる」と語った
●またBaker大佐は、「新たなセンサーや装備が導入されることでISR装備の高価格化が進む中、無人機ISRは空軍ISRの基礎を支えるようになってきた」、「小型無人機はより低いコストで能力と量を提供してくれる手段である」と付け加えた
●小型無人機コンセプトは、米国防省や米空軍が取り組んでいる「Better Buying initiatives」の考え方にも沿ったものである
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冒頭で述べたように、大まかな「vision」や「戦略」の時点で公開したのは、企業の呼び寄せ、技術協力のお願い、コスト削減取り組みのアピール、コスト負荷戦略のアピール、中露抑止効果への期待などなどが背景にあるのかも知れません。
米海軍も艦艇防御のため小型無人機の「swarm」活用を研究しているようですし、「cost imposing」との言葉と併せ、耳にする回数は今後も増えるのでしょう
会見写真から見ると、あまり盛り上がっているようには見えませんが・・・。
艦艇の攻撃&防御も「無人機の群れ:Swarm」で
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10