6月24日、Welsh空軍参謀総長の送別式典が行われ、カーター長官やダンフォード統合参謀本部議長も出席してその功績をたたえました。
これをもって実質職務から離れることになりましたが・・・
Welsh参謀総長の送別ビデオ映像
直前のインタビューより・・・
22日、米空軍参謀総長Welsh大将が退役に当たって米空軍協会機関誌のインタビューを受け、長期におよぶ連続した実戦任務と海外派遣の負担は良く話題になる一方、海外派遣に人員を差し出した母基地への影響は話題にならないが、母基地は少ない人員で恒常業務を強いられるストレスの大きい状況にあると訴えました
また、海外派遣先や人員が不十分な母基地では多様な状況を想定した訓練や人員養成が不十分で、これが米空軍の即応態勢に関わる大きな長期的問題となっていると語りました
米空軍が抱える様々な問題がある中で、最後にこのトピックを取り上げたのは、現場の様々な事象の報告を受ける米空軍トップにとって、これが「本音の最大懸念事項」だったからかも
22日付米空軍協会web記事からWelsh大将発言
●米空軍兵士は海外派遣によって動機付けられ士気が上がる。なぜなら、現地でニーズを感じ、彼らの成果を目の当たりに出来るからだ。
●一方、母基地に残された兵士達には、少ない人員でも、母基地での仕事量が減るわけではなく、一人当たりの負担が増えた状態での厳しい勤務を強いられる
●前線から帰還した兵士にも母基地での仕事が待っている。前線派遣先で家族から離れて厳しい勤務を強いられた兵士には、その時間を補う「downtime:休息時間」が必要だが、母基地にはその余裕がない
●理想の世界なら、部隊を派遣する基地は閉鎖し、派遣部隊の全兵士が派遣先に赴けば良いが、現実はそうはいかない。
●米空軍は、職域によっては(湾岸戦争以降)過去25年間ずっとそんなことを続けている。母基地に十分な人員が確保できない状況では、十分な訓練や作戦運用は出来ないので、トレーニングレベルは低下する。
●この状況は、長期的な目で見て即応態勢に負の影響を与えている。良好な即応体制を維持するだけの、十分な訓練が確保できないのだ。これらは米空軍の人員削減と任務量の増大ともリンクしている。世代を超えて影響を与える長期的な課題で有り、継続的に回復を図る必要がある
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派遣先の前線部隊でも、実戦とは言いつつ、対テロ作戦を延々と継続していることから、対中国を想定したハイエンド紛争能力の向上につながる部分は少ないと思われます。
電子戦もサイバー戦や宇宙戦も意識することなく、作戦基盤基地が空襲を受けたり、機能喪失することを考える必要が無いことから、どんどん「ハイエンド紛争勘」は鈍っていきます。
少なくとも過去15年間、米軍はそのような状態に置かれて居ます
空軍士官学校の学生に丸1時間、対ISIL論をぶち、無人機と外交で戦いを制していると主張したライス大統領補佐官ほどではないにしろ、ホワイトハウスや米国防省の高官からは、「対ISILの事で頭が一杯だ」オーラが放出されていますし、言葉の端々からもそんなことを感じます。
対中国に「世代を超えた対処」では遅いと思うのですが、これが現実なのでしょう。
Welsh大将の本音でしょう・・・
「ライス補佐官:空軍士官学校で対ISを強調」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-19
「対中国に迫力のないシャングリラでの米国」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
将来の空を制するために
「Air Superiority 2030計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「米空軍:小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18
「米海軍の無人機の群れで」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「ロッキードは消極的」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17
「kill chain全体で考えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-27