9月21日、米空軍協会総会の最終日に登場した米軍人トップのダンフォード統合参謀本部議長は、外国軍を訓練して能力向上させる任務の重要性について、米空軍内の意識が低く、軽んじられていると厳しく指摘しました。
米空軍の主要幹部がほぼ全て勢揃いの会場で、アフガンで訓練に従事する自身の「甥」まで証拠として引用し、「この任務の重要性を判っているのか? 君たちはこの任務の魅力化に何かやっているのか?」とストレートな詰問口調です
厳しいなぁ・・・は大変だなぁ・・と率直に思いますが、数年前から我が国自衛隊にも降って湧いたように「能力構築支援:Capacity Building support」なる任務が急増し、アフリカから中東、東南アジアからモンゴルまで、自衛官等が飛び回っている現状です
ダンフォード議長は厳しい口調で・・
●パイロット不足、連日行われている対ISIL攻撃、厳しい予算の中での取捨選択など、米空軍は全力で任務に取り組んでいる。そして国防省では、その負担軽減のため、数年に亘り負担を同盟国等に担ってもらえる様に取り組んできた
●同盟国や友好国の空軍を訓練することに、特段の重要性があると考えよニーズがあると考え、その任務に従事する空軍兵士の動機付けも含め、空軍としてしっかりと取り組め
●同盟国等を訓練することは中核任務である。決しておざなりな姿勢で臨む第2優先の任務ではない。
●我々が世界中で全ての軍事任務を担うことは出来ない。従って米軍は戦略として、過激派が戦力を拡大しないよう、限定的な予算を用い、アフガニスタンやイラクやシリアのような国で有効な軍を育成すること当たっているのだ。
自分の甥や現場の教官達の声を引用し・・・
●最近、アフガン空軍操縦者の訓練を行っている米空軍部隊をアフガンで訪問し、米空軍と共に赴任して教官を務めている私の甥やその同僚達3~4名に話を聞いた。
●君にとっていい仕事かと聞くと、彼らは皆うつむき加減で、はっきりと答えたくない様子だった。また、皆がやりたがる競争率の高い仕事か、君のキャリアアップのために望ましい仕事かと尋ねたら、彼らは否定的に答えた
●この会場の全員が、何が重要か、どのように兵士を動機付けするかを考えて欲しい。仮に若い大尉が、アフガン空軍の訓練を魅力的でなく、空軍内部でも価値の無いものと見なされていると感じたら、必要な人材を任務に付けられない。
●そして適切な人材を訓練に派遣できなければ、アフガン空軍を望む方向に育てられないのだ。
なお、8月にアフガン空軍は、27機のMD-530ヘリを全て受領した。また8機のA-29軽攻撃機を受領し、今後更に12機を2018年末までに受け取る予定である。
アフガン空軍操縦者の訓練は、米国ジョージア州の米空軍基地でも行われている
////////////////////////////////////////////////////////
この内容と全く同じ事を、2009年にゲーツ国防長官(当時)が論文「A Balanced Strategy」で訴えています。
つまり米空軍内では当時と何ら変化無く、引き続き能力構築支援にほとんど力が入っていません。
ロバート・ゲーツ語録36
(http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19)
→海外の軍に助言して訓練し、装備品を提供するような重要な任務が、米軍内の優秀と目される幹部にとって、キャリア管理上魅力無いものと見なされているのではないか
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
米陸軍や海兵隊でも、似たような状況ではないでしょうか? 逃げられ方が猛烈なので、地上部隊の方が士気低下度は低いかも知れません。
一方で、それなりの人材を送り込める可能性は地上軍の方が高いかも知れませんが・・・
それにしても・・・判っていながらこの発言。ダンフォード議長の割り切りと、仕事に徹する姿勢がすごいです・・
/////////////////////////////////////////////////////////
ISILの米軍への化学兵器砲弾使用を否定
●22日に米軍人トップのダンフォード議長が上院軍事委員会で、9月20日にISILが米軍部隊に対しマスタードガス砲弾を使用したと証言した件に関し、28日国防省報道官は、一連の検査の結果、マスタードガスは検知されなかったと述べた
●また同報道官は、20日の事象以降も、ISILが化学兵器を米軍に対し使用したとは確認されていないと語った
●一方で報道官は、「ISILが多様な機会に、イラクとシリアの両方で、化学兵器を使用した事を把握しており、今後の戦いの推移に応じ、米軍がその脅威に直面する可能性がある」と表現した
ダンフォード議長関連の記事
「ISが化学兵器で米軍を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-23
「統合参謀本部のスリム化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16
「初海外はイスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20
「経歴や人柄紹介」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-02
「上院軍事委員会での証言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-10