痛快:策士カナダがF-35選定を5年延期:実質撤退!?

Trudeau2.jpg22日、カナダ政府が声明を発表し、旧式CF-18(FA-18のカナダ版)の老朽化に伴う「能力ギャップ」を暫定的に「穴埋め」するため、最新FA-18を18機購入する方向で交渉を直ちに進めると明らかにしました
そして、トルドー新首相が昨年10月に就任後、前政権が決定していた61機のF-35購入を白紙検討すると宣言していた件については、「現在実施中の国防見直しの結果を踏まえ、2017年から機種選定を5年間掛けて最初からやり直す」と発表しました
カナダはF-35の共同開発国であり、つまり同機の製造を分担する実質上の権利を有しており、カナダ企業110社が関与する約800億円の契約が絡んでいますが、購入決定を先延ばしすることで利権を当面守りつつ、トルドー新首相が「前政権が残したデタラメ」と表現するF-35購入決定を実質自分が判断しない策に出たわけです
FA-18.jpgまた、現時点でF-35購入中止を決定すると法的措置にロッキード等が出る可能性があり、その回避のための措置とも見られ、更に考えれば、米軍がF-35調達機数を将来削減するのは火を見るより明らかであり、それに伴う価格高騰を理由に「撤退」の道を残したわけです。イケメンだけじゃない策士です・・・トルドー首相は・・・
22日付Defense-News記事によれば
●カナダ政府は発表で「30年以上使用し続けているCF-18の恒久的な後継機が到着するまで、18機の最新FA-18を購入する方向で直ちに調達に動く」と述べ、「CF-18が寿命により138機から77機に減少する中、能力ギャップを暫定的にFA-18で穴埋めする必要性に迫られている」と説明している
Sajjan Canada.jpgカナダのHarjit Sajjan国防相はあわせて、現在実施中の国防見直し(defense policy review)の結果を踏まえ、より大きな恒久的な後継機検討を来年開始すると明らかにしつつ、同選定作業には慎重な分析が必要なことから約5年が必要だと述べ、機種決定を実質次期政権に先送りすることを示唆した
カナダのJudy Foote公共調達相は、FA-18を暫定購入することで将来機種選定でもボーイング社製が有利になるのではとの質問に対し、関係ないと言い切り、カナダは引き続きF-35共同開発パート国で有り続けると語った
Foote大臣は直ちにボーイング社と具体的交渉に入り、早期に「能力ギャップ」を「穴埋め」したいと述べ、カナダ国防省はFA-18の価格や納期についてある程度の情報を有していると語った
Trudeau.jpg●FA-18製造のボーイング社は「決定を光栄だ」と発表し、「ボーイング社は関連過去5年間だけでカナダ関連産業に約6千億円を投資しており、この体制でカナダ政府の要望に完全に応えたい」と自信を示した
●一方でF-35製造のロッキード社は、「決定に落胆したが、F-35は引き続きカナダにとって最適な選択だと考えているし、今後40年間のニーズに対応する能力を発揮する準備が出来ている」とコメントしている。
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トルドー首相は、「前政権は過去10年間、カナダとカナダ軍に必要とされる装備を提供する機会を逃し続けてきた」、「能力発揮にはほど遠いある航空機(F-35)に固執してきた」と議会で述べ、F-35購入計画を厳しく非難してきた人物です。
GMD2.jpg一方で、2005年に一旦はミサイル防衛に関する米国からの協力依頼を断ったカナダが、最近の軍事的脅威の動向を踏まえ、米国が進める地上配備ミサイル防衛システムGMDに協力する方向で検討を進めているとの報道もあり、「是々非々」であるべき姿を追求する姿勢に、同首相への評価が高まっているところです
中東での作戦で貢献度が高く、北極圏への対応など要協力分野もあり、トランプ新大統領との関係が気になるところですが、「トランプが当選したらカナダに移住する」と豪語していた米国人が多数いたことから、そんなよしみで仲良くやっていただきたいです!
カナダとF-35とBMD
「FA-18購入でF-35議論回避か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09
「新政権もF-35になびく?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24
「カナダにF-35反対首相」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
「米とのBMD協力を再考」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-02

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