ロッキード「技術的ブレークスルーがあった」
9日付Defense-Techは、これまで紆余曲折を続けてきた大気圏内を音速の5倍以上で飛翔する超超音速兵器に最近(技術的)「breakthrough」があり、米空軍とDARPAが組んで、レイセオンとロッキードのチームと具体的試作契約を結んだと報じています
この超超音速兵器(hypersonic weapons)は、ワシントンDCとアトランタ間を約7分で飛翔するほどのスピードで、相手に対処のいとまを与えず迅速に処置する必要のある目標への攻撃を想定された兵器で、例えば発射準備中の車両搭載型の弾道・巡航ミサイルや、最前線からの情報で明らかになった敵の指揮統制司令部や特設の作戦基盤基地の無効化に使用されるのでは・・・と考えられています
その有効性から、10年以上前から大気圏内を超超音速で飛翔する技術に米国は取り組んでいましたが、2013年の米空軍による「X-51 WaveRider」の4回目の試験(B-52から発射され、6万フィートを5.1マックで3分半飛翔。ボーイング担当)以降、予算や技術的難しさから開発が頓挫してきました
しかし中国やロシアがこの兵器に積極的に取り組む様子が明らかになる中、Work国防副長官らが「第3の相殺戦略」の重要パーツとして復活に動き、技術的な進展もアリ具体的な動きが出てきた模様です
計画の全体像や時程が不明ですが、とりあえずご紹介
9日付Defense-Tech記事によれば
●米空軍は、国防省の研究機関であるDARPAとチームを組み、超超音速滑空兵器コンセプト(HAWC:Hypersonic Air-breathing Weapon Concept)の一環として、関連技術開発に投資することにした。
●DARPAは最近、世界最大のミサイル製造企業であるレイセオン社と、世界最大の軍需産業であるロッキード社と契約を結び、1発約180億円で空中発射の超超音速兵器開発を支援することとなった
●DARPAの関連webサイトは、「本契約による技術デモにより、対処に時間的余裕のない、又は強固に防御された目標を、遠方から素早く攻撃する新しい手段獲得の道を開く事を追求する」と目的を説明している
●なおロッキード社は今年初めに、超超音速技術に「breakthrough」があり、米軍には超超音速偵察機に活用可能性を提案していると明らかにしていたところ
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この兵器は、「エアシーバトル」と共に注目された兵器です。
エアシーバトル自体は、その名称から予算確保に危機を感じた陸軍及び海兵隊からの横やりで名称が抹殺されてJ-7に埋葬され、中国本土への攻撃は危険だと主張する元海兵隊員ハメスらの「オフショア・コントロール論」の台頭騒ぎを招きました。
しかしゲリラ戦術で「エアシーバトル」の本質追究を続けたWork国防副長官らの努力により、より大きな「第3の相殺戦略」として中国の軍事脅威に対処する兵器の追求が復活し、この超超音速兵器も日の目を再び見ることになりました
陸軍や海兵隊との予算争いは続くモノの、新たに「Crossドメイン」や「Maltiドメイン」とのコンセプトを打ち出すことで、残存性の高い軍種の特性を生かした統合作戦の方向性も煮詰まりつつアリ、トランプ政権にも何とか上手く引き継がれる事を願うばかりです
超超音速兵器の関連
「超超音速兵器の脅威が大きな話題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-19
「あのLM社も積極投資」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11
Cross-domain能力を追求
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「副長官が米空軍の尻を叩く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
エアシーバトルの悲しい運命
「米国防省エアシーバトル検討室廃止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-22
「CSBA講演:ASBは潰された」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-27
「対比:ASB対オフショアコントロール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-24
「ASB批判に5つの反論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-17
追伸・・・最近、元陸将の「用田」とか「渡辺」とかが、大昔の2015年春にCSBAを訪問した際に受けたブリーフィングを大宣伝する論考を出したりしていますが、第一列島線防衛に地上部隊を活用するオフショアコントロール論的な思想に「お上りさんハイ状態」で大感激して大宣伝している様子が滑稽です。
エアシーバトルを練り上げた前CSBA理事長クレピネビックが4軍のパイ争いとCSBA運営に疲弊して去り、シンクタンクとして生き残るために商売しているCSBAに抱きついて包容するなんて・・・
名前が抹殺されようとエアシーバトルの本質をゲリラ戦術で追求し続け、核戦力抑止と通常戦力抑止が両輪であることを大前提として再確認しつつ、次期爆撃機B-21や超超音速兵器や「第3の相殺戦略」を追求するWork副長官らの志も十分理解しないで、総花的な国防費数倍増を訴え、陸自の組織防衛を企てる元将軍の姿が悲しいです・・・