英国防相:米軍F-35の新型英空母への展開を発表

同盟の証と言うより、英軍困窮の証と見るべき
Fallon Carter.jpg15日、Michael Fallon英国防相はカーター国防長官とロンドンで会談後にそろって記者会見し、今後運用開始予定の英海軍の新空母「Queen Elizabeth」で、2021年から米海兵隊のF-35Bが飛行を開始すると発表しました。
先ほど日本も訪問したカーター国防長官は、最後の挨拶回りで世界各国を訪問していますが、英国防相が「返礼:return the favor」と呼ぶ最後の英軍へのお土産が、英空母への米軍F-35の展開となったようです
英国はF-35の共同開発国ですが、米国を除く8ヶ国のうちで唯一の「レベル1共同開発国」で、唯一システム設計や実証段階に人を関与させることが出来る共同開発国です。
そんな深い関係から、英海空軍のF-35部隊建設要員が、米空母で実施されたF-35Bの最終確認試験にも参加して、その能力確認を自ら行うほどの関与をしています
F-35B関連の米英の緊密な連携(豪を含む)は以下に
→http://www.navy.mil/submit/display.asp?story_id=97775
なぜ米軍F-35が英軍空母に展開するか?
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03
Queen Elizabeth.jpg●今日の本題は、なぜ英国防相が「返礼」と表現して感謝しているか、カーター長官がなぜ最後のお土産にF-35展開訓練を持ち出したかです。
それはなぜなら、英軍のF-35購入予算が不透明で、来年には航行&運用試験が始まる英海軍新空母に搭載するF-35Bが何機購入できるか「予断を許さない」状況にあるからです
●つまり英軍は、女王陛下の名を冠した新空母の艦載機を十分調達できない可能性が高いので、空母の訓練のため米軍F-35に展開して訓練して欲しいと平身低頭「お願い」していたのです。本件は9月の米英国防相会談でも取り上げられ、具体的な事は今後検討するようです。
●その根本には、英軍が購入すると当初明らかにした138機(F-35全タイプ合計で)のF-35調達機数を、多くの英軍関係者が実現不能だと考えており、艦載機が不足する悲しい新型空母になるような予感が漂う厳しい財政状況があります
F-35B.jpg●話題の空母「Queen Elizabeth」は2017年春に進水し、2018年夏から秋にF-35B搭載試験を米東海岸沖で3機の英軍F-35Bで開始し、2020年12月には初期運用態勢を宣言予定で、その後2021年には初の作戦展開を予期しているようです。
●新空母艦長が9月末に語った希望ベースでは、2019年から8ヶ月間を1展開単位として、米海兵隊F-35Bに来てもらいたいようです。
●新空母艦長は更に、米海兵隊のF-35Bを派遣してもらう事は、相互運用性の観点からも有意義であると言い訳がましく語り、ついでにV-22オスプレイにも大いに興味を持っており、英海軍空母での運用可能性を確認する意味でもお願いしたいと語っていたところです
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英国軍は先代のハリアー戦闘機を海軍と空軍の両方で運用し、維持整備や部品調達で効率性を高めていましたが、今回のF-35Bでもハリアー方式を採用して海空軍共用で運用準備を進めています。
この試みは大いに興味深く、「Crossドメイン思考」にも通ずる点で応援したくなりますが、「お先真っ暗感」は否めません
Fallon Carter2.jpgついでにそう言えば、1日に駐米英国大使が、2020年運用開始予定の新空母「クイーンエリザベス」が南シナ海に展開するだろうと発言していました。
もしかして、米海兵隊のF-35に展開をお願いした「お返し」として、南シナ海航行を米国から強要されたのでしょうか???
だとしたら、流石に「血の同盟」です。とってもまねしたくない同盟の深さですが・・・
もうひとつ、先日のトランプ氏のF-35予算削減ツイートを引用するまでもなく、世界中でF-35導入機数削減の兆候があり、その代表例が「誰も計画機数の購入が可能と考えていない」英国です
英国軍を考える記事
「英軍新空母を南シナ海に!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「新空母の艦載機が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03
「なぜ今、日英戦闘機訓練なの?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-18
「予算減で英軍の士気崩壊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-18
「英軍が戦闘機半減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-13-2
「大なた:英軍の大軍縮」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19-1

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