情勢更に不可解:露とトルコが対IS共同航空作戦!?

Syria Turkey.jpg18日付BBC等の報道によれば、トルコ国境近郊(約20km)のシリア都市「Al Bab」のISIL拠点に、史上初めてロシア軍とトルコ軍の攻撃機18機が共同作戦で空爆を行い、合計36目標に攻撃を加えた模様です
この付近は、昨年12月にトルコ地上軍が大きな損害を受け、米国の支援を受けてトルコ軍が反撃を試みていた場所であり、米国とロシアとトルコが対ISILとの一つの目標に向かって行動したと考えられれば良いのですが、誰もそう考えてはおらず、「情勢の複雑さが増した」状態です
最近トルコは、NATO加盟国でありながらロシアへの接近を強め、逆に米国には冷たい姿勢が増しており、米国との同盟の象徴で極めて重要なトルコ南部のインジュリック空軍基地の米空軍への嫌がらせ的な行為が増えている状況です
Syria Turkey2.jpg更に1月9日の週には、ロシアを牽制するため3000名の米陸軍部隊が、戦車や装甲車と共にポーランド駐留を開始したところであり、ウクライナ事案以降のNATOとロシア関係は冷え込んだままです。
一方で、16日にはカザフスタンのアスタナで、ロシアとトルコとイランが、シリア和平議論を行ったタイミングだけに、この共同作戦が注目を集めています
18日の攻撃対象や成果、このように大規模な空爆作戦になった理由、なぜロシアが、なぜトルコと・・・などなど、疑問の種は尽きませんが、取りあえず事象や関係者の発言をご紹介しておきます
18日にGoldfein米空軍参謀総長は
Goldfein1-4.jpg●(AEIでの講演で本件に触れ、)この両国の動きは事態を複雑にするものだが、具体的に懸念事項が生じているとは承知していな
●これまでもロシアの行動には「言行不一致」が見られ、ロシアはISILへの攻撃を行っていると主張しているが、実際にはアサド大統領のシリア政権支援を行っている
●この作戦が「共通の敵に向けたもの」であれば問題は生じないが、共通の目標から逸脱する行動はより複雑な問題を生み出す
米軍の航空作戦統制センターとロシア軍側との連絡電話ラインはこれまで良く機能しており、ロシア語を話せる米軍大佐が、ロシア軍機の空域使用に伴う危険回避や緊張緩和に貢献している
●同大将は「これまでの所、ロシア軍機の活動は米側有志連合の作戦に影響を与えていないが、世界中でシリア上空ほど複雑な場所はなく、ロシアが行動方針を変化させれば複雑さが増すことになる」と言及した
18日付BBC報道によれば
Su-24 Russia.jpg当該地域は過去5ヶ月に渡り、トルコ軍とISとクルド勢力が交戦を続けており、同じ週に米軍機もトルコ軍と協力しつつ空爆を加えていたエリアである。
●約1年前に当地域周辺で空中戦を行ったトルコとロシアが、そしてNATO加盟国トルコと非加盟国のロシアが、共同航空作戦を行うのは極めて異例である
●この作戦発表はロシア国防省が行い、トルコ軍関係者が「トルコと連携して行った」と認めたと報じられているが、どの程度共同作戦だったのか、相互に連携して調整した目標を攻撃したのか疑問の声もある
トルコ側の主な目的にはクルド勢力の北上牽制があるが、米側は対ISにクルドを支援しており、情勢を更に複雑にしている
F-16 turkey.jpg●ロシア報道官の中将は、空爆に参加したのはロシア軍(4機のSU-24、4機のSu-25、1機のSu-34)とトルコ空軍(各4機のF-16とF-4)だとリストを明らかにし、細部には言及せず36目標を攻撃したと発表した
●トルコ軍はこの共同作戦前、昨年12月にロシア軍機による最初の対IS空爆が当該地域に行われ、トルコに対する支援作戦だとの認識を明らかにしていた、
昨年12月にトルコ軍は同地域で、12名の死者と33名の負傷兵を1日で出す国境付近で最大の被害を受けており、クルド勢力への警戒を強めており、当地域の不安定さは今後も継続するだろう
トルコ軍は、本作戦によりクルド勢力の進出を抑え、IS駆逐に貢献できたと評価し、ロシア軍報道官は対IS共同作戦は極めて効果的だった」と述べている
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Syria russia.jpgロシアとトルコが共同空爆で、米国が対ISのため支援するクルド勢力を叩いた可能性も考えられますが、両軍それぞれが好き勝手な目標を攻撃しながら、米国への当てつけに「共同作戦」をアピールしたのかもしれません。あくまでも「ISIL攻撃の共同空爆作戦」だと言い張りながら・・・
20日にトランプ大統領が就任し、マティス国防長官も承認されました。
しかし依然として米国政府は政権移行中であり、この間隙を利用しようと考える勢力には格好のチャンスです。この共同作戦モドキの背景や狙いは不明確ですが、米国やNATOの対応が後手に回っているのは確かでしょう・・・
リビアのISIL拠点にB-2爆撃機を派遣した作戦はお見事でしたが、継続的になすべき事をなさなければ、あっという間につけ込まれると言うことです。中国や北朝鮮にも注意しないと・・・
米国とトルコ関係の関連
「トルコがF-35追加購入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01-1
「駐トルコに家族帯同禁止や特別手当」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17
「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「将軍の4割以上を排除」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-11
「トルコで反米活動激化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31

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