基地の整理統合BRACへの姿勢は4軍でまちまち

BRAC3.jpg8日、上院軍事委員会の即応態勢小委員会で4軍の副参謀総長や副司令官が証言し、強制削減や暫定予算状態の早期解消を訴えたほか、Jim Inhofe小委員長からの基地整理統合BRACに対する質問に対し、4軍それぞれのスタンスを回答しています
基地整理統合BRAC(base realignments and closures)はその名の通り、余分な基地の廃止や整理統合を検討する事を指しますが、BRAC(ブラック)との呼称が示す通り、議員にとっては選挙区内の雇用や税収に直結するセンシィティブな言葉であり、国防省側がBRAC検討を要望しても、議会がかたくなに拒否しているのがここ数年の構図です
今回4軍のサブトップの証言をご紹介するのは、各軍種によってBRACへの姿勢が全く異なる様子がよく分かる対照的な証言が行われているからです。
結論から言うと、BRAC意欲が強い順番に陸軍>空軍>海軍>海兵隊で、海軍と海兵隊は極めて消極的です。そして小委員長自体は経費がかかりすぎるとの理由で「皮肉たっぷりに」反対派です
9日付Military.com記事によれば
BRAC2.jpg●8日、4軍の副参謀総長や副司令官は、これまで継続的に繰り返し訴えている(made well-worn cases)、装備品の維持整備や近代化の足かせになっている強制削減や暫定予算状態の早期解消を口を揃えて訴えた
●そんな4軍サブトップからの証言の後、Inhofe即応態勢小委員会は、自らは強く反対の姿勢だと明示しつつ、4名の軍人に基地整理統合BRACに対する見解を求めた
●同小委員長は具体的に、「私は過去6回のBRACを見てきたが、例外なく、どのBRACも当初の3年間に多くの経費を必要としてきた」、「皆さんが訴えたように、無駄な税金の支出に耐えられない予算が貴重な歴史上のタイミングにあり、維持整備費や近代化問題を解決すべき時に、BRACをどう考えるか?」と問いただした
●なお昨年Work国防副長官はBRACに関し、レターを発刊し、国防省には余分な基地や施設が22%もあり、BRACを早期に検討して実行に移したいと要望している。
●しかし2017年度予算や関連の予算では、議会によってBRACを許可しない旨が明示されており、2018年度予算等にBRACを組み込む場合は、春の予算案提出時に要求する必要がある
BRAC.jpg●BRACに対し米陸軍のDaniel Allyn副参謀総長は、国防省の姿勢を支持し、早急にBRAC検討を開始すべきだと主張し、「3年前から継続して強制削減や暫定予算状態の早期解消を訴え、かつ内部では、必要な経費捻出を迫られているが、BRACは経費節減の有力な分野である」と語った
●そして過去のBRACの実績を強調し、「2005年のBRACにより、毎年約1100億円の経費節減が実現しており、1988年のBRACに至っては毎年約2200億円の削減で貢献している」と説明し、「全世界で154の施設を維持している我々は、使用の有無に拘わらず、1施設当たり約30億円以上の維持経費を必要としている」と現状を語った
Steve Wilson空軍副参謀総長は、陸軍ほど積極的な姿勢を示さず、オプションを検討する用意がある(open to exploring its options)と表現し、更に「米空軍基地施設には25%の余剰があり、より懸命な予算使用の機会がある」「(余剰施設や基地維持のための)スタッフに給与を支払う必要があり、倹約の対象として検討すべき」と回答した
米海軍のNo2であるBill Moran副作戦部長は、BRACに否定的な姿勢を示し、「米海軍に施設の過不足問題は無く良い状態だ」「沿岸の湾施設等を決して手放してはならないと若い頃から教えられている」と回答し、小委員会メンバーの笑いを誘った
●しかし同副作戦部長は、米海軍内で独自に「小さなBRAC」を検討する可能性を検討していると述べ、経費節減のため、既存基地内の不要施設やインフラの解体を検討していると説明し、「この手法の方が、更なるBRACより米海軍には有用だ」と回答した
●一方で海兵隊のGlenn Walters副司令官は、陸海空軍と比較して少数の基地しか保有しておらず、東海岸西海岸のバランスも良いことから、良い状態にあり過不足は無いと回答した
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BRAC4.jpg議員側は基地の整理統合に伴う約3年程度の初期費用を問題にし、国防省側は長期的な経費節減効果を訴えています。
政策シンクタンク(より中立的な立場だと思料)や国防問題の主要な研究者は、圧倒的に「長期的な経費節減効果」を支持し、短期的な初期費用を問題視する議員側を「選挙区への利益誘導」で「議員の自己保身」だと厳しく非難しています
各軍種の主張の細部背景や現状まで把握していませんが、米軍の福利厚生施設(軍人用スーパー)や退役軍人を含む医療保険制度への支出を含め、経費節減策として必ず論点になる分野ですので、下記の関連記事とあわせてご参照下さい
BRAC関連の記事
「国防省が議会に要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16-1
「研究者38名が連名で要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-25
「研究者25名が連名で要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-06
「4大研究機関が強制削減対処案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30

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