「リバランス」は終了へ:それで???

「Pivotやrebalanceとの言葉は前政権の用語」
「我々は恐らく、わが政権自身の方策を打ち出すだろう」
Thornton2.jpg13日、ティラーソン国務長官による初の日中韓訪問に先立ち、Susan Thornton担当臨時国務次官補が細部は煮詰まっていないが、アジア太平洋地位への政策のスローガンだった「リバランス」や「Pivot」との言葉は前政権の用語だと表現し、トランプ政権としての政策を打ち出す方向だと記者団に示唆しました
もちろん、トランプ政権もアジア太平洋地域には引き続きしっかり関与していくと強調しているようですが、中国や北朝鮮の動きなど情勢が緊迫する中、主要な政治任用ポストの任命が遅れている状況の中での発言だけに、肯定的には受け取れないとの専門家の意見も聞かれるようです
中身はあまりありませんが、数少ないトランプ政権アジア担当関係者の発言ですので、ご紹介しておきます
14日付Defense-News記事によれば
●米国務省の高官によれば、「Pivot to the Pacific」のかけ声で知られるオバマ政権時のアジア太平洋リバランスは、公式に死んだようである
ティラーソン国務長官によるアジア訪問に先立ち、記者団からのリバランス政策に関する質問に答えたSusan Thornton担当臨時次官補は13日、まだまとまってはいないが、新政権は新政権の新しい地域政策を打ち出すと語った
Thornton.jpg●同次官補は「Pivotやリバランスなどの言葉はあるが、これらは前政権のアジア政策を表現する言葉である。皆さんには恐らく、新政権自身の政策枠組みを示すことになるだろう。細部は煮詰まっていないし、どのような形か、新たな枠組みになるかどうかも決定はしていないが・・」と表現した
●しかし同女史は、新政権の当地域への関与の色が変わろうとも、アジア太平洋地域に引き続きコミットしていくことには変化は無いと強調した
●そして「米国は今後もアジアに積極的に関与するし、米国の繁栄と成長にとって、アジア経済は極めて重要だから、公正な貿易と自由貿易問題に取り組み、北朝鮮問題にも対応し、ルールに則った、建設的で平和的で安定した秩序をアジアに求めていく」と語った
●また「(リバランスに代わるような)ステッカーにして貼り付けるような言葉を用いるかどうかは時期尚早だ。政権はスタートしたばかりで、何か言うには早すぎる」と付け加えた
専門家のコメント等
Graham2.jpg●豪州のLowy研究所のEuan Graham国際安全保障部長は、「継続的な関与、自由貿易、ルールに基づく秩序等に言及した点は、同盟国等に歓迎されるだろう」、「しかし、国防省と国務省の政策担当次官が空席な状況など、米国には為すべき事が多く残されており、トランプ大統領や側近がどれだけアジアを米国の国益と関連して捉えているかに関し、懐疑的な見方は静まらないだろう」とコメントしている
●そして、TPPから離脱表明に代表される新政権の姿勢は、オバマ前大統領やカーター前国防長官がTPPを強く押していただけに、地域の同盟国等を疑心暗鬼にさせるに十分な状況にある
予算面でも懸念が見られる。昨年9月、カーター前長官は「リバランスの新たなフェーズ」と表現し、2つの鍵となる分野、沿岸警備隊予算増とASEAN諸国10ヶ国への海外軍事援助(FMF:Foreign Military Financing)増加を打ち出していたが、これが危ういと懸念されている
FMF.jpg●トランプ政権は国防費の増額や公共事業費の増額を打ち出しているが、この代償として、沿岸警備隊予算やFMF予算が削減の対象になるのではと言われている
沿岸警備隊予算については既に超党派の下院議員58名が連名で削減回避を求めたレターを発出したようで、FMFについても上院関係者が懸念の声を上げている
●Graham氏は、オバマ政権のあとの空白を埋める代替物を確保しない段階で、TPP破棄を宣言し、リバランスの看板を下げるような動きは、ネガティブで良い手法とは思えず、中国の思うままになるリスクをはらんでいると懸念している
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ティラーソン長官は、「リスニングモード」だとしても辛い立場だと思います。長官は15日に来日し、17日にはソウル、18日には北京を訪問するそうですが・・・
Tillerson.jpgマティス国防長官は早い段階だったので「とりあえず」感で乗り切りましたが、大暴れ北朝鮮の前で大混乱の韓国、経済の減速待ったなしの中国の変わらぬ南シナ海態度、ロシアに冷たくされて意気消沈の日本など、何を語って帰国するのでしょうか???
私なら、挨拶して、お茶を頂いて、夕食会はパスして、次の国へ移動したいところです・・・
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