日本導入グローバルホークの悲劇

Handa.jpg20日付現代ビジネス電子版に、東京新聞の半田滋氏が「アメリカのぼったくり兵器の押し売りに、ノーと言えない防衛省」とのタイトルで寄稿しています。
半田氏に反感を持つ防衛省職員や自衛隊員は多いでしょうし、この寄稿にも恣意的に誇張した推測や憶測や表現が入っているのでしょうが、米国製兵器の売り込みに関しては、以下の様なやるせない」ストーリーが過去から現在に至るまで存在していることも確かでしょう
特に、トランプ大統領が「America First」で自国産業や雇用を最優先し、東アジアや西太平洋地域の安全保障の優先順位が必ずしも高くない現実からすれば、この傾向が続くと考えるべきでしょう
また、日米関係全体で貿易問題を「ディール」した場合、国民に見えにくく(国民を騙しやすく)国内を押さえやすい(制服組を中心とした防衛省さえ押さえれば事足る)防衛装備品で米国に妥協する恐れ(可能性)は極めて高いと言わざるを得ません
そんな時期の日米関係ですので、紹介するのも気が引ける「やるせない」半田寄稿ですが、目を背けてばかりでは変化も起こせないので「つまみ食い紹介」致します
20日付現代ビジネス電子版半田寄稿の概要
RQ-4 1.jpg●情報機能強化の切り札?として、防衛省が調達を決めた無人機偵察機「グローバルホーク」。3機購入を決めているが、米政府は調達から廃棄までのライフサイクルコストについて、機種選定の際に示していた金額の2倍近い3000億円以上を吹っ掛けてきた
●「えっ、また言ってきたのか」・・・4月中旬、米国防省を通じ、グローバルホーク製造企業が機体価格を合計100億円値上げすると防衛省に通知してきた。慌てた防衛省は5月半ば、急きょ担当幹部を米国へ派遣、国防省や同社と協議を開始した。
機体価格は1機158億円で3機計474億円。これを合計600億円程度まで値上げするという。値上げは初めてではない。防衛省は2014年、無人偵察機の機種選定を行ったが、ライフサイクルコストは約1700億円だと説明していた米政府が、機種選定終了後に3269億円に上方修正した。
●「安値で釣り、高値で売る」という催眠商法のような米国流の武器商売だ。防衛省は機体価格だけでなく、地上装置や整備用器材などの導入に初期費用を約1000億円負担する。更に維持管理のための費用が毎年約100億円もかかる。
米国のいいなり:悲しきFMS購入
RQ-4 Misawa.jpg●この一方的な価格高騰などには、日本が米政府から直接購入するFMS(対外有償軍事援助)という米国独特の売買方式が関係している。購入する側に著しく不利な内容だが、高性能の武器が欲しい国は甘んじてFMSを受け入れ、米国は160カ国以上とFMS契約を結んでおり、日本も例外ではない。
●FMSは米国の武器輸出管理法に基づき、①契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、②代金は前払い、③米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という不公平な条件を受け入れる国にのみ武器を提供する。
●それでも日本防衛に不可欠なら、我慢も出来るだろう。しかし、日本に提供されるのは期待した最新型ではなく、古い「ブロック30」というタイプ。FMSのため米政府の判断に従うほかない
●グローバルホークは陸上偵察用に開発され、洋上偵察には不向きで、尖閣諸島を含む東シナ海の上空からの洋上偵察にはミスマッチだ。(まんぐーす注:米海軍はグローバルホークを改良し、低空洋上偵察飛行に適したMQ-4を開発)防衛省幹部は「高価格なのに性能はいまいち、といったところ」と不満を漏らす
誰が希望した装備なのか不明?
RQ-4 block 302.jpgさらに奇妙なのは、グローバルホークは陸海空いずれの自衛隊も導入を求めていない。制服組の陸海空の幕僚監部ではなく、背広組の内部部局にある防衛計画課に割り振られている。背広組が武器導入の受け皿になるのは極めて異例だ。
購入後の扱いも、省内で押しつけあった結果、「飛行機だから」との理由で機体は航空自衛隊が管理し、「情報収集だから」との理由で情報本部が収集したデータを扱うことにやっと落ち着いたぐらいだ
●前出の幹部は「今では導入の切っ掛けがだれか不明で、自民党国防族にあたったが、だれも知らない」と困惑しており、近い性能で価格が数分の1のイスラエル製無人機の導入や共同開発も防衛装備庁が検討したが、稲田防衛大臣は記者会見でイスラエルとの共同開発について問われ、「現時点では計画はない」とあっさり答えた
●このまま行けばグローバルホークは2019年度末以降に配備されるが、費用対効果に見合うかどうか、米国によるさらなる日本支配の道具に使われないかなど論点が多いにもかかわらず、国会でまともに議論されたことは一度もない。
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半田氏は「36時間と滞空時間こそ優るが、精密な画像は上空から送れず、地上に戻って取り出す必要がある」とも記載していますが、あの田母神俊雄氏などは「一度先に米国へ送信され、その後日本に情報が回ってくる。重要な情報が米国に抜かれる可能性もある」と主張しています
osprey-marine.jpg圧倒的な軍事力と軍事技術力を持つ同盟国との関係ですから、多少のことは致し方なく、現下の憲法や防衛法制下で進めにくい運用研究や技術開発がある事も確かでしょうが、「脅威の変化」を踏まえ、防衛省や自衛隊がより先行的に、組織のしがらみを離れ、どんな装備がどれだけ必要かを議論していれば、米国や日本の政治圧力にも少しは抗することが出来るのでは・・・と思う次第です。
脅威の変化を考える
「東アジア戦略概観 2017で考える」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「F-3開発の悲劇と日本への提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
「ゲーツ長官語録100選」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
「脅威の変化を体に刻む」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

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