宇宙ドメイン死守へ米空軍が宇宙部長A-11新設へ

Wilson2.jpg16日、Wilson空軍長官が米空軍司令部内に「宇宙」を担当する新たな部長ポスト(deputy chief of staff)を設け、8月を目途に「A-11」として活動を開始すると発表しました。
まだ具体的な人名は公表されていませんが、中将ポストで、今後約2か月間で「A-11」に配属するスタッフを含めて検討するようです
一般に空軍司令部組織では、A-1が総務、A-2が情報、A-3が作戦運用、A-4が兵站、A-5が長期計画などなどを担当していますが、米空軍司令部はこのほかにも指揮通信、IT、サイバー等々、様々な「A-●」を設けており、宇宙担当は「A-11」だそうです
今年4月に米空軍は、宇宙関連業務を統括する何らかの新ポストを設けると明らかにしていた様ですが、それが「A-11」の新設だったわけです。
背景は明らかです。
Space Fence1.jpgもちろん、宇宙ドメインがサイバーと並んでその重要性を増していることは論を待ちませんが、米議会内部に重要な宇宙ドメインを空軍に任せておいては、重要施策や資源配分の意思決定が鈍重で適切に行われないとの問題認識があり、「宇宙を空軍から切り離せ」論が強まっているからです
そんなこともあり、今年に入り、空軍参謀総長が「2017年を米空軍の宇宙活動大宣伝の年にする」とぶち上げたり、宇宙分野の主要幹部がプレゼンを盛んに行ったりしているところです
まぁ、今でも複雑に肥大化している司令部機構に、更にポストを増設して業務が円滑化するのか疑問視する声もあるようですが、「お手並み拝見」ということで、とりあえず米空軍首脳の発言等をご紹介しておきます
16日付DODBuzz記事によれば
16日、Wilson空軍長官は宇宙作戦に関する新たな空軍司令部部長職の設置を承認したと発表した。まだ具体的人選は明らかにしていない。
●同長官は「この決定は、米空軍の宇宙作戦を更に格上げし、我々の努力を融合して円滑化する新たなステップである」、「米軍は宇宙に依存しており、敵はそのことを熟知している」、「我々は宇宙にまで拡大するであろう将来の戦いを制することができるよう、適切に組織を整え備えなければならない」と説明している
Goldfein1-4.jpg●同日、Goldfein空軍参謀総長は、「新たな中将たる宇宙部長は、意思決定スピードを高め、宇宙アセットが敵攻撃を回避して作戦の自由度確保を促進するだろう」、「米空軍の文化は空の支配から始まっているが、今後は宇宙活動をリードして情報化時代を進み、戦士が勝利のために必要な宇宙優勢を達成する」とコメントした
●また米空軍宇宙コマンド司令官Jay Raymond大将は、「新たなリーダーは毎日このドメインに集中し、宇宙の課題に対処するため、組織、訓練、装備調達を確実なものとしてくれるだろう」と語っていた
米空軍は引き続き国防長官の宇宙補佐官
●またWilson空軍長官は、Work副長官による決定事項として、来年2018年も米空軍長官が宇宙ドメインに関する国防長官の首席補佐官と務めると発表した
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Raymond&Buck.jpg元空軍幹部で宇宙関連技術アドバイザーであるBrian Weeden氏は、「宇宙施策をリードするポスト新設の意図は正しい方向だ。しかし新ポストが、既存の部署や幹部、また米国の宇宙関連機関などと円滑にやっていけるかは別の問題だ」とコメントしています
ありがちな安易な対策のような気がしますし、本当に複雑な官僚組織で「任務分担」がうまくなされ、機能するのかよくわかりませんが、生暖かく見守りたいと思います
しかし議会も動きました! 20日、下院軍事委員会が空軍からの「実質的」宇宙分野独立を2018年国防授権法に含める案を公表・・・これについては後日ご紹介します!
米空軍と宇宙ドメイン
「米空軍が宇宙活動アピール作戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-24
「商用データも宇宙防衛センターへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20-1
「JICSPOCからNSDCに改称」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「謎のX-37Bの謎が少し解けた」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-11
「副長官がJICSPOCを高評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「宇宙と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01

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