7月26日、Goldfein米空軍参謀総長が米空軍協会主催のイベントで講演し、爆撃機本体だけでなく、爆撃機の任務遂行に関連するスタンドオフ兵器やISRアセットなどの関連装備や技術をもカバーした「Bomber Roadmap」を、9月に発表する予定だと明らかにしました
また同参謀総長は、新しい空軍長官であるHeather Wilson女史と共に作成した「米空軍の優先事項に関する白書」も発表予定だと明らかにし、5つの優先事項を発表しています
マティス国防長官やダンフォード統合参謀本部議長レベルだと、折り重なる数々の問題や課題に関する方針事項や原則を問いただす質問に、国家軍事戦略NMSや核態勢見直しNPRやBMD態勢見直しBMDRと言った上位政策文書がまとまってから説明すると「言い訳」が続いていますが、なぜか各軍種トップレベルは「海軍艦艇355隻態勢」や「戦闘機は毎年120機購入したい」といった要求を軽く口にしている今日この頃です。
どんなアピール文書が9月頃に出来上がるのか判りませんが、まぁ・・・生暖かく見守りましょう・・・
27日付米空軍協会web記事よりGoldfein大将発言
●先週からGlobal Strike Command司令官であるRobin Rand大将が、議会関係者の元を回り、積極的にこの「爆撃機ロードマップ」について説明して理解を得、また意見を伺う機会を持っている
●また、発表になった際にサプライズ感をなくすためであるが、同時に同ロードマップが単に爆撃機だけの計画ではなく、世界中の対象目標攻撃を視野に入れた関連装備全体の構想を包含したロードマップを目指している
●航空アセット単独での任務遂行が考えにくくなることから、ロードマップでの議論は、例えばグローバルホークRQ-4の役割を含めてB-1爆撃機の任務を描くことになる。
●またロードマップでは、旧型と新型装備のコンビネーションを示すことになり、例えばスタンドオフ兵器を搭載したB-52爆撃機とステルス性で突破力を持つRQ-170を組み合わせることで、何が可能か等を描くことになる
●そして全ての任務は、突破型かスタンドオフが、有人か無人アセットか、通常兵器かそれ以外か等々の観点から分析され、更に他軍種との協力や任務の切り分けを経ることになる
●地上戦力の兵士とどのように協力できるか、JTACとは、水上艦艇とは、潜水艦とは、在空型アセットとは・・等々を後半に分析して最適化を図りたい
新たな優先事項白書について参謀総長は
●新たな米空軍の優先事項白書(new white paper on Air Force priorities)は、Wilson空軍長官と参謀総長の両名がサインするモノで、Wilson-Goldfein時代の幕開けを示すモノであり、米空軍を引っ張る5つの優先事項を描くことになる
●5つの優先事項とは以下の5つである
「restore our readiness」
「pursue cost-effective modernization」
「innovate for the future」
「strengthen how we develop airmen and future leaders」
「strengthen alliances with partner air forces」
●「restore our readiness」
飛行隊レベル組織に焦点を当てた取り組みを就任以来ほぼ1年間続けてきたが、前線部隊で効果が出始めている。指揮官を支えるスタッフと上級軍曹レベルに焦点を当てた人的能力向上は、効果を発揮するだろう
●「pursue cost-effective modernization」
産業中心時代の調達モデルから、情報化社会モデルに転換になければならない。また当該システムの能力自体より、「family of systems」全体とどのように結びつけがより重要である
●「innovate for the future」
●「strengthen how we develop airmen and future leaders」
既に米空軍では、「航空作戦運用の芸術」が日々学べる統合職や航空作戦センターでの勤務が、昇任に有利に働く制度を取っているが、これらの勤務を昇任審査に於いてより重視する
更に、JTF(Joint Task Force)能力の育成に取り組んでおり、この資格付与をされた者を将来の危機や紛争対処に当たる指揮官に提供したい
●「strengthen alliances with partner air forces」
敵は持っていないが、我々にあるもの。それは同盟国等との関係であり、米国にとって最大の戦略アセットであり、また非対称分野のアドバンテージである
記者からの質問対応など
●(何機戦闘機が必要かとの質問に、)特定の戦力だけについて語ることは不適切だ
●国家軍事戦略NMSは2年近くの検討を経て完成間近であるが、マティス国防長官は国防戦略見直しDSRのやり直しを指示している。
●国家軍事戦略NMSには、国防長官と統合参謀本部議長が描く全ての軍事的課題が付帯文書の形で含まれており、「four-plus-one枠組み」(中国、ロシア、北朝鮮、イラン+過激派組織)として描かれるだろう
●米空軍はこれらの見直し文書に投資しており、将来の戦いで勝利するために何が必要かを案出するための格好でタイムリーな演習となっている
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これまでも同参謀総長の口から、「優先事項」のお話を聞いたことがあるような・・・。いや、でも、新しい空軍長官とともにまとめることに意義があると思います。多分・・・
「Bomber Roadmap」については、米空軍の作戦構想を知る上で重要な文章になりそうなので、9月になって、過ごしやすくなって、頭の回転が良くなって、気力が回復していれば取り上げたいと思います
「国家軍事戦略NMS」については、下記の過去記事が詳しいです
米空軍参謀総長のご意見記事
「宇宙部長A-11設置について」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-18
「21世紀の抑止再考を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「5分間でトランプに訴えたこと」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-04
「国家軍事戦略NMS検討を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「任期間の重視事項3つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21
「新空軍参謀総長をご紹介」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-27