ソフト開発&更新体制を刷新せよ!

いつもこの女性大将の発言には考えさせられます
Pawlikowski3.jpg14日、米空軍協会の朝食会で講演した米空軍マテリアルコマンド司令官Ellen Pawlikowski大将が、米空軍はハード開発に重きを置きがちで、今や装備品開発のカギとなているソフト開発や管理体制が旧体然としたままで大きな問題となっていると危機感を訴えました
米軍のみならず、世界中の軍事装備品の開発は「遅延と予算超過」が常態化しており、「亡国のF-35」もソフト開発の大幅遅延とトラブル続出であることはご案内の通りです。
先週13日にも、米空軍がNorthrop Grumman 社に20年以上業務委託してきた米空軍航空作戦センターAOCのソフト開発・維持管理を打ち切り、「開拓者プロジェクト:pathfinder」として国防省と米空軍独自に取り組むことを発表したところでした。
そしてこの背景には、当初約350億円規模で始まったサイバー対策強化やオープンアーキテクチャー化が主目的のソフト改修が、700億円を超える状態になってしまっていることがあります。
Pawlikowski司令官は講演で

pawlikowski11.jpg米空軍はいくつかの先駆者的なプロジェクトとして、兵站分野や事務業務分野で新たなソフト開発手法に取り組んでいる。
●そしてその一つが、先週発表された米空軍航空作戦センターの新プロジェクトで、旧来の国防省手法を捨て去り、民間分野のソフト開発手法を導入しようとする試みである
●抱える問題は深刻で、ソフトが装備品の中核的位置を占める時代に、またマルチドメイン指揮統制や意思決定が決定的な役割を果たす時代に、ソフト開発や管理体制が置き去りにされてるからである
●伝統的な国防省の装備品開発には、新たなソフト開発や更新を迅速に行う仕組みが欠落している。典型的な区切りである「preliminary design review」は、ソフト開発にとって何の意味もない
●また国防省の装備品開発では、ソフト開発者と装備使用者・運用者間に大きな壁があり、現場のニーズをソフト開発に迅速に反映させることを阻んでいる
ソフトの変更権限を「大将レベル」に置いていることも迅速さを欠く要因であり、変更改修権限を下位に移譲することも重要だ。少将や准将レベルに権限を委任してもよいし、より下位に任せてもよいだろう
組織文化や予算科目の整理にも言及
Pawlikowski4.jpg旧式のシステムを早く用途廃止にして、「恐竜をジェット機と結びつけるような」困難なソフト開発の必要性をなくすことも重要だ
●更に「リスクを全く許容しない組織文化」を変えていくことも必要だ。2014年まで私が指揮官を務めた「Space and Missile Systems Center」では、だれも初めて国家安全保障関連打ち上げに失敗した指揮官になりたくないと、慎重すぎる組織文化がみられたが、リスクを許容する必要性を訴え続けた
●最後に、どの予算科目をソフト開発に利用するかの混乱や葛藤も、円滑なソフト開発の障害であることを指摘しておく。つまりソフトの改修や近代化予算が、研究開発費か運用管理費なのか不明確なことが多く、誰が責任者なのかも不明確なことがある。国防省として「ソフト開発費」を設定することも一つの解決策
●組織的な課題への対処策として、米空軍は運用者とソフト開発者を緊密にする「ソフトウェアチーム」設置に取り組んでおり、「ソフトウェア隊」に拡充するアイディアも検討している
●先駆者的取り組みは、兵站や事務業務分野に今は限定しているが、将来的にはよりリスクが高い作戦飛行計画作成ソフトなどにも応用できれば良い
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Pawlikowski6.jpg女性大将の草分けであるPawlikowski司令官ですが、並々ならぬご苦労とご努力の末に現在の地位を得られただけあり、他の男性将軍とは一味異なる視点や広い視点で話をされることが多いように思います。
だから軍事メディアも以下の過去記事ように多様な分野で、Pawlikowski司令官の発言を頻繁に取り上げています。米空軍研究所(AFRL)を配下に持つ司令官とはいえ、その守備範囲の広さに驚かされます。
このような「お手本」のところに、日本の女性自衛官を派遣して薫陶を受けさせることも、よいアイディアではないでしょうか?
Pawlikowski司令官関連
「初のICBM施設大規模修理」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「軽攻撃機のデモ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-07
「ソフト更新とサイバー対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21
「レーザーの現状を冷静に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24
「米空軍の戦略計画チームを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25-1
「次世代制空機の検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-23

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