米海軍長官がアジアに第1艦隊編成を要望

シンガポールか?Andaman島か?
「We want to stand up」との表現で煮詰まっているのかな?

Braithwaite.jpg17日、Kenneth Braithwaite海軍長官が潜水艦協会年次総会で講演し、中国軍の活動が活発になる中、インドーアジア太平洋を第7艦隊だけでカバーするには無理があることから、1973年に一度消滅した「第1艦隊」をインド洋から太平洋をカバーしやすい場所で再編成したいと語りまし

米海軍の「艦隊」と言ってもその規模や形式は様々で、「艦隊」の中でも最大のアジア太平洋担当「第7艦隊」は、横須賀を拠点として約2万の兵士と艦艇・潜水艦70隻(空母攻撃群含む)、航空機150機の大所帯ですが、昨年末に編成された「第2艦隊」は、200名規模でロシア潜水艦探知追尾の指揮統制調整を担う小規模組織で、海軍長官の言う「第1艦隊」がどの程度を意味するのか明確ではありません

Fleet.jpg冒頭でもふれたように「We want to stand up a new numbered fleet」との表現で、今後受け入れ先の調整を丁寧に進める必要性にも言及しており、どこまで煮詰まっているのか不明ですが、「インド洋と太平洋のクロスロードに設けたい」と述べていることから、調整中の微妙なタイミングなのかもしれません

以下では、海軍長官の発言と、「第1艦隊」の拠点となる候補地に関する米軍事メディア記事をご紹介しておきます

19日付Military.com記事によれば
17日、Braithwaite海軍長官は「我々は新たな艦隊を立ち上げ、インド洋と太平洋の間のクロスロードに配備したい。そして同地域のプレゼンスを高めたい」と語った
Braithwaite3.jpg同長官は、アジア太平洋域には米海軍最大の第7艦隊が活動しているが、その担当領域もまた世界最大であり、第3艦隊の支援を受けつつ、なんとか南シナ海での航行の自由作戦などに懸命に対応している現状を説明しつつ、これ以上第7艦隊だけに頼っていられないと訴えた

また、中国軍の急速な戦力増強と活動活発化を訴え、9月には中国海軍空母2隻が同時に海上行動に出るなど、その行動範囲も拡大していると背景を説明し、新たな艦隊はそれら中国軍に対する強力な抑止力になりえると訴えて「だから第1艦隊を立ち上げようとしているのだ」と語った
具体的な配備先に関し海軍長官は、「我々は地域の同盟国やパートナ国であるシンガポールやインドなどと相談しなければならないし、不測の事態に備えて、懸念のある必要な場所に艦隊を配置しなければならない」と語った

Braithwaite2.jpgまた「チョークポイントのそばのシンガポール以外でも、米軍だけでなく、同盟国等にも安心感を与えられるような、アジア太平洋域全体への展開派遣に適した場所に第1艦隊を配置したいと考えている」と述べた
シンガポールには現在既に、米軍関係者約1000名が所在し、沿岸戦闘艦LCSがローテーション派遣されており、西太平洋の海軍兵站群が燃料弾薬食糧などの提供を担い、第7艦隊艦艇への支援も行っている(ので有力な候補地だ)

シンガポール大学のIan Chong准教授は場所・港湾設備・支援施設拡張の余地等からシンガポールは第1艦隊配備の適地だとしつつも、仮に空母攻撃群まで配備するとなれば、中国との関係に神経を使う地域諸国の現状から相当に調整が難航するだろうとコメントしている
他の候補地として、フィリピンのスービック湾も候補だろうが、同国の支援が得られるかは不透明で、同様にマレーシアやインドネシアも協力的とは考えにくく、施設面でも相当のテコ入れが必要

Andaman Island.jpgまたベトナムのカムラン湾も候補にはなるが、ベトナム政府や国民の支援は難しく、同盟国のタイも期待できるとは言い難いと同准教授は見ている
マラッカ海峡に近く、人口密度が低いことから政治的に受け入れ可能性が比較的高いとみられるインド領の「Andaman Island」の可能性を指摘する専門家もいるが、同准教授は関連施設を整備するには莫大な資金と時間が必要な点を懸念している
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前任者が空母ルーズベルトでのコロナ爆発感染とその後の措置を巡って辞任し、5月末から海軍長官を務めるBraithwaite氏は本ブログ初登場です。海軍士官学校卒業の60歳で、約10年の対潜ヘリや広報担当正規士官勤務をを経て予備役に転換し、「Public Affairs」専門で2011年に准将で退役した人物で

海軍長官の前は、2018年2月から2020年5月までノルウェー大使として赴任していますが、海軍退役後の期間に、「Cambridge Analytica」と言う2016年米大統領選で情報工作に関与したとされる外国企業に所属していた件でメディアの注目を浴びたこともあったようです

予算や艦艇の回しが厳しい中で、あくまで「We want to stand up」との表現の「第1艦隊」復活構想ですので、慎重に見守るべき話だとは思いますし、実現するにしても規模は限定的で名前でアピール的な気がします。外交面でも一筋縄では進まない事業であることを念頭に置く必要がありましょう・・・

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Wikipedia第1艦隊
→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC1%E8%89%A6%E9%9A%8A_(%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E8%BB%8D)

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