7月号の米空軍協会機関誌が「Perdix Could be DOD’s Pathfinder:Perdixは米国防省の先駆者になる」との記事を掲載し、国防省SCO(緊急戦略能力開発室)が取り組む「小型無人機の群れ」試験・開発の状況を、SCO室長William Roper氏へのインタビューで紹介しています
2016年10月、1機の重量が300g以下の小型無人機「Perdix」を「103機」FA-18から投下し、群れとして運用する試験を行い、今年1月に初期成果の発表があったところですが、昨年10月の試験を行った第6世代無人機を改良した、第7世代機が今年夏には完了する事が明らかにされています
また2013年に研究が始まり、2015年に最初の試験を行った経緯など、なかなか興味深い「これまでの道のり」にも話が及んでいます。
市販部品を使用して創られた重量283g、全長16.5cm、翼長25.4cm、プロペラ長6.6cmの小型無人機「Perdix」と、「オープンアーキテクチャー」を存分に活用して国防省SCO(緊急戦略能力開発室)プロジェクトの「先駆者」にすべく奮闘するWilliam Roper室長の物語としても興味深い所です
7月号の米空軍協会機関誌によれば
●Roper室長はインタビューに答え、第7世代目となる「Perdix」がこの夏にも完成すると述べ、約7ヶ月毎に新たな世代に進化している様子を、「政府のやるプロジェクトにしては上出来だろう」「スマホのように、継続してソフトとハードの両方を改良革新していくスタイルだ」と表現した
●また同室長は、幾つか最終的に固めていない仕様があり、全てをがちがちに固めないで使用者のニーズを反映できるように構えていると開発要領の違いを述べ、開発初期段階でパートナーに事業への関与のサインを求めず、何が出来るかが固まってきた段階でサインを求める形にしているとも説明した
●そしてラッキーナンバーである「7」代目の「Perdix」が米軍全体で受け入れられれば、開発手法と製造と部隊配備の面で、国防省SCO(緊急戦略能力開発室)の他のプロジェクトの「先駆者」となろうだろうと室長は語った
●昨年10月の試験であられたデータは膨大で分析評価が続いているが、「群れ」を自立的に制御するソフトは期待した役割を果たしたと評価している。群れから離れた無人機と他機が意思疎通し、再び群れに融合させる仕組みが確認できた等、人間が指示しなくともチームとして機能する喜ばしい結果が出ていると室長は述べた
●今は様々な教訓を踏まえ、何を「Perdix」に搭載するかも考え始めている。考えるのが楽しい仕事だ。監視任務は当然出てくる話だろうし、無人機MQ-1やMQ-9が出来ない場所の偵察監視を「Perdix」が担うことは可能だとRoper氏は語った
●しかし偵察監視だけじゃ無い。ただ新しい技術は奇襲的に用いるのが軍事的成功の鍵でもあるので、具体的な活用任務エリアについて同室長はこれ以上語らなかった
●国防省SCO室は、次々と今後現れるであろう新技術を「Perdix」にどんどん投入し、「オープンアーキテクチャー」を最大活用して改良し続けたいと考えている。
●そこで、従来のように一度に10万個購入して保管し、10年間少しづつ取り出して使うのではなく、改良を続けながら少量づつ購入する方向に向かいたいと同室長は例を出し、この方面でも語った「Perdix」を先駆者にしたいと語っていた
2016年10月試験映像
開発開始当初の様子
●2013年に開発が始まり、2015年に加州のエドワーズ空軍基地で試験した際は成功とは言えなかった。民生部品を多用した「Perdix」が、高速で低温の上空を飛行する航空機から投下することに耐えられるか確認するため、極地に同機を持ち込んでマイナス35度に耐えられるかを確認したりした。
●また民生部品は個々の部品重量が微妙に異なることから機体重量にバラツキが生じ、ソフトで柔軟対応が出来るように対応する必要があった。しかし基本的に乱暴な扱いにも耐久性がある事が明らかになり、興味を示した海兵隊で最初の試験を行った
●反応しなくなった無人機には「kill signal」を出して使用しない。2016年10月の試験では、60秒間反応が無ければ破棄信号を出した。初期段階の試験では、寒さや通信途絶等から故障する無人機も多かったが、昨年10月の試験では9割以上の「Perdix」が運用可能だった。
●この背景には、民間企業の大量参入で小型無人機技術が急速に進歩していることがある。各種装置の小型化、信号処理装置の耐久性向上、バッテリーの能力向上等々、厳しい環境でも安定して動作する部品研究に、民間分野で多額の投資が行われているからである
●その耐久性が証明されるにつれ、海兵隊だけで無く、米海軍も空軍も特殊部隊も、皆が関心をこの技術に示していると同室長は語っている
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「無人機の群れ」プロジェクトは、今年1月の初期成果発表を受け当時のカーター国防長官が、「第3の相殺戦略」の一環であることを強調しつつ、「敵に一歩先んじる最先端の技術革新だ」と高く評価するコメントを出しているように、無人機活用の大きな力点・焦点ですので注目したいと思います
ついでに言えば、次世代を担う若者に無人機の性能や特性を学ばせ、新たなアイディアを募るため、国防省DARPAがスポンサーとなり、米軍の陸海空軍士官学校の「無人機の群れ」対抗戦を今年4月に行ったぐらいの力の入れようです。
更に言えば、Roper室長はこの春、米空軍協会で講演し、「米軍の中で、米空軍が無人機の群れに一番消極的だ」と非難しており、職域やポスト防衛を図る操縦者の姿が浮き彫りになっています。そう、これは改革・変革へのリトマス試験紙の性格を持つプロジェクトでもあります。
無人機の群れ関連の記事
「3軍の士官学校が群れ対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26
「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「米空軍が小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18