液体アンテナ:多様な周波数を一つのアンテナで

liquid antenna4.jpg6月13日付Defense-Techが、米空軍研究所が取り組む航空機搭載用の「液体金属アンテナ:liquid antenna」研究を紹介しています。
皆さんご存知のように、航空機には使用する様々な周波数の電磁波を発信&受信できるように、多数の様々なアンテナが取り付けられています。平均8~9個搭載されているそうです。
小さな突起物のようなアンテナだったり、機体に沿って埋め込まれていたり、機体表面にアンテナパネルを埋め込んだり・・・様々な形態で、様々な周波数に対応するアンテナが必要です
liquid antenna.jpgしかしこのように多様なアンテナは、全てが常に使用されるわけではなく、ある任務に必要ないアンテナも「余分な重量物」として常に航空機と共に移動します。
このような問題認識を持ち、液体金属をアンテナに活用することで、一つのアンテナで複数の周波数に対応できるアンテナを作ろうとする研究が始まっており、7~10年後の実用化を目指し研究が続いています
液体金属アンテナ:liquid antenna研究
liquid antenna3.jpg●国防省で行われた国防省研究機関展示会でMilitary.comは、液体アンテナを研究するChris Tabor氏にインタビューを行った。
●同氏によれば、液体金属を利用した多様な周波数に適応可能なアンテナには2つのタイプがある。チューブや管に液体金属を注入し、その量で対応周波数を変える方式と、曲げたり伸ばしたりできる柔軟な素材に液体金属を入れ込み、素材を曲げ伸ばしすることで多様な周波数に対応する方式である
チューブや管に液体金属を注入する方式では、液体金属がチューブ等の中で占める長さにより、アンテナの長さを変える効果を生み出す
●「NextFlex」に代表される曲げ伸ばしできる素材の研究は、2015年に国防省が企業や研究機関162団体と結成した「Manufacturing Innovation Institute for Flexible Hybrid Electronics」や、「FlexTech Alliance」が取り組む技術を利用する
液体金属と言えば常温で液体状態を保つ「水銀」が頭に浮かぶが、担当の少尉は水銀を使用しないと語り、電子機器よく使用される摂氏30度で液化する「ガリウム:gallium」の活用に言及した
liquid antenna2.jpg●そして同少尉は「イリジウムとの合金にすることで、液化温度をマイナス30度程度に下げることができ、多様な環境で使用できる」と語っていた
●Tabor氏は、「70メガHz~7ギガHzの範囲の広帯域周波数に対応する範囲を試験で取り組んでいる」と説明している
●現在はまだ実験室内での試験レベルだが、次のステップとして無人偵察攻撃機MQ-9などの航空機に液体アンテナを搭載して確認を狙っている。Tabor氏らは、7~10年後には実用化できるだろうと語ってくれた
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その他に同記事は、MQ-9無人攻撃機にデータリンクLink-16のニーズが高まっており、搭載容量に余裕のない同無人機のアンテナをどうするかが課題だが、自動制御装置のカバーに「printed antenna」を組み込む検討も紹介しています
MQ-9 5.jpgまだプロトタイプ作成段階らしいですが、2か月ほどでMQ-9用の「printed antenna」が組み込まれたカバーが出来上がるようです
軍用だけでなく、民生分野での活用範囲も広いでしょうから今後が楽しみな技術です。期待いたしましょう!
最近の興味深い技術
「F-35Cの着陸精度が素晴らしい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22
「FA-18の着艦精度も改善」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-09
「SpaceXがロケット回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-02

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