9日の週に開催されていた米陸軍協会総会に並行して行われた装備品展示会で、あるノルウェーの弾薬製造企業「DSG Technology」が注目を集めました。
その企業が特許を取得して製造する小火器や機関銃の弾丸(5.56mm, 7.62mm .50 caliberなど)は、特殊な加工により、従来の弾薬より水中でも水の抵抗に強く、より遠くまで威力を保ったまま進むことができるというのです
例えば「.50 caliber」弾丸は、水中で60mも正確にかつ威力を保って到達することができるようで、船舶に接近する敵のダイバーや無人水中艦の対策に有効だと米海軍関係者も既に試験を経て好感触を得ているようです
このほかに、水上艦艇から水中の不審物に対して発射しても、従来の弾丸は一定以上の角度(60度以上との分析も)がないと水面で弾かれてしまうところ、同社の弾丸は20度以下でも大丈夫との資料もあり、水上艦艇への「敵の群れ」対処に頭を悩ませていた海軍関係者に朗報となっているようです
12日付Defense-Tech記事によれば
●DSG Technologyはノルウェ国籍の企業だが、バージニア州にオフィスを持ち、ワイオミング州に製造工場を持つ企業で、CEOのJon Andre Garberg氏は米陸軍協会の展示会場で、水中を「飛ぶ」弾丸について説明してくれた
●Garberg氏は同社が特許を持つ弾丸について、弾丸が水中を進む際に起きる「cavitation; 液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象」により生じる気泡の中を、弾丸が「飛ぶ」のだと説明し、従来の水中を「泳ぐ」イメージと異なると強調した
●そして同CEOは弾丸の特許について、「弾丸の先端(tip)が鍵だ。わが社が発明したんだ」と語り、弾丸(5.56mm, 7.62mm .50 caliberなど)に興味を持つ米軍関係者が既にやってきていると述べた。
●また、「.50 caliber」弾丸は水中で60mも正確にかつ威力を保って到達可能で、同社製造の他の弾丸は全て、空対空、空対水中、更に水中発射も可能だとアピールした
●更に同CEOは同社特許の弾丸の特長について、他社の弾丸と異なり水面で跳ね返されて「水切り」を起こさない点を強調し、他の周辺艦艇を危険にさらすことがないことをアピールした
●そしてこの弾丸の必要性について、不正規な戦いで無人水中艇や特殊部隊のダイバーが大きな脅威として認識されているが、その発見は容易だが対処に課題があったと述べ、「(水中での威力を確保するため、大型の)カノン砲など使用する必要はなく、わが社の弾丸なら普通の機関銃(.50 caliber)で十分威力を確保できる」と述べた
●ただし一方で同CEOは、「価格については語りたくない」とし、「他の高性能弾丸と同程度だ」と述べるにとどまった
●なお12日には、米海軍水上戦闘センターのJeremy Hankins技術専門官も同社の展示スペースを訪れ、「既にいくつかの性能確認試験を行い、良好な結果を得ている」と認めている
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いろんな目の付け所があるんだなぁ・・・と感心しました。
従来の弾丸がどの程度水中で有効なのか承知していませんが、船舶の推進力を邪魔する「cavitation」を活用し、「水中を飛ぶ弾丸」に結びつけるとは大したものです。
ちなみにwikipedia情報によれば、ロシアのスーパーキャビテーション魚雷「シクヴァル」は、この現象を応用したもので、人為的に大量の気泡を先端部から発生させ、そこにできた空洞を弾道とすることで、水中でありながら 200 kt ( 約370km/h ) 以上の速度を実現している様です。これが先駆者かもしれませんねぇ・・・
キャビテーションの解説
→http://web.tuat.ac.jp/~kamelab/list2/cav.htm
→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%93%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3