米空軍のパイロット不足が更に悪化

17日、戦闘機パイロット不足は約1300名だと報道官が補足説明
→http://www.airforcemag.com/Features/Pages/2017/November%202017/Pilot-Shortage-is-Even-Worse-Than-Announced.aspx
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wilson7.jpg9日、Wilson米空軍長官とGoldfein米空軍参謀総長が記者団に対し、「米空軍の現状」とのブリーフィングを行い、2016年度末段階で約1500名不足していた米空軍パイロットが、2017年度末(9月末)で約2000名不足に悪化していると訴えました。
米空軍としても、ボーナスを増額したり、皆が嫌うようなスタッフ職につかなくていいよとか、退役した操縦者に「帰って来いよ」募集をかけたりと対応策に努力しているところですが、米国のみならず世界全体で操縦者が不足して引き抜き合戦状態にあり、更に海外派遣が頻発する等で米空軍の任務環境が厳しい中、パイロットの流出を食い止めることが難しいようです
それでも空軍長官と参謀総長は、予算の強制削減を受けた暫定予算が継続する中では、部隊が十分な訓練を訓練を行えず、前線派遣可能な操縦者や部隊の準備ができないから、何とか予算状況を改善してくれと訴えたかったようです
9日付米空軍協会web記事によれば
Goldfein1-1.jpg●Goldfein大将を同席させて記者団に対しブリーフィングを行ったWilson米空軍長官は、米空軍全体で全てのカテゴリーの全ての機種の操縦者に関し、1926名が不足していると語った。これは米空軍全体の必要操縦者数20000名の約10%に当たる
●また昨年度末の約1500名不足状態からさらに悪化していると説明した。空軍長官は機種別の不足数に関する質問には回答を避けたが、戦闘機パイロットの不足が多くを占めていると言われている
●記者団からの、米空軍が対策として行っているボーナスの増額や付加職務軽減等の対策の効果はないのかとの質問に対し長官は、「米空軍の規模に比して、任務量が多すぎる」、「多忙さにより米空軍操縦者が燃え尽きてしまっている」と即座に回答し、既に17回もの海外派遣を経験している操縦者の例を挙げた
●参謀総長は、防御的ともいえる初期の対策(ボーナスや経歴管理での優遇)で操縦者の流出防止を行っているが、今後は攻撃的ともいえるより広範な攻めの対策で新たな人材を集めたいと語った
wilson-Gold.jpg●(恐らくボーナス等の追加支出に関する効果への疑問に先手を打って説明し、)ボーナス増加等の対策に経費を要しているが、1兆円もの経費を投入して育てた操縦者が既に流出(walked out the door)しているのだと同大将は訴えた
●そして攻めの対策として、毎年のパイロット養成数を従来の1200名から1400名に増加させたり、退職した操縦者を現役に復帰してもらう方策に取り組んでいくと語った 
●参謀総長は米空軍の問題を米国全体が直面しているパイロット不足問題の縮図だと説明した同大将は「国家全体の問題だ」「米国全体として、民航機操縦者も軍用操縦者も、十分な数の操縦者を養成できていない」と訴えた。
●一方で空軍長官は「パイロットは1年では養成できない」ので対処には時間を要すると語りつつも、(訓練予算不足で低下している)飛行部隊の即応体制を改善すれば、パイロット不足を幾分かは緩和できると説明し訴えた。
●そして改めて、終わりが見えない海外派遣等により、家族を含めた操縦者家族に消耗を強いている現実を訴え、「これ以上は耐えられない」と空軍を去る家族を生んでいる現実を語った
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USAF pilot.jpg操縦者不足が米国だけでなく世界全体の問題だとして、世界の空軍をリードする米空軍には、是非とも戦闘機に求めるものは何か、どれほどのニーズがあるのか、どれだけの機数が必要なのか、更に従来通りの訓練体系で良いのか・・・等々の根本に立ち返って見積もりを再構築してほしいものです
中国や北朝鮮ににらみを利かすために、F-35を展開させてどれほどの効果があるのか? 30年前と同等の効果があるのか? 戦闘機があるから使っているだけで、ほかにもっと脅威に変化や技術進歩に応じた他の方策があるのではないか・・・と真剣に考えてほしいものです。
脅威の最前線にあるはずの、日本の戦闘機命派には全く期待できませんから・・・
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