現在、約2000名のパイロットが不足し、その流出が止まらない米空軍は、昨年から約70年ぶりに下士官の操縦者要請を開始し、攻撃能力を持たない無人偵察機RQ-4のパイロットにしようと訓練を行っていますが、そんな中で2年目を迎える下士官パイロット要員選抜と、更なる下士官操縦者拡大を目指す動きについてご紹介します
米空軍の操縦者不足は、十数年にわたって継続する実戦への繰り返し派遣への疲れ、また旺盛な民間パイロット需要(軍に比し楽で高収入)を受け軍人パイロットの流出が止まらないことが大きな原因です
米空軍は対応策として、給与ボーナスの増額、司令部業務の免除など、様々な優遇策で操縦者の引き留めを図っていますが、流出に歯止めがかかったとの話は聞いたことがありません
そうとなれば、士官クラスに限定してきた有人機パイロットを下士官に拡大したくなるのは自然の流れで、実際多数の操縦者を必要としたWW2時代は、米国も日本も他の欧州諸国も、下士官操縦者が活躍していたわけです
後は、プライドが高い現在の士官操縦者の考え方をいかに変え、下士官有人機操縦者を受け入れる判断をするかですが、その日に向けた動きは着実に進んでいるように見えます
下士官操縦者選抜:2年目の動き
●1月15日の週、テキサス州の基地で、2回目を迎える下士官操縦者候補要員の選抜会議が開催される
●米空軍教育訓練コマンドは、これまでに134名の下士官の操縦者志願者から申請書を受け取っており、この中から操縦者養成コースに入ることが出来る40名を選抜する
●2月末までには40名の選抜者が人事ルートで所属部隊等に通知される予定だが、2019年の下士官操縦者募集は今年4月から開始される
●この選抜プロセスを担当する中佐は、応募者を様々な視点から分析するとともに、昨年から始まっている下士官操縦者コースの状況も参考にして選抜に生かしたいと語っている
操縦者教育の短縮と下士官受け入れ拡大検討
●米空軍教育訓練コマンドは、最新の技術を活用し、操縦者教育における学習効率を向上させ、養成コースの短縮につなげられないか検討を開始する
●そしてこの検討は、下士官のデータを活用して行われる
●この検討を成功させるため、担当者は異なる教育的背景を持つ多様な下士官グループのデータを活用して行われ、基礎課程を修了したばかりの下士官の中から操縦者に適した候補者を選抜する基準作成に活用する
●そこでは、そのような資質や心理特性が操縦教育コースでの成功につながるかを見極める
●現時点で米空軍は、下士官操縦者を友人機に拡大することを検討していないが、将来の可能性はある
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このように、下士官の有人機パイロット誕生に向け、少しづつ、着実に、心理的壁を取り除く布石を打っている・・・ということでしょう。
車の運転技術がそうであるように、ある程度のレベルの人間であれば、士官でも下士官でも、適正のある人間を選抜すれば、操縦者として任務を果たす事は十分可能です。
いつ米空軍が正式に下士官有人機操縦者を受け入れるか、その時、他の同盟国等はどうするのか・・・実に興味深い人間観察の機会です
米空軍のパイロット不足
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10
「世も末:幕僚勤務無し管理検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20
「トップが操縦者不足と軽攻撃機を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-17
「18年ぶり飛行手当増額」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-28
「戦闘機パイロット2割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22
「航空業界は今後20年人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29