米空軍の新たな爆撃機体制計画

以前は、B-1とB-52を2040年まで、B-2を2058年まで使用する計画でしたが・・・
3-Bomber.jpg11日付米空軍協会web記事が、米空軍が間もなく発表するであろう爆撃機の将来計画「Bomber Vector」の計画案を入手し、その概要を報じています。
元々、昨年9月には公表する計画でしたが、核態勢見直しNPRや2019年度予算が固まるタイミングを待ち、新長距離ミサイルLRSOやB-52エンジン更新予算の目途が付くタイミングを待って発表する計画とのことです
冒頭に触れたような従来計画を見直すことになる「Bomber Vector」の大きな柱は、B-1とB-2をそれぞれ2036年と2032年までには引退させ、一番高齢のB-52をエンジン換装して2050年まで使用する方針を示したことです。
B-21 2.jpgそして現在152機体制の爆撃機部隊を、将来的には100機のB-21と、75機のB-52からなる最低175機体制に増強しようとの計画になっているようです。
ただし、100機のB-21は2020年半ばから11年かけて製造される計画で、爆撃機の交代はゆっくりと行われる計画となっています
その心は、ぶっちゃけて言うと新型ステルス爆撃機B-21を100機導入する予算を考えると、維持費のかかるB-1やB-2を保持するのは困難で、突破力は無いものの多様な搭載兵器で多様な任務が可能で、維持費も安価なB-52を残すことが好ましいとの判断です
またB-21をB-1とB-2の後継として同じ基地に配備することで、弾薬管理施設等の設備投資を抑えられ、運用要員や整備員計約1万名に影響を与えるシフトを、円滑に安価に実施でき好都合だとの考え方です。
各機体の維持費や運用費用分析を含み長い記事で、とてもすべては紹介できませんが、何時ものようにつまみ食いでご紹介します
11日付米空軍協会web記事によれば
3-bomber1.jpg●以前の予定を変え、B-1とB-2を、B-52より先に引退させることにしたのは、その稼働率の低さと維持経費の高さからである。
B-1とB-2の稼働率は40%と32%で、B-52は60%。飛行時間当たりの所要整備時間は、B-1とB-2は74時間と45時間(ステルス性維持時間は非公開)で、B-52は62時間。飛行時間当たりのコストは、B-1とB-52が700万円だが、B-2はその倍である
B-1とB-2の稼働率が低いのは、部品製造企業が次々に撤退し、部品確保が困難であることが大きな原因で、特に20機しかないB-2は部品の「共食い」で何とかしのいでいる状態で、従来の2058年まで維持など到底不可能で高コスト過ぎる。またB-2の突破力は、間もなく通用しなくなるとの見積もりも背景にはある
●また、B-1は戦略兵器削減条約の縛りで巡航ミサイルが搭載できない点でも維持するメリットが低下している
一方B-52に対しては2019年度予算からB-52エンジン換装予算が盛り込まれ、燃費を大幅に改善して航続距離や在空時間を延伸し、2050年代の退役までエンジンを取り外しての定期整備を不要とする施策が行われる方向である
B-52-UK2.jpg●またB-52には多様な兵器が搭載可能で、NPRで必要性が裏付けられた長射程スタンドオフミサイルも搭載でき、敵の対空脅威がない場合や排除されたエリアでは十分な能力発揮が低コストで可能だと評価が与えられている
●なお、B-52エンジン換装や2050年代までの維持には2兆4千億円の経費が必要と算定されているが、そのうちの1兆円強は新エンジン導入による維持費や燃料費の削減でペイできると米空軍は主張している
新爆撃機B-21の導入は、年9機程度のゆっくりしたペースで進め、製造設備や工具が高コストとなったB-2爆撃機の反省(当初132機計画が21機で中断)を生かし、時間をかけても効率性を重視した製造計画を組んでいる
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1960年代には1500機以上の爆撃機を保有した米空軍ですが、現状は157機だそうです。
この「Bomber Vector」は175機体制を目指すとしていますが、米空軍幹部は事あるごとにB-21爆撃機の現計画100機導入を、270機必要だ等々と訴えています。
B-2takeoff.jpg最後に、次期爆撃機検討の最中に、統合の観点から要求を取りまとめる統合参謀本部副議長(海兵隊大将)が、「次期爆撃機が有人機ある必要があると米空軍は主張するが、それならICBMに有人型があるのか? 私は有人機の必要性が全く理解できない」と訴え、米空軍を強烈に批判していたことをご紹介しておきます
「次期爆撃機に有人型は不要だ」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-16-1

B-52関連の記事
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21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
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