20日、フィリピン国防省報道官は、ドゥテルテ大統領が国防装備近代化の5か年計画「Horizon 2」を承認したと発表しました。
この5か年計画は、2018年から2022年を対象とし、陸海空軍の装備等近代化に約6000億円を投入する計画で、WW2時代の兵器が今も残るフィリピン軍を、同国を取り巻く複雑な安全保障環境に対応する能力強化を狙うものです
フィリピンは南シナ海を囲む島国国家で、7600もの島々から構成されています。その安保課題は多岐に及び、国際的な関心が高い南シナ海での領有権問題だけでなく、イスラム過激派の浸潤など国防強化は喫緊の課題です
ただし、依然としてドゥテルテ大統領の麻薬取り締まりを「非人道的」とか非難し、武器取引に難色を示す西側の国もあり、トランプ政権はオバマ政権と異なり理解があるようですが、予算の継続性と共に今後「Horizon 2」の進展は予断を許さない雰囲気です
21日付Defense-News記事によれば
●「Horizon 2」では、約1000億円を陸軍に、海軍に1600億円、空軍に2900億円を投入する計画を組んでおり、残りは参謀本部等に配分されている
●陸軍の近代化装備には、火砲の増強、軽戦車、多連装ロケット発射機等が含まれている
●海軍のリストには、2隻のコルベット(1500トン以下の沿岸警備艇イメージ)やパトロール艇、対潜へり、また海兵隊用の着上陸用舟艇が含まれている
●最も予算配分が大きい空軍は、多用途戦闘機、輸送機、海洋哨戒機、輸送ヘリなどを要望している
●国防省報道官は、海軍が潜水艦導入を検討したが、予算枠や運用経験不足等から断念したと認めた
●また空軍は2月に、カナダ政府とBell412攻撃用ヘリの購入契約を締結していたが、カナダ議会がドゥテルテ大統領の人権問題に懸念を示してキャンセルとなった。今は代替として、韓国製のSurionヘリを検討しているとの報道がある
●2017年5月、フィリピン南西部のミンダナオ島のマラウィ市がイスラム過激派に占領され、政府軍との5か月にわたる戦闘となった。町は奪還されたが大きな被害を受けた
●この戦いでは、米軍がフィリピン軍をISR面で支援し、無人偵察機や哨戒機が投入され、オバマ政権時に関係が悪化した両国関係改善の足掛かりとなった
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この「Horizon 2」が実現すれば、フィリピン空軍が戦闘機を保有することになるのですが、それにしても広大な領土領空領海を守るには不十分で、中国の圧力に対抗するには心もとないレベルです
しかしそれでも・・・米国にとっては、同盟関係は「非対称」の重要アセットですから、フィリピンとドゥテルテ大統領には頑張っていただきたいものです
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