同盟国とのMD情報共有の課題はサイバー

新しい太平洋空軍司令官の初海外視察は、横田基地の弾道ミサイル防空システムだったとか
BMD.jpg8月6日から7日にかけ、新しい太平洋空軍司令官Charles Brown大将が初海外視察で横田基地でBMDシステムを確認し、小野寺防衛大臣や統合幕僚長や空自トップと会談した同じ7日、米アラバマ州でミサイル防衛関連イベントが開催され、米陸軍パトリオットでのBMDを担当する大佐が、BMDの充実の鍵は同盟国システムとの迅速な情報共有だが、サイバー脆弱性が他国システムとの連接の懸念だと吐露しています
同大佐の念頭にあったのは、イエメン国内にはびこる武装勢力Houthiが繰り返すミサイル攻撃を、サウジ軍がパトリオットミサイルで迎撃している一連の作戦があるようですが、今年に入ってから欧州3か国(ポーランド、ルーマニア、スウェーデン。スイスも前向き検討中)が新たにパトリオットPAC-3ミサイルシステムの導入を決定していることからも、相互運用性(インターオペラビリティー)悩みの範囲は急拡大している模様です。
8日付Defense-News記事によれば
PAC-3 Saudi.jpg●ハンツビルで開催されたDefense-News主催の「Missile Defense Networking Reception」でパネル討議に参加した新旧の米陸軍パトリオットミサイルBMDシステム担当幹部は、同盟国等への同システム導入が進み、相互運用性強化の望ましい方向に進みつつある中、依然として課題も多いと語った
●そして相互運用性向上の鍵である迅速な情報シェアリングの重要性を強調しつつ、迅速な情報共有のためのシステム連接に容易でない部分が残されていると表現した
現役のパトリオット担当幹部であるFrancisco Lozano陸軍大佐は、システム連接がなくとも緊密な協力関係で対応していると強調し、イエメンからのミサイルに対処しているサウジ軍との関係を念頭に、「連絡を密にし、24時間体制で長時間連続運用を続けているパトリオットシステムへの影響をモニターし、実脅威の実態と合わせて多くの教訓を学ぶ機会を得ている。教訓は戦術・技術・手順の見直しに反映し、運用コンセプトの見直しにも生かしている」と語った
PAC-3 MSE.jpg一方で、パネル討議に参加した元ミサイル防衛コマンド司令官であるDavid Mann退役中将は、米軍と同じパトリオットシステムを使用している同盟国軍との間でも、情報共有に関しての努力は継続していると表現し、「他国システムとの融合に当たり、躊躇する要因がサイバー脆弱性である。システム連接を判断するまでには、この問題に関連する多くの検討と利害判断が求められる」と表現した
●同退役中将は更に、「この問題検討には大変労力を要するが、他国システムを連接することでサイバー面で脆弱になることは受け入れがたい。我がシステムの情報が危険にならされることには耐えられない」と述べている
●ただ米軍だけで世界の隅々までBMDを展開することは不可能であるので、引き続き同盟国等にBMDシステム導入を働き掛けていくことになる。全てのシステムを1国で導入することが難しければ、例えば、オランダがBMDセンサーだけを導入し、ベルギーが迎撃ミサイルを分担して配備するといった方式も考えられる
BMDシステムの配備拡大と、システム連接の脆弱性克服は両立しなければならない課題である
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Brown2.jpg新太平洋空軍司令官Charles Brown大将が、日本のBMDシステムのサイバー脆弱性をどの程度懸念しているか気になるところですが、着任後の最初の海外訪問先に日本を選択した戦略眼に敬意を表しておきましょう。
そして豊富な中東経験と薄いアジア太平洋経験の同司令官の今後のご活躍に期待いたしましょう.
しかし・・・サウジとの連接も躊躇するようだとすれば・・・いろいろ難しいですねぇ・・・
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