宇宙に物資を保管し必要時に迅速配布

Everhart.jpg2日、米空軍輸送コマンド(AMC)のCarlton Everhart司令官が記者団に対し、 将来のAMCの在り方を考える一環として、必要時に迅速に物資を世界各地に届けるため、宇宙空間に物資を保管して直接提供する方式を関連企業と議論し始めたと語りました。
まだまだ「コンセプト段階」、「infancy stages:0-2歳児段階」の話だと同司令官は強調しているようですが、軍の方から構想や要求事項を先行的に示しておかないと、民間企業の最新技術や柔軟な発想が官僚機構の壁で埋もれてしまう・・・との危機感から表に出して議論しようとの興味深い発想に注目です
Everhart司令官と言えば・・・先日、禁じ手である「幕僚勤務しなくていいよ」操縦者の募集を開始した話題でご紹介したところですが、将来を見据えた取り組みにも目を向けておられるようですのでご紹介します。
3日付米空軍協会web記事によれば
space-based 4.jpg●Everhart大将は記者団に、「もし宇宙空間に物資を事前集積できればどんなに便利だろう。地上で物資輸送の際に必要なものがいらなくなるし、海上を船で輸送することも不必要になる。宇宙空間の保管施設に補給物資を運搬する手段を確保して」と語った
●そして「宇宙に物資を運搬できればそこに人を配置する必要はない。自動で積み下ろし作業などは可能だろう」と説明し、目的は世界各地に可能な限り迅速に物資を運搬するためで、装甲車両から食料水に至るまで宇宙空間で保存可能な期間一杯保管したいとも語った
既に輸送コマンド幹部や司令官自身が打ち上げ企業とのミーティングを開始していると明らかにし、Everhart司令官自身も先週(7月23日の週)SpaceXやVirgin Orbit関係者と面談し、例えば「SpaceX社のBFR super-heavy launch vehicle」 を物資打ち上げに使用したり、関連企業のシステムで必要時に宇宙空間の物資を地上に提供することの可能性を話し合ったと述べた
●同司令官はこの構想の利点について、現在空輸で10時間必要な物資輸送が、宇宙空間からだと30分で可能になると説明した
space aware2.jpg●同大将は今後Blue Origin社幹部とも話し合ってみたいと希望を語り、AMCの将来構想を担当部署の士官も関連企業を訪問する計画だと述べた
●AMCはまた、米空軍宇宙コマンドとも協議を開始しており、相互に交換幹部を差し出して輸送と宇宙の連携要領を深めたいとも語った
関連企業は「Civil Reserve Air Fleet」との位置づけで契約を結ぶことを前提に参画を促し、有事における活躍も期待する方式を考えている模様
●Everhart司令官はまだ計画自体が「infancy stages:よちよち歩き段階」 にあることを強調したが、民間企業の革新的アイディアを国防省官僚機構の壁で埋もれさせることが無きよう、またAMCが空ドメインだけに留まって取り残されないように(become irrelevant)するために必要な取り組みだと説明した
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Everhart4.jpg宇宙空間に大量の重量物を運搬するコストは???・・・と問いたくなる発想ですが、そんなことは承知の上でのEverhart司令官の発想でしょう。
それにしても、宇宙のことを基礎から学ぶ必要性をつくづく感じる次第です・・・数年前からそんなことをつぶやいているような気もしますが・・・
Carlton Everhart大将・・・興味深い人物です。輸送機一筋の経歴で、大佐昇任直後(2003年1月)から横田基地の輸送機部隊指揮官として日本勤務経験があります
米軍輸送関連の記事
「禁じ手:幕僚無し操縦者募集へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28-1
「民間輸送力依存に危機感」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-03
「今後20年の操縦者不足は深刻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29
「タンカー将来計画見直しへ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-22
「渡り鳥に学ぶ輸送機の燃費向上」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-26

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