5日、米空軍情報部長VeraLinn Jamieson空軍中将が軍事関連団体主催のパネル討議に陸海海兵隊の情報部長と共に登壇し、中国とロシアの軍事技術開発投資をよく観察し、それぞれが米国や西側のどの部分で優位に立とうとしているかを見極める必要があると語りました。
同情報部長は、士官任官以降、一貫して情報畑を歩んできた生え抜きインテル幹部として中国とロシアの脅威に関して他の空軍幹部の追随を許さない知見を有し、これまでも多様な視点から中露の脅威を訴えてきています。
ISRアセットの将来計画説明でも、AIを中心に語る際も、また一般的な脅威認識を語るときも、部分的に語ることが多いのですが、つなぎ合わせると米軍の中露への脅威認識に迫れそうなので継続してフォローしています
本日もそんな断片の一つで、過去記事との重複も含まれますがすが、とりあえずご紹介しておきます。末尾の過去記事と共にご覧いただければ幸いです
6日付米空軍協会web記事よりJamieson情報部長は
●中国とロシアが(米国との)大国間競争に備えるために、どのような戦略的投資、技術革新、研究、テスト、開発、評価状況を行っているかに注目しモニターしておく必要がある
●我々がなぜ破壊力や即応体制の強化に取り組んでいるか考える際、中露が何に投資しているか、何をテストし評価しているか、どのような将来技術を重視して評価しているか・・・つまり、どの分野で米国との競争的優位を確保しようとしているかを見極める必要がある
●中国についていえば、長射程ミサイルの制度の飛躍的向上や備蓄量の増加、(周辺地域に緊張を高めている)南シナ海での地対空ミサイルの配備がその一端である
●また、中国の量子コンピューティングと通信(quantum communications and computing)への取り組みや、半導体やAI分野での戦略的投資も注目すべきである
●ロシアについても忘れてはいけない。ロシアがAI戦略を明らかにし、またシリアをMig-31戦闘爆撃機から発射可能な超超音速ミサイル等の「実証実験場」として利用し、大国間紛争での優位分野を確保しようとしており、同様に地対地巡航ミサイル、航空機、指揮統制システムなどなどの実戦テストも行っている
●またロシアは、核戦力、宇宙、長距離にも注力しているが、私の見たところ、ロシアは西側とどんな手法や分野で対峙するか、限られた資金や資源をどの分野に優先して配分するか、どの分野の即応態勢を重視するかを、自らに問い続けている。
●国家安全保障戦略NSSが表現しているように、米国の繁栄と安全保障への脅威となるのは、「revisionist powers」との長期的復活と戦略的競争であり、中国とロシアが他国に対し、経済面、外交面、安保面の決定で拒否権を行使できるような覇権を可能とする世界形成を狙っている事である
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最近やたらと「国家安全保障戦略NSS」を引用したり、持ち出したりする米軍幹部の発言が増えているのですが、なぜでしょうか???
ホワイトハウス取りまとめの文書を引き合いに出すことで、トランプ大統領のご意向に沿った発言ですよ・・・とアピールしているのでしょうか???
まぁ・・・最近話題のBob Woodwardの「Fear」によれば、現在のホワイトハウス内は、ライオンや虎やサメやサソリなどなど危険な動物を放し飼いにしている状態で、争いの「るつぼ」化しているようで、かつ、トランプ自身も自ら発表した方針を理解もしていないし覚えてもいない状態らしいですから、どれほど効果があるのか不明ですが、自己防御にはなるのでしょうか?
Jamieson空軍情報部長が語るシリーズ
「情報ISR将来計画を語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-04-3
「情報部長が中露のAI脅威を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「中国軍とロシア軍を語る」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-06
「RC-135シリーズがピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08-1
「ISR無人機の急増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-21
「無人機要員の削減を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-25
「同部長のご紹介記事」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-02