この時期に米軍幹部であることにお悔やみ申し上げます・・
14日、米空軍副参謀総長のStephen Wilson大将が、米空軍協会主催の朝食会で講演し、空軍長官が9月中旬にぶち上げたばかりの総飛行隊数を25%増やす(386個飛行隊にする)目標をトーンダウンさせ、「必ずしも綿密な分析によるものではない」、「変更がありうる数字だ」、「議会からどのくらい戦力が必要か問われたから」と言い訳しつつ、386個飛行隊との数字を「確固としたものではない」と語りました
Wilson大将を責めるつもりは毛頭ありませんが、空軍長官が9月中旬にぶち上げた後、10月9日にはマティス国防長官が「2019年9月末までに、F-16とF-22とF-35の稼働率を8割にせよ」と指示し、稼働率の低い古い機体を捨てる案が語られるに至り、空軍長官の提案は宙に浮きました
更に10月16日、今度はトランプ大統領が次年度予算を予定より5%カットする(追加で今後5年間はカットしたレベルで維持だとも判明)と命じ、米政府内の意思疎通や事前調整が全くないことが白日の下にさらされ、更に言えば国家安全保障戦略NSSや国家防衛戦略NDSで中露の脅威への対応をぶち上げたはずなのに、早くも大きな国家戦略を放棄したような様相を呈しています
懸命に弁明する空軍副参謀総長は
●空軍長官が9月中旬に表明した「The Force We Need」との386個飛行隊体制を求める報告は、議会からも求められてNDSを満たすための必要戦力をはじき出したものであり、必ずしも詳細な分析に基づくものではない
●また、「The Force We Need」が新たな作戦コンセプトを語るものではない。現状の戦力と国家戦略が想定する事態に必要な戦力差をざっくり見積もったものである
●米空軍は新たな作戦コンセプト作りに取り組んでおり、この結果次第では386個にも影響を与える。(記事内の解説→戦闘機飛行隊数だけを取り上げても、現状55飛行隊が、少し前は70個目標であったが、9月には62個に引き下げられており、1年余りの間に大きな揺れが見られる)
●我々は常に継続的にすべてのプラットフォームと兵器に関する見直しを行うのだ。386個は現状ではベストな数字だが、これは5年以内に実現するようなものではない。絶えず見直しを行う性格のものである
●マティス国防長官から求められている2019年度末(2019年9月末)までに、F-16とF-22とF-35の稼働率を8割にする指示に関しては、整備員不足を埋める努力を行い、予算配分も検討している。資源のシフトを検討しているのだ
●米空軍は議会によって許されることになった調達の柔軟性を十分に活用し、調達の迅速化に取り組み、鈍重で官僚的で問題の多い規則に縛られたリスク回避の現状改善に挑んでいる
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世の中では「ペンス副大統領演説」が新冷戦の幕開けだ・・・と言われていますが、なんの予算的裏付けもない空虚な演説となる気がしていますし、間もなく米中間で「ディール」が行われるような雰囲気が漂っています
苦しい弁明を迫られている米空軍副参謀総長Stephen Wilson大将の立場に思いを致し、混乱を極めている米国防政策と米軍予算の状況のご紹介を試みました
ドタバタ国防政策の典型例
「空軍長官386個飛行隊ぶち上げ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19-1
「国防長官主要戦闘機に8割稼働率指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11
「国防副長官がカットは今後5年と」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-27
「トランプが閣議で次年度予算5%カット指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-2