米国民の安全保障感覚と予算面での大きな変化
今後ますます具体化する諸課題と変化を考える
21日、米軍家族支援団体「Blue Star Families」が主催したwebパネル討議でJohn Hyten統合参謀本部副議長(空軍大将)が、「コロナが米軍に与える影響」とのテーマで基調発言を行い、コロナ危機は大変厳しいが米国の一般社会ほど米軍は影響を受けておらず、過去の様々な激変を乗り越えてきた経験を活かし、米軍はその即応態勢を維持していかなる事態にも対処できると述べましたが、パネリストからは異論が続出しました
もちろんHyten副議長だって「心配ない」とは決して思ってないでしょうし、危機の真っただ中に後援団体の会合で懸念事項を列挙するわけにもいかず仕方ないですが、他のパネリストが上げた懸念事項は決して無視できるものではなく、今後も議論され、また現実化するであろう課題ですのでご紹介しておきます
手短に言うと、国防予算の大幅削減危機、国家防衛戦略が前提とする前方展開態勢の再検討、米国民の安全保障観の激変・・・などです
22日付Military.com記事によれば
●現役のみならず退役米軍兵士家族も支援する「Blue Star Families」が主催した「How will COVID-19 Change the Military?」とのTVパネル討論会で、Hyten副議長はコロナ危機について、「911テロのようなトラウマになりうる事案だし、過去の湾岸戦争や冷戦やベトナムや朝鮮戦争のようでもある」と表現し、米軍の任務はこれを乗り越えて国家防衛戦略NDSがしめす中国やロシア対処に向かって取り組むことだと語った
●そしてその過程で「これまでと異なる移動や業務遂行要領で取り組む必要がある」と語りつつ、「我々が今日直面している、またはするであろう危機にはすべて対応可能な態勢を維持している」、「米国の素晴らしい国民とともに取り組んでいく」と自信をもって述べました
●これに対し退役陸軍中将でSAIS所属のDavid Barno氏は、「今回の危機は大恐慌以上となる可能性のある、現代社会の人類が未経験の破壊的な危機」だと述べ、米国政府が直面する今年から近い将来にかけた大幅な歳入不足により、国防予算は強い削減圧力にさらされると厳しい認識を語った
●またBarno氏は、国家防衛戦略NDSが前方展開戦力を基本としていることを問題視し、コロナが前方展開戦力を無視するように米国に来襲したように、今後はサイバーや宇宙ドメインからの脅威が飛躍的に大きな脅威で優先度が高くなるとし、従来の陸海空軍の役割や重要性は低下すると主張した
●同じくJohns HopkinsのNora Bensahel女史は、2つの大きなインパクトがあると主張し、まず、米国民の安全保障意識が極端に内向きになり、経済苦境と重なって、日々の生活や健康にかかわる内からの脅威重視に変わり中国らロシアの脅威に対し関心が薄れ、「国防省の施策が国民の安全意識から遠のき、関係ないものとみなされる恐れがある」と述べた
●2点目として、Barno氏と同じく厳しい財政運営を上げ、国防費は確実に縮小の方向に向い、その額は相当に大きくなると述べ、「経済危機は財政制約を極めて大きくし、国防費は今後数年にわたり大きく縮小を余儀なくされるだろう」と表現した
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「サイバーや宇宙ドメインの重要性」はコロナで始まったことではありませんが、今後の厳しい財政運営と国防費大幅削減の中でも、サイバーと宇宙は大事にしろとのメッセージと受け止めました
米国民の安全保障意識は、コロナを契機として激化するであろう米中や中国と西側社会の対立の中でも、内向きになるだろうとの指摘です。これほどまでにコロナの被害を大きくしている一つの要因である米国や欧州社会内部の格差や、社会の分断といった現状は、外敵よりも身近な生活のための敵との戦いを強いることになるのでしょう・・・
日本への影響はどうなるのでしょうか・・・。見るに堪えない小学生のいじめのようなマスゴミの偏向報道からは、大事なことが見えてきません。今こそ自らの情報収集能力と判断力が試されるときということでしょうか?
既に火花を散らし始めた軍種間の予算争い
「軍種間の重複をなくせ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「遠方攻撃は誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「米海軍が軍種予算シェア見直し要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-16