空母トルーマンを25年も早期退役させる案で紛糾

Truman.jpg3月14日、今年になって国防省が打ち出している空母トルーマンを耐用年数より25年以上も早く2020年代中旬で早期退役させ、その代わりにFord級空母2隻分の将来建造費をひねり出すとの案について、Shanahan臨時国防長官が上院軍事委員会で質疑に対応しました
端的に言うと、この国防省提案に賛成の議員はいません。大反対か極めて懐疑的な議員が多数で、あまりにも前例のない案なので唖然としているのが残りの議員といった感じでしょうか?
まんぐーすも細かな国防省の皮算用が理解できていないのですが、 同空母の維持費と運用期間中間時点に迎える大規模修理と燃料交換作業経費を考え、更にひっ迫している海軍艦艇用の造船所の労働者の有効活用を考えれば、「future systems」であるFord級建造推進する方が良いとの説明の様です
しかし14日の臨時国防長官の証言を契機に国防省主張の検証が開始され、つじつまが合わない点や、統合参謀本部や米海軍内の必要戦力見積もりがまだ検討途中であることなどが次々明らかになり、ますます国防長官の立場が悪化しているようです
もちろんShanahan臨時長官の個人的な思い入れで打ち出した案ではないでしょうが、「臨時でない本物の国防長官が存在しない期間」の最長記録(過去最高は2か月も、今回4か月を超え記録更新中)となる中、評判の芳しくない臨時長官のいばらの道はまだまだ続きそうです
14日付米海軍協会web記事によれば
Truman2.jpg●臨時国防長官は、この決断は旧来兵器と将来システムへの投資のトレードオフを行うものだと説明し、空母トルーマンを早期引退させる代わりに、新型であるFord級空母2隻の購入費を将来ねん出するものだと述べた
そしてその理由として同長官はまず、空母トルーマンの燃料交換を伴う大修理を行わずに経費を浮かし、新型空母を2隻確保して戦闘能力を増強することを挙げた
●更に長官は、この新旧戦力のトレードオフにより、2020年代半ばまで空母11隻体制を維持し、なお海軍用造船所での雇用を維持または増やすことが出来ると説明した
●そして3つ目の理由として、空母トルーマンの早期退役により今後5年間で約3800億円が削減でき、新型空母建造費用が約4400億円削減可能になるとも説明した
●そして臨時長官は、複雑で多様な業務のスケジューリングが必要な燃料交換オーバーホールをキャンセルすることで、限られた造船所の従業員を柔軟に新型空母建造や潜水艦建造に割りえてることが出来ると利点を主張した
●これに対してヒロノ上院議員は、「当該造船所の関係者と話をしたが、国防省の説明と食い違いがある」とと述べたが、具体的にどこの誰から聞いた意見かについては言及しなかった
●同議員から「同空母に燃料補給すべきではないか」と意見を求められたDunford統合参謀本部議長は、「軍事的な視点だけから見れば燃料補給が望ましいとは思うが、国防長官や大統領の立場からすれば、より広い視野からの判断がある」と答えている
●また3月13日に米海軍トップのリチャードソン大将、「Ford級空母の調達価格低減と空母トルーマンの早期退役は別の話であり、関連付けて語るべきではない」、「空母トルーマンの早期退役は、今我々が議論検討している逃したくない最新技術関連の新装備調達と関連している」と表現している
●別の視点で、空母を一隻早期退役しようと計画している中、搭載する艦載機飛行隊数の削減等については何も議論されておらず、この辺りも議会は関心を持って確認する方向である
Truman3.jpg同委員会後の各議員の意見は厳しかった米海軍OBである議員は「50年使用する予定で投資してきた空母を、25年で退役させること自体が大きな損失であり、燃料補給修理費がセーブできるとの理屈は破たんしている」と訴え、
●更に別の議員は、「空母トルーマンの燃料交換修理を実施しなかったら、次に同修理を行う空母ステニスやレーガンまでの期間で必要な技術や人材が喪失する」と述べ、臨時国防長官の主張を否定した
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もう少し国防省側の主張や空母戦力の維持計画をよく確認する必要がありますが紛糾間違いなしの案件です。
新しいフォード級空母がニミッツ級の2倍近い価格である点が背景にありますが、それよりも気になるのが、臨時国防長官と、軍人である統合参謀本部議長や海軍作戦部長の発言ぶりの差です。
特にダンフォード議長の「国防長官や大統領は、より広い視野で判断している」との発言は、軍人としては納得できないと言っているのと同じです。リチャードソン海軍大将の発言も、臨時長官の説明ぶりを支える気が全くないように感じられます。
このまとまりのなさ・・・本当に心配です
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