他に成り手がないとの声も聞かれますが・・・
9日、ホワイトハウス報道官は、今年1月1日から空席となっている国防長官の候補に、現在の臨時長官(同じく1月1日から)で前副長官であるPatrick Shanahan氏をトランプ大統領が推挙したと発表しました。
これまで国防長官の空席最長期間は2か月間で、今回はそれをはるかに上回る5か月目に入っていますが、当初は「生意気」とか「軍需産業出身できな臭い」とか「対外政策の素人」とかで評判の良くなかった同氏も、これまでの臨時長官としての仕事ぶりで安定感を見せ、強い支持ではないものの、議会承認は問題なかろうとの雰囲気の様です
本日は信頼するDefense-NewsのAaron Mehta副編集長監修の関連記事から、 Shanahan氏の国防政策への姿勢やトランプ大統領との接し方などについてご紹介します
9日付Defense-News記事によれば
●現在56歳である Shanahan氏は、数十年に渡りボーイング社で勤務したのち、2017年4月から国防副長官に就任し、Mattis国防長官の下で国防省内の改革の仕切りや国内政策を担ってきた
●今回の長官への推挙は、同氏がボーイング社関連の装備品導入に臨時長官として関与したのではとの疑惑に関し、国防省監察官が「シロ」判定した数日後の9日に行われた
●民主党側が大統領選挙を見据えた戦略で、この推挙に異論をはさむ余地がないわけではないが、上院軍事委員会も「熱狂的ではない」ものの、承認に大きな反対はないものとみられる
●Shanahan氏は臨時長官就任当初から、Mattis長官の路線を引き継ぐと明言しており、特に国家防衛戦略NDSが示す、対テロから本格紛争への備えへの移行を強く主張し、国防省の高官も Shanahan氏の長官就任で大きな変化はないと語っている
●そして Shanahan氏が特に明確にしているのは、何にもまして、第一優先が対中国である点である。国防省高官は「毎日毎週、中国を忘れるな、NDSが中国を重視していることを忘れるな」と Shanahan氏が強調していると語っている
●一方、 Shanahan氏を支持する人でも、彼が対外政策のエキスパートでないことを認めている。国防長官の主要業務は諸外国とかかわることでもあるが、従来の国防長官に比して、内政に焦点が当たるのは避けられないとみられている
●例えば、トランプ大統領肝いりの「宇宙軍創設」に積極的に関与していくだろう。臨時長官としての現在も、国防省改革や宇宙軍創設について語るときは、より話しやすそうにしていた
●立ち向かうべき国防上の課題はMattis長官時代と変わることはほとんどないが、ホワイトハウスとの関係や接し方については、Mattis長官とは異なったものになろう
●Mattis長官時代には、トランスジェンダー兵士の扱い、メキシコ国境の壁や警備問題、韓国との軍事演習中止など、大統領が迅速な実行を求める問題があったが、持ち帰って検討すると返答し、Mattis長官らが如何に対応するかの協議をしていること自体が大統領の反感を買っていたことをShanahan氏は学んでいる
●そこでShanahan臨時長官は、まず大統領に「YES」と答え、大統領の意図を理解したものとして持ち帰り、後に具体的な遂行オプションや臨時長官の代替案などを大統領に報告するスタイルを取っている。
●言い換えれば、「了解しましたボス。我々は指示を実行します」とまず対応し、しかし後に「より良い、ベストな方法を考えてきました」と切り替えして持ち出す方式である
●具体的にこの手法が功を奏したと言われているのは、大統領がシリア撤退を持ち出した際の国防省の対応と、アフガン対応に関する大統領との調整の場面である
●メディアとの関係では、Shanahan氏はMattis長官と同様に、積極的にメディアやカメラを活用しようとのタイプではないが、Shanahan氏はカメラの前でのブリーフィングを報道陣とは約束しており、新しいメディア担当官を指名している
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実際に上院軍事委員会で、承認が順調に進むかは保障できません。Aaron Mehta副編集長を信じたいところですが・・・
少なくとも2月の段階では、 上院軍事委員長のJim Inhofe議員(共和党)が記者団に、臨時長官にはマティス氏のような「謙虚さ」が欠けていると述べ、更に、臨時長官はあくまで臨時であり、国防省全体の業務をかじ取りする力を供えていないのだから、政権は正規の国防長官を任命することになると明言していました。
また共和党有力上院議員のLindsey Graham氏は、臨時長官からの中東情勢ブリーフィングを受けた後、「臨時長官は私の信頼を失った」と関係者に語り、臨時長官に対しても直接「敵対勢力として行動せざるをえない」と言い放っています・・・。どうなることやら
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「臨時長官への不満高まる」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-23
「有力次期長官候補が辞任」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09
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「副長官候補にボーイング重役」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-17