F-35艦載できない新型米空母に議会が待ったを

中国空母が沖宮海峡を抜け、太平洋に進出する中で・・・
経費上限規制を受け必要な機能まで未装備
後付け改修頼りで総コストアップの本末転倒
Ford-Class-Carrier.jpg3日、下院軍事委員会の2020年度予算関連小委員会は2019年末に進水予定のフォード級新型空母の2番艦(John F. Kennedy CVN-79)に、F-35C型(空母用)を搭載する能力が未装備であること問題視し、同能力を装備するまで同空母を米海軍に引き渡すべきではないと指示を、2020年度予算案文に入れることを明らかにしました
本件を報ずる3日付米海軍協会web記事を読みはじめ、「最新空母が米海軍のF-35を搭載運用できない?はぁ???」・・・と目が覚めてしまいましたが、その背景・実態は以下の通りです
国防装備の価格高騰の悪い流れそのままに、最新型フォード級空母の1番艦空母フォードは、従来のニミッツ級の約2倍近い価格の1兆4000億円となったため、米議会は1番艦の反省を生かして2番艦ケネディーの価格上限を1兆2000億円に設定しました。
f35c.jpgしかし1番艦の経験を生かしても2000億円もの建造費削減はできず、結果として米海軍は、一部装備品の搭載を後送りして経費枠に収めて建造する道を選びました。
しかしその結果としてF-35C型の搭載に必要な装備等が除外され、「後付け」する計画となり、後付け経費は当初から組み込む手法に比して高価になるという「本末転倒」を絵にかいた状態なっているようです
米海軍は最初から議会と喧嘩するつもりだったのかなぁ・・と考えたり、議会も今頃になって状況に気が付くなんて・・・等々、いろんな疑問が頭の中を飛び回りますが、こんなことが本当に発生しているのが米軍装備品調達の現場だということです。
3日付米海軍協会web記事によれば
●3日、下院の同小委員会のスタッフは記者ブリーフィングで、このままではF-35搭載装備のない空母ケネディーが2019年末に進水ことになるため、米海軍に対し同装備なしでの同空母受領を禁ずる指示を2020年度予算関連の予算文書に含めると明らかにした
Ford Class CV.jpg●同議会スタッフによれば、議会が示していた同空母の予算枠に収めるため、米海軍はいくつもの重要装備を未装備の空母をとりあえず受け取り、後の定期修理等のタイミングに追加でそれら装備をより大きな経費を負担して追加するつもりらしく、追加時期も装備によっては空母寿命の後半までづれコム見込みとなっている
●更に同スタッフは、「最新型のフォード級空母が、米海軍の最新鋭航空アセットを搭載できない状態で海軍に提供されることなど、議会として到底受け入れ難い」、「目先の予算枠に収めることにより、後に大きな経費を発生させるやり方は、細かな価格低減努力をすべて無にする行為だ」と述べた
●ちなみに、予算枠の関係で海軍受領時に未搭載となる重要装備はF-35関連に止まらず、例えば弾薬や兵器を上甲板まで持ち上げる11台のエレベータは、2台のみが当初から活用可能な状態になる模様
幾つかの重要な装備は、進水後に船体の強度を確認する「shakedown」試験の後のPAS期間に搭載を検討されているらしいが、このためPAS期間が数か月遅延することが予期されている
●米海軍省調達担当官は、「来年10月に予定されている演習で、必要な機能を訓練できるよう、必要兵器エレベータを装備する」と5月末に語っていた
●ちなみに、フォード級空母の3番艦と4番艦は、固定経費契約で建造されるため、このような主要装備後回し事態は発生しない事になっている(つもり)
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F-35C Landing2.jpg議会側が当初予算枠の縛りを無効にして米海軍に主要装備搭載を行わせるのか、それでも枠内でやれというのか不明ですが、とりあえず2番艦である空母ケネディーに限ったゴタゴタであってほしいものです
しかし根本的な問題として、次世代の空母・SSBN・F-35・B-21などなどの装備が、現在の各軍腫計画で取得可能な予算がないことは明白で、調達ペースを遅らせるか、数量を削減するかの選択肢しか残されていません
しかしこの件はでたらめの象徴ですねぇ・・・・
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