エスパー長官「looking at how we expand our basing locations, investing more time and resources into certain regions we haven’t been to in the past」
27日、米海軍大学で学生である少佐から大佐クラスを前に講演したエスパー国防長官が、細部について言及せず冒頭でご紹介した表現で、アジア太平洋の過去進出していない地域での新たな基地設置を検討していると語り、講演を取材したメディアが様々に憶測する事態となっています
学生たちがそのキャリアの大半で従事してきた対テロ作戦から頭を切り替え、大国間の競争・紛争に備えなければならないとの話の流れで、中国の脅威が著しいアジアインド太平洋地域を「我々の優先地域」と表現した後の言及で、話の流れとしては自然です
ただし、少なくともオバマ政権時代には、「作戦面では打たれ強く、地理的には分散し、政治的に維持可能な」米軍体制をアジア太平洋地域で追求するとし、政治的・財政的な負担を避けるため新たな軍事拠点を設けず、ローテーション派遣で対応するとの方針で、豪州北部に地上部隊をローテーション派遣したり、爆撃機のローテーション派遣を継続するにとどまっていましたので、大きな変化です。
ちなみに、他にもローテーション派遣先をフィリピンやタイやベトナムインドネシアでも追求したようですが、順調には進まなかったと認識しています
この件に関しては今年2月12日に、Davidson太平洋軍司令官も上院軍事委員会で、同様の方向を示唆していましたが、その状況は末尾に添付するとして、とりあえず本件を報じるDefense-News記事をご紹介しておきます
27日付Defense-News記事によれば
●エスパー長官は米海軍大学で、アジア太平洋地域を「our priority theater」と語り、また国防省として引き続き大国間の競争(great power competition)時代にシフトしていくと表現した
●また「君たちの多くは、その軍キャリアの大半を不正規戦と係わってきたが、時代は変化した」とも表現して学生たちの頭の切り替えを促した
●特に太平洋地域において長官は、「アジア太平洋の同盟国等は米国がリードすることを望んでいるが、そのためには当該地域でプレゼンスを示す必要がある」、「当該地域のすべてでは無理だが、鍵となる場所には所在する必要がある」と述べ
●更に「このために、我々の基地配備地の拡大を検討しており、過去に所在しなかった特定の地域に資源と時間を投入しようとしている」と表現し、それ以上は言及しなかった。
●この国防長官発言に関し、ハドソン研究のPatrick Cronin氏は幾つかの可能性をあげ、「シンガポールとフィリピンは古くからの同盟国として対象である可能性があり、タイのウタパオ海軍航空基地の可能性にも言及した
●またCronin氏は、来年ベトナムとの国交正常化25周年を祝うことから、米国として演習や艦艇訪問の拡大につなげたいところだとコメントしている。更にマレーシアやインドネシアでは、公にはなっていないアクセスに関する枠組みが設けられているとも表現した。
●ミクロネシアや北マリアナに米国防省は従来あまり注目してこなかったが、これら島々から中国の影響力を排除を追求する可能性がある。パプアニューギニアでは現在、米豪が協力して海軍基地を構築しつつあるとCronin氏は述べた
●元太平洋軍特別補佐官でCNASのEric Sayers氏は、米空軍機が排他的に利用できるよう簡単な合意が結ばれているヤップやパラオも、重要な地理的場所にあるとコメントした
●そして同氏は、米軍の拠点を増やすことで中国軍の作戦計画を複雑に困難にし、一つの大きな拠点に依存することを避けることが出来、更にフィリピンのように彼らが巻き込まれた事態でのみアクセスが可能と予期される政治的リスクのある国への過度な依存を防ぐことが出来ると利点を述べた
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この件については、今年2月12日にDavidson太平洋軍司令官も上院軍事委員会で同様の方向を示唆し、
●「ここ最近数年のことでなく、数十年間にわたり、太平洋軍の基地や展開先は北東アジア地域に置かれてきた。しかし地域情勢の急激な変化に対応するためどこを拠点に作戦するか、どこに兵力をローテーション派遣するかの再検討を求められている」と述べ、
●対中国を見据え、新たな兵力前進配備場所や物資集積場所を検討しており、地域の同盟国や友好国と協議していると証言しています
Davidson太平洋軍司令官の上院証言の流れで、その際米軍事メディアは以下のような様々な専門家の意見を紹介していました
●インドネシア、パプアニューギニア、ミクロネシアなどに間もなく戦力が展開されるだろう
●中国が米国と対等な競争者として台頭する中、アジアインド太平洋地域には新たな考え方が生まれており、北東アジアだけでなく、南東アジアからインド洋も含めた展開地域拡大検討が迫られている
●特にグアムとパプアニューギニアをつなぐミクロネシアの島々で、危機に際しての「staging ground」としての利用を視野に置いている
●パプアニューギニアのManus Islandに中国が海軍基地を建設しようと試みたが、ペンス副大統領がパプアニューギニアの島々の主権と海洋権益を守るため、豪州と協力すると表明している
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米国第一主義で、アジア太平洋地域の安全保障に関心の低そうなトランプ大統領の下で米中摩擦が過熱する中、過去に実績のない場所で米軍拠点を引き受ける国があるのでしょうか?
中国の進出を脅威に感じるパプアニューギニアやミクロネシアなどの南方の島々のことをイメージしているのでしょうか? 今後の動きに注目したいと思います
太平洋軍司令官の上院証言(2月)
「太平洋軍が兵力分散検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
太平洋軍の動き
「太平洋軍司令官が議会にお願い事項」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29
「太平洋空軍が飛行部隊の分散演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-27
A2AD中国軍事力関連の記事
「空母キラーDF-26の発射映像」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-31
「射程1800㎞の砲を米陸軍に」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「DIAが中国軍事力レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-17
「H-20初飛行間近?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-13
「イメージ映像:中国軍島嶼占領」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「驚異の対艦ミサイルYJ-18」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30
米空軍の西太平洋対策
「担当空軍司令官がACEを語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09
沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1
「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12