貨物や乗客を乗せるな指示発令
貨物を止めるロックが飛行中に解除事案が続出
11日付Defense-=News等複数の軍事メディアが、数々の不具合で試験や本格運用開始が2年以上遅れている米空軍の次期空中給油機KC-46に、新たな最高レベル(Category 1)の不具合が発覚し、「同機に貨物や乗客を乗せるな」指示が出たと報じています
ちなみにKC-46Aは空中給油機ですが、空いたスペースは貨物や人員の輸送に活用できるようになっています
米空軍は現在までに18機を受領していますが、現時点でも3つの最高ランク不具合を抱える状態の機体でIOT&E(initial operational test and evaluation)の準備試験を継続中です。
ちなみに、3つの重大不具合の解決には数年必要と言われており、最高レベル(Category 1)の不具合を抱えたまま、なし崩し的に運用を開始するイメージで事が進んでいる状態にあります
今年に入ってからも、機体組み立て作業時に「残置」された部品や工具や布や包装紙などが機体内部から次々見つかり、米空軍が3月と4月に2回も「機体引き取り拒否」しましたが、一向に「機内放置異物」がなくなる気配はなく、また試験を進める必要から全機体の完全チャックには時間がかかると空軍も妥協せざるを得ない状況です。
このように、ボーイングへの米空軍の不信感は高まるばかりの中、新たに「Category 1」不具合が確認されたことで、再び試験に遅れが出る恐れが囁かれ始めました。日本も購入する重要な空中給油機ですので、フォローしておきます
11日付Defense-=News記事によれば
●今秋から開始される予定のIOT&E(initial operational test and evaluation)に先立つ諸確認のため、海外運航試験を行っていた1機のKC-46Aで、搭載貨物を飛行中に動かないよう固定する拘束装置のロックが、飛行中に解除されアンロック状態になる不具合が複数個所で確認された
●これを重大な不具合事項と判断した米空軍は、「Category 1」レベルの不具合と評価し、KC-46Aの貨物室に貨物や人員を搭載して輸送することを禁止するとの指示を発出した
●搭載貨物拘束装置がアンロック状態になったケースでも、当該貨物のすべてのロックが解除されたわけではなく、複数の一部のロックが解除されただけで実際に貨物が機内を移動したりするには至らなかったが、飛行前の貨物搭載作業時に複数の搭乗員で貨物固定作業とロック状態確認を行ったにもかかわらず、複数のロックが解除状態になる事象が確認されたことから重大事象と評価された
●このようなアンロック事例が確認されたのは当該機1機のみで、他のKC-46Aではこれまで確認されていないが、仮にロック解除で飛行中に貨物や人員座席が機内を動くようなことになれば、人員のけがや機体の損傷、更に機体重量バランスの急激な変化で飛行自体が危険にさらされる恐れがある
●米空軍輸送コマンド報道官は「ボーイング社と協力しつつ原因究明と対策に取り組んでいるが、問題解決まで、我々は乗員と機体の安全を冒すことはできない」と述べ、貨物や人員の輸送禁止指示を説明した
●また「問題が発生した複数の区間のフライトで、搭乗員は完全に拘束装置を貨物にセットし、ロックして十分に確認行為を行ったことが確認されており、にもかかわらず飛行中にアンロック状態に複数の装置がなったことを重大視している」とも説明した
●米空軍は、当該アンロック事象は当該機体のみで確認された事象だが、他の機体でこの問題が発生する可能性を否定できないとして、KC-46A全機への指示を出すことにした
●同報道官は、「KC-46Aは空中給油と共に、患者空輸と空中での治療を行うaeromedical evacuation任務を担っており、患者は輸送用の担架やベッドが安心して固定できないと、求められる任務を果たせない」とも表現した
●ボーイング社は本問題の発生を認め、「米空軍と協力しつつ、本事象の根本原因を究明している。搭乗員と機体の安全は最優先事項であり、原因が究明されたなら、直ちに対策を実行する」と声明を発表している
現在残っている他の3つの「Category 1」不具合
●給油ブーム操作員が、給油ブームの操作や相手機の状態を確認する映像表示システム(RVS)に、太陽の方向など特定の条件下で、操作員に誤解を与えたり操作を誤る可能性がある。ボーイングは包括的なハードとソフト両面での改修に同意しているが、米空軍は問題解決に3-4年は必要だろうとみている
●上記RVSの不具合から、給油用ブームで相手機の機体表面に「ひっかき傷」を生じさせるケースが多数発生し、特にステルス機のステルス塗装への影響が問題となっている
●米空軍が後出しで要求事項に加えたものでボーイングの責任ではないが、A-10に給油ブームを差し込む勢いが不足していることから、約600億円を追加投資してブームにアクチュエーターを追加する
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今年5月の記事で、米空軍以外に日本しか買い手がいないKC-46の海外売込みにボーイングが必死だとご紹介しましたが、再びの逆風ということでしょうか・・・
しばし様子見ですが、航空自衛隊の皆様もご注意ください。不断開けない翼の中とか、機内の空間とか・・・日本にとって空中給油機は重要ですから
KC-46関連の記事
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「7機種目の対象機を認定」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-08-3
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1