5か月経過も米空軍の先進集中開発項目未定

4月発表の「新科学技術戦略」で決めたのに
空軍研究所組織横断で取り組むと決めたのに
Bunch.jpg9月16日、米空軍研究所AFRLを所掌する米空軍Materiel Command司令官Arnold Bunch大将にDefense-Newsが独占インタビューを行い今年4月に鳴り物入りで発表された米空軍の「new science and technology strategy:新科学技術戦略」の進捗状況について質問し、同戦略の柱の一つである「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム(vanguard programs)」が未だ定まっていないと明らかにしています
この「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム(vanguard programs)」は、米空軍研究所AFRLの資源配分を再整理し、2割のAFRL資源を投入し、AFRLの知恵を組織横断的に通出して短期間に成果を得ようとする試みです
4月の発表された米空軍の「新科学技術戦略」では、以下の5つの「革新的:transformational」成長をもたらす分野を示し、空軍として注力することを明らかにしています
autonomy;
next-generation weapons like hypersonics and directed energy;
resilient information sharing;
distributed sensing;
machine learning that can speed up decision-making
vanguard.jpgですから、「vanguard programs」も5つのエリアに関連する具体的な研究開発項目を絞って取り組むはずですが、5か月経過しても音無で、更にBunch大将は「決定を急がない」ともインタビューで述べています
最近の米空軍幹部の各種発言から想像すると、予算不足が明確になり、空軍参謀総長が中心となって資源配分優先順位議論を行っている最中で、その結論が出るまで研究開発の優先順位を決められない状態になっていると考えられますが、とりあえずBunch大将の話をご紹介しておきます
26日付Defense-News記事によれば
●4月に公表された「新科学技術戦略」では、米空軍研究所AFRLの資源を再構築し、AFRLの2割勢力を複数の「vanguard programs」に投入し、AFRLの英知を「飛躍が予期される技術分野」に持ち寄り、迅速なプロトタイプや実験により推進することを求めている
Bunch2.jpgしかし5か月間経過した現在でも、米空軍として「先進的で前衛的な道を切り開く新しい研究開発プログラム:vanguard programs」を決められずにいる
●しかし、AFRLを配下に置くArnold Bunch米空軍Materiel Command司令官は、「何月何日までにvanguard programsを決定する、といったやり方では進めない」、「急いではいない」と述べ、AFRLはどの様にvanguardを選定して管理すて行くかを引き続き検討していると説明するにとどめた
●現在AFRLは、研究分野ごとに7つの部門に分かれているが、「vanguard programs」が縦割りでない組織横断的な英知結集を狙っていることから、新たにvanguard用の「program office」を設けて、各既存部門からの情報や協力を柔軟に得られるような役割を持たせることも検討していると、同司令官は述べた
vanguard3.jpg●また同司令官は、vanguard用の「program office」に米空軍の調達専門要員を配置し、研究開発初期段階から装備化に向けた成熟を支援する体制を整えることも検討していると説明した
●更に同大将は、このような特別な「program office」設置により、AFRL内の競争を促進することにつなげ、技術革新を刺激したいとも述べた。「我々は敵対国と競争しているが、同時にAFRL内でも競い合ってほしい。進歩を示し、新たな地点に到達しなければならない。前線兵士のニーズに焦点を当て、結果を出さなければならない。そうでなければ、米空軍の資源は他に配分されてしまう」とも表現した
/////////////////////////////////////////////////////////
Bunch司令官が最後に「結果を残さなければ、資源が他に配分されてしまう」と危機感を述べていますが、先日は戦闘機族のボスであるACC司令官Holmes大将も同様の危機感を述べ、米議会スタッフに次世代制空システムへの予算配分の重要性を説明に回っていると説明していたところです
米空軍は主要装備の更新時期を一度に迎えています
F-35、B-21、KC-46、次期練習機(T-38後継のT-7)、次期ICBMなどの調達や研究開発の波が2020年代に押し寄せ、良く見てもわずかな伸びしか期待できない国防予算に収まりきらないことは火を見るより明らかです
米海軍も次期空母フォード級や次期戦略原潜SSBNの導入が同時期に進むことから、なおかつ価格が2倍に跳ね上がっていることから、国防省全体で優先順位の議論が求められています。
Esper3.jpgこんな話は10年前から言われていたことですが、今の今まで放置されてきました。エスパー国防長官は「夜の集中検討会:Night Court」を開催して結論を得る覚悟ですし、各軍種も2021年度予算案をまとめる年末に向け、ぎりぎりの選択を迫られているのでしょう
米国防省と米軍は優先順位の決断を迫られている
「エスポー長官無駄計画削減の決意」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-31
「ACC司令官が制空投資削減を危惧」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-21
「PCA価格はF-35の3倍?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20 
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

タイトルとURLをコピーしました