対中国の空軍基地防衛に消極的な米陸軍に苛立ち
「国防省は人と資源を空軍に与えるべき」「空軍は喜んで」と
空軍長官と参謀総長がキャンペーン開始か
11月1日、Kendall空軍長官が講演し、中国が太平洋地域の米空軍基地攻撃用に大量の長距離精密誘導ミサイルを蓄える中、我々は空軍基地防衛を今すぐ強化する必要があり、この任務は1948年の協定(Key West agreements)で陸軍が主担当になっているが、(陸軍の動きが鈍いため、)国防省は空軍に同防衛任務遂行可能な人や資源を提供すべきだし、空軍は同任務を引き受けることに躊躇はないと述べました
具体的にKendall長官は、「迅速に取り組まねばならない課題が一つある。敵の脅威が急増している基地攻撃への対処が急務で、陸軍の仲間と取り組んできたが、空軍はこれを加速させたい」、「率直に述べるなら、必要な人的資源や資金等が利用可能になれば、空軍が空軍基地防衛任務を喜んで引き受ける(be comfortable with)」と表現しています
米空軍は敵攻撃能力の増強に対応するため、部隊を小規模単位に分割し、施設等が不十分であって小規模戦力を機敏に移動させ中国が攻撃すべき目標数を増やして混乱させ、米空軍戦力が決定的な打撃を受ける可能性を減らす運用構想(ACE構想)に全軍で取り組んでいますが、
米陸軍はこれに答えるような基地防衛力強化努力が不十分で、パトリオットPAC-3やTHAAD部隊の増強に消極的な一方で、逆に効果が限定的と空軍が指摘する極超音速兵器開発に陸軍が重点投資し、空軍が担ってきた長距離攻撃分野に「侵入」する動きを見せて空軍をいら立たせてきたところです。
もちろん、基地防衛のためのレーザー兵器や指向性エネルギー兵器(directed energy weapons)の実験を、それなりに連携しつつ陸空軍を含め米国防省全体で取り組んではいるものの、米空軍は米空軍独自に予算等を獲得して前進したいとのアピールを開始した模様で、
上記のKendall長官講演の前日には、Allvin空軍参謀総長も有力シンクタンクAEIで講演し、「中国のミサイル同時攻撃を受けた際に、装備や人員を守って生き残りつつ、状況把握を絶やさず、指揮統制用の接続性を失わないためには、強化シェルターやカモフラージュ、隠蔽、欺瞞対策のほか、強靭な情報&指揮統制システムや、何よりも強固な防御兵器が不可欠だ」と訴えています
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統合での作戦運用が常態となり、統合ポストでの勤務経験が各軍種での立身出世に不可欠なピースとして確立された米軍にあっても、各軍種の生き残りをかけた人と組織と予算を巡る「せめぎあい」は、何ら変わりなく脈々と受け継がれているようです。
中国経済の崩壊が、中国共産党体制の崩壊へと繋がりそうな時勢ではありますが、世界の軍の先頭を行く米軍には、中国の脅威を生かして「一皮むけて」いただきたいと思います
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「海兵隊はStand-Inか」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「米陸軍は遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦兵器を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06