北東部の豊かなメリーランド州軍が飛行任務無しに
近傍NSAやサイバー軍や空軍ISR航空団と連携支援
24年後半からのA-10退役開始に伴い
3月7日米空軍は、米本土北東部に位置するメリーランド州の州空軍そのものであるA-10攻撃機を運用するWarfield州軍基地の第175航空団が、2024年後半から始まるA-10退役に伴い、部隊改編に伴う環境影響調査が終了する2025年秋頃を待って、第175サイバー航空団に改編されると発表しました。改編が完了すれば、米国の各州に設置されている州空軍で、航空機を保有しない初めての州空軍がメリーランド州に誕生します
メリーランド州は、特別行政区であるワシントンDCが実質的に位置し、最大の都市はボルティモアで、州都は海軍士官学校のあるアナポリスとなっており、面積は51州の中で42番目と小さいながら、人口密度は5番目の高さで、世帯当たりの収入は全州の中で最も高い「豊かな州」です
この決定は今年1月には同州に伝えられ、今回の発表は対外的な公式発表ですが、Kendall空軍長官が2023年5月に議会で、「A-10退役に伴い、可能なら他の航空機任務を当該基地には担ってもらうが、米空軍には、例えば電子戦やサイバー戦やISR任務など今後ますます重要性を増す拡大中の任務があり、一般には航空機が無くなる基地では、それら任務を含めた長期的視点での任務アサインが検討されることになる」と説明しており、航空機からEW/サイバー/ISR強化への流れに沿った大きな流れの一つと捉えられます
メリーランド州の特殊性としては、同州内にはNSA(National Security Agency)や米サイバーコマンド司令部や米空軍第70ISR航空団が所在する「電子戦・サーバー戦・ISR任務のメッカ」であるFort Meade陸軍基地がWarfield州空軍基地から僅か35マイルの近傍に所在し、ますます拡大する関連業務を行う場所に適しており、更に2016年には同州空軍基地内に「Cyberspace Operations Group」が創設され、「A-10から電子戦・サーバー戦・ISR任務へ」の素地ができている点があります
もちろん地元メリーランド州知事は「同州空軍基地でサイバー任務が拡大されることは喜ばしいことだが、飛行任務の喪失は残念であり、国家安全保障及び飛行任務関連兵士やその家族の将来への不安、更に地元雇用喪失の観点から、地元選出議員や連邦政府関係者と協力し、米政府や議会に対し、異なる飛行部隊の配備を要請していく」と訴え、Warfield基地幹部も飛行部隊誘致を働き掛けていくと、(一応は地元有力者と足並みをそろえて)語っています
「電子戦・サーバー戦・ISR任務のメッカ」であるFort Meade基地に近いからとか、全米で最も豊かな州の州空軍だから地元経済への影響も限定的で反対勢力は弱いとか、色々背景的な理由はありますが、「空を飛ぶ」だけが最重要な任務ではなくなってきているのが米空軍の実態であり、このような変化を端的に示す象徴的な出来事として「航空機ゼロ州軍誕生」発表報道をご紹介いたしました
サイバー関連の記事
「米大統領選挙で米サイバー軍が20回以上作戦」→https://holylandtokyo.com/2021/04/01/96/
「過去最大のサイバー演習」→https://holylandtokyo.com/2020/06/24/630/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holylandtokyo.com/2020/03/11/779/
「サイバーとISR部隊統合で大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「初代格上げ司令官は日系3世」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
航空機ゼロ州軍誕生へ:A-10からサイバー専従州軍へ
世界の安保・軍事情報を伝えたい ブログ「東京の郊外より」支援の会
米国を中心とした世界の軍事メディアが報じている、世界の標準的な安全保障情報や軍事情報をご紹介するブログ「東京の郊外より・・・」を支援するファンクラブです。ご支援お願いいたします。
ブログサポーターご紹介ページ
お支援下さっている皆様、ありがとうございます! そのお気持ちで元気100倍です!!! ●赤ちょうちんサポーターの皆様(3000円/月) ●ランチサポーターの皆様(1000円/月) mecha_mecha様 kenj0126様 ●カフェサポー...