ロンドンに3空軍トップが集まり合意署名式
米空軍への2027年初号機納入の前倒し策か
豪6機運用中で、英3機と米26機が導入予定のE-7
日本のE-767の今後の維持整備懸念がさらに加速
7月17日、英国西部のFairford英空軍基地で開催中の航空ショー「Royal International Air Tattoo」の会場で、米・英・豪の3か国空軍トップが一堂に会し、E-7早期警戒管制機の「今後の能力向上開発、試験評価、相互運用性向上、維持整備協力、教育訓練及び安全情報の共有」を3国が緊密に協力して行う旨を文書化した「Joint Vision Statement」に署名しました
E-7早期警戒管制機については、豪空軍が既に6機を導入済運用中で、英空軍は2024年運用開始予定で3機発注済、米空軍は今年2月末にボーイング社と2027年に初号機を受領し、計26機を導入する契約を結んだところですが、前述の内容に3か国が協力して取り組むことで、米空軍の導入を少しでも前倒しさせ、3か国全体で同機の能力向上を円滑かつ少しでも安価に進める事を狙った取り組みと見られています
「Joint Vision Statement」の詳細は明らかにされていませんが、今年2月にはKendall米空軍長官が英国訪問時に英国防大臣と本件を協議し、最近ではBrown米空軍参謀総長が豪州に米空軍関係者を派遣し、豪が運用中のE-7で訓練に参加させたりの実質的協力が始まっており、空軍省幹部も米英間でE-7試験飛行データの共有を開始していると語り、ボーイング幹部も米国への機体提供を早める可能性に言及し始めていたところでした
それにしても、軍種レベルで特定の既存機種の能力向上に共同体制を構築する事例は珍しく、米軍事メディアは「画期的」とか「ground-breaking declaration」との表現で17日の英国での合意署名を報じています
この3か国は、2022年にAUKUSを結成して豪州への攻撃型原子力潜水艦提供を確約し、極超音速兵器や最先端技術開発での協力にも同枠組み拡大発表して「蜜月関係」を内外に示していますが、この「E-7」案件がAUKUS案件扱になるかは不明です。
もしかしたら、日常業務ベースで当たり前に行われてきた情報共有を、わざわざ「Joint Vision Statement」にして署名式でアピールしただけかもしれませんが、仮にそうであったとしても、「不動産バブル崩壊」を契機に、経済面での負のスパイラルが加速している中国の「傷に塩を刷り込む」効果抜群の合意署名式典だと思います
ただし、E-7導入加速とE-3退役の前倒し可能性に関連して気になるのが、航空自衛隊が運用する早期警戒管制機E-767(E-3と同種のレーダーを搭載)の今後の維持整備問題です。
E-3が早期退役することで、E-767の部品入手がますます困難になったり、ボーイングに部品価格を吊り上げられて「ぼったくられる」可能性を危惧しています。
E-7関連の記事
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/