奥歯に物が挟まったような
無人機を有人機の代替にはしないが大前提で・・・
1日、米空軍協会ミッチェル研究所のMark Gunzinger研究員らが、米空軍に無人機の活用を提言する「Understanding the Promise of Skyborg and Low-Cost Attritable Unmanned Aerial Vehicles」とのレポート発表会を行いましたが、その場に参加していた米空軍の同問題検討担当のFrederick Haley大佐に、米空軍内でもしっかり無人機活用を検討していると説明させる場に活用させたようで、同大佐の発言をしっかり米空軍協会web記事が紹介しています
米空軍は2018年9月に、当時のWillson空軍長官自らが、現在の飛行隊数を24%も増強する386飛行隊体制を目指すと大ぶろしきを広げましたが、同年11月には「必ずしも綿密な分析ではない」、「変更がありうる」と別米空軍幹部がトーンダウンし、同時に米議会やシンクタンクか等々から、無人機の将来活用に関する検討が極めて不十分だと集中砲火を浴びてきました
今後米空軍は従来装備の早期退役を進め、最新装備の導入加速を議会等に理解してもらう必要がありますが、そんな中で避けて通れないのが「無人機をどう活用するつもりなのか?」との問いへの回答です。
本当は大佐レベルが公の場で最初に語る話題ではないと思いますが、観測気球を上げているのか小出しにしているのかよくわからないながら、ミッチェル研究所のレポートと合わせ、さわり部分をご紹介しておきます
1日付米空軍協会web記事によれば
ミッチェル研究所のGunzinger研究員らのレポート概要
●米空軍は、米空軍の戦闘能力向上のため、低コストで損耗が苦にならない無人機を、他のアセットとのバランスを考えつつ迅速に増強すべきである
●今後の無人機を、高度な機能を持つ有人機と、単機能の精密誘導兵器のような無人システムとの間の機能を果たす、「a third choice」として位置付けるべき
●米空軍は、開発中のLoyal Wingman計画の「Skyborg」や、群れで使用する「Gremlins swarming drones」を大規模に購入し、人間パイロットには危険だったり、長時間任務や追加弾薬が必要なケースで有効活用すべき。また米空軍は早期にこれら無人機システムを現場に送り、作戦運用法や部会管理手法を案出すべき。
(米空軍は「Skyborg」を、弾薬トラック・デコイ・ISRアセトとして戦闘機とペアを組ませ、2023年までに戦闘可能にしたいと考えている。そのため13社と契約し、2021年には飛行試験を開始する計画)
●無人機は米空軍にとって付加戦力となるべきで、米空軍の優位性を担保する第5世代機にとって代わるものではない。
●研究レポートは(米空軍の協力を得て作成された節があり、)、米空軍が飛行場を必要としない、手投げや簡易レールから発進可能な小型無人機を開発しており(示唆)、同小型無人機は、安価で、かつ電子戦やISRや指揮統制やnon-kinetic任務に大きな価値を発揮する(示唆)。他にも「very promising」な無人機の存在する(示唆)
ミッチェル研究所を率いるDavid A. Deptula退役中将は、無人機と有人機が混在する部隊が、新戦術を使用して「制空飛行隊」として認知されるだろうし、旧式の4世代機が占めている現在の米空軍を、このような無人機が全く異なる21世紀の米空軍へと変えていくだろう、と述べている
Haley大佐(Warfighting Integration Capability group副リーダー)発言
●米空軍は2018年の「Air Force We Need」発表以来、「Air Force We Need 2.0」とも言うべき無人機に関する検討を行っているが、今もどの程度の規模で無人機が必要かの検討を行っている
●我が組織(WIC)は、整備所要が少ない機体の発進回収も担当する無人機部隊を5-10飛行隊整備する方向を検討してきた
●(また)、無人機専用の部隊を別に作るのではなく、1機のF-35と2機の小型単純無人機をペアリング運用することを想定し、同じ部隊に所属させることも検討してきた
●多くのオプションを検討してきたが、それらの新能力を前線部隊に早く届けて試験で机上検討の有効性を確かめることがが重要
記事の他の部分から
●米空軍研究所の低コスト無人機検討担当のDouglas Meador氏は、これまでの検討では、一人のパイロットは人工知能のおかげで7機までの無人機を指揮できるとの実験結果が出ていると語っており、
●また、「Loyal Wingman」とのSkyborgに対する呼称は、有人機と近接して飛行するイメージを与えて適切ではないと述べ、多くの検討パターンの中で、有人機と無人機は目視範囲外で行動すると述べている
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有人機であるF-35やB-21爆撃機の調達数を削減しないため、無人機を無理やり有人機と組み合わせる方向で検討して苦悩しているようにも感じられ、心配ではあります。でも、米空軍を信じるほかないでしょう
幾つかの「非公開」無人機プロジェクトもあるようで、全体に消化不良の「群盲、象をなでる」状態の記事となってしまいましたが、今後色々な情報に接する準備としてご紹介しておきます。とりあえず・・・
米空軍協会のレポート「Understanding the Promise of Skyborg and Low-Cost Attritable Unmanned Aerial Vehicles」
→https://a2dd917a-65ab-41f1-ab11-5f1897e16299.usrfiles.com/ugd/a2dd91_2a1da65374434775b321619daf50a0a3.pdf
米空軍は無人機に冷たいと批判
「CSBAが米空軍の将来体制を提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「CSISが米空軍の無人機活用に苦言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-31
Air Force We Needの大花火
「空軍長官が386個飛行隊目標」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19-1
「米空軍が早くも386個飛行隊への増強諦め」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-16-1